みすず書房

見えない未来を変える「いま」 電子書籍あり

〈長期主義〉倫理学のフレームワーク

WHAT WE OWE THE FUTURE

判型 四六判
頁数 432頁
定価 3,960円 (本体:3,600円)
ISBN 978-4-622-09669-6
Cコード C0036
発行日 2024年1月10日
電子書籍配信開始日 2024年1月19日
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見えない未来を変える「いま」

「タイムトラベルの物語では、過去の小さな行動が現在の極端な変化につながることが多い。しかし、今日の小さな行動が、未来に劇的な影響を及ぼす可能性について考えることはめったにない」(本文より)

本書の主眼は、こんな可能性を真剣に捉えるべき理由を提示することだ。そしてさらに、いまを生きる一人ひとりが「いますぐ」行動するよう説得することにある。
気候変動、高度なAIや全面核戦争がもたらす脅威・リスクについて、できるだけ正確なデータ、〈長期主義〉的フレームワーク、そして数学的ツールで詳細に検討し、数世紀から100万年先までの不確実な未来の形をできるだけ正確に描き出していく。そのうえで、「そもそも人類の絶滅は悪いことなのか?」「幸福とは何なのか?」といった根源的な問いにまで踏み込むことで、議論は深みを増している。

科学をはじめ、歴史、哲学と使える知見は何でも使い、熱意にあふれた筆致で読者を巻き込んでいく若き哲学者、マッカスキルの説く、未来のための思想。

目次

まえがき――ペーパーバック版に寄せて

パートI 長期的な視点に立つ
はじめに

第1章 長期主義とは何か
物言わぬ数十億人/未来の人々は重要/未来は巨大/未来の価値/重要なのは気候変動だけではない/歴史のなかの現代

第2章 歴史の道筋は変えられる
先史時代が今日に及ぼした影響/未来を考察するためのフレームワーク/賭けの視点で考える/柔軟性の時代

パートII 軌道の変化を促す
第3章 道徳の変化
奴隷制の廃止/価値観の重大性/価値観の偶発性/奴隷制廃止の偶発性/私たちがすべきこと

第4章 価値観の固定化
諸子百家/価値観の持続性/汎用人工知能(AGI)/AIと価値観の固定化/AIによる乗っ取り/AGIはいつ実現するか?/文化と価値観の固定化/価値観の固定化はすでにどれくらい起きているか?/道徳を探求する世界をつくる

パートIII 文明を保護する
第5章 人類絶滅
スペースガード/人工的な病原体/大国間の戦争/技術力を持つ種は再び進化するか?

第6章 文明崩壊
帝国の滅亡/世界の文明の歴史的な回復力/人類は極端な大惨事から復興できるか?/気候変動/化石燃料の枯渇/結論

第7章 技術の停滞
文明開化/技術進歩は減速しているか?/停滞が起きる可能性は?/停滞が続く期間は?/長期主義的な視点から見た停滞

パートIV 世界滅亡を評価する
第8章 幸せな人間を世に生み出すのはよいことか?
デレク・パーフィット/中立性の直観/不器用な神々――同一性の脆さ/中立性の直観が誤りである理由/平均説/総量説/臨界水準説/どうすればよいかがわからないとき、どうするべきか/子どもをつくることのメリット/大きければ大きいほどよい

第9章 未来はよいのか、悪いのか?
ひとつの人生としての意識/幸福度がプラスの人々はどれくらいいるか?/人々は幸せになっていっているか?/人間以外の動物/幸福以外の善/楽観論の根拠

パートV 行動する
第10章 私たちがすべきこと
未来への後ろ歩き/どのような優先事項に着目するべきか?/私たちの取るべき行動/キャリアの選択/集団全体としてよいことをする/運動を築く

終わりに――できることはたくさんある
未来を守る/よい未来を守る/他者に力を与える/すべては私たちの手に

謝辞

附録
1. 追加資料/2. 用語/3. SPCフレームワーク/4. 長期主義に対する反論

索引/原注/図のクレジットとデータの出典

〈長期主義〉思想と「客観的な証拠と入念な推論」

編集者からひとこと(WEBみすずサイト「新刊紹介」)

書評情報

樋口恭介
(作家)
「いま・ここと無関係ではない未来」
朝日新聞(夕刊)エンタメ季評 2024年1月31日
吉川浩満
(文筆家)
〈私の読書日記〉「生命線、政治、長期主義」
週刊文春 2024年9月19日号

関連リンク

人類は「5ヵ月の赤ん坊」… 100万年先の未来を考える「長期主義」とは

『見えない未来を変える「いま」』を読む

クーリエ・ジャポンのサイトで、本書の冒頭部分がお読みになれます。

https://courrier.jp/news/archives/351026/