厚労省の言い分3:GPIFが年金運用に失敗しても、年金はつぶれません
第10話「年金積立金の見通し」では、マーケットでも話題になることが多いGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用についてポジティブに説明している。ただ、「年金はつぶれない」ことで、本当に嬉しいのは誰だろうか?
少子高齢化が急激に進んでおり、現役世代の保険料だけで年金給付をまかなうとなると、保険料の引き上げまたは給付水準の低下が避けられない状態です。そこで、一定の積立金を保有し、その運用収入や元本を活用する財政計画を立てています。
万が一、積立金を使い切ることがあっても、財源の大半は保険料収入なので、公的年金がなくなることはありません。
(第10話の内容を筆者要約)
裏読みしてわかること3:年金制度は決してつぶれないので、役人は安心できる
マンガの明るいタッチと裏腹に、厚労省の言い分は一貫している。年金だけでは今も暮らせないし、将来はもっと悲惨だが、公的年金という制度そのものは存続するということだ。
つまり、セーフティーネットとしては、今も将来も役立たないのだが、制度はこのまま存続する。その意味するところは、役所としての仕事は継続できるので、年金関係の仕事はなくなりませんので、安心してくださいということだ。
財源の大半である保険料収入が少子高齢化で減っていく。それを補うべき積立金がなくなってしまっても大丈夫。いずれにしても、セーフティーネットとしては役立たないが、制度はこのまま存続するのだから、と理解したい。
ちなみに、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)運用による資産配分は、リターンが全く見込めない国内債が約4割で、あとは外物と、日本株である。
日本株はドル円レートと連動するので、実質資産の6割で為替リスクを取っていることになる。つまり、円安になればリターンが上がるが、円高になると総崩れの恐れがあるのだ。
GPIFの運用で年金は守られるのか?
GPIFによる資産運用について、もう少し詳しく見ていきたい。その内訳は、国内債が39%、日本株は23%、外国債が14%、外国株が23%、短期資産が1%となっている。
国内債の運用は日本国債が中心だが、2017年9月22日の時点で、日本国債は10年国債までがマイナス利回りだ。短期資産も同様なので、年金積立金の4割は何の収益も生んでいないことになる。
残りの6割は、外国物と日本株だが、これは実質的に為替リスクを取っていることになる。なぜなら、外国物の中心は米国物で、日本株はドル円レートに強く連動するからだ。つまり、円安になれば運用収益が急増し、円高になれば大きな損失が出るような資産配分となっている。
もっとも、最近はドル円レートが下げても、日本株は下がらなくなってきている。この最も大きな要因は、日銀が量的緩和により日本株を買い続けているからで、その意味では、年金の運命は、これまで以上に政府の健全性に依存していると言えるだろう。