雑誌の「7つの習慣」特集を読んでいて「資産運用7つの習慣」を書こうと思いついたことを、素直に告白する正直FP山崎です。
資産運用においても、いくつかの日常的習慣の積み重ねが大きく資産の成長に影響を及ぼすことがあります。そうした運用の原則をまとめてみようというわけです。「資産運用については才能は必要なかったのだ。実は簡単なルールに従えばよいのだ」とまで言い切れると格好いいのですが、さすがにそこまで言い切るのは控えておきたいと思います。それでも、「資産運用7つの習慣」は多くの個人の参考になると思います。資産運用を個人の生活の中に位置づけていくことがこれからとても重要になっているからです。
それでは「資産運用7つの習慣」を身につけてみましょう。きっと、読み終えた後では、あなたの人生が大きく変わることになるでしょう(たぶん)。
習慣1)毎月少額でも拠出・積立する第1の習慣は「積立」です。毎月少額でもかまいませんので、定期的に定額の積立をしましょう。余裕があったら貯めるとか、年収が上がったら貯める、というアプローチは必ず失敗します。
お金を貯めるのに、年収は全く関係ありません。毎月5000円でも1万円でもいいので、とにかく積立投資信託か積立定期預金をセットします。これは銀行か証券会社の窓口(ネットなら自宅でもできる!)で手続きをするだけです。毎月の給与の10%は自動的に積み立ててしまうのが理想でしょう。
これを自動的な習慣としてしまうのです。まさに「運用の習慣」です!
習慣2)運用を中断しない第2の習慣は運用を「継続」することです。運用が下手な人は、運用をすぐ中断する傾向があります。特に元本割れするたびに全額売却してしまうようなパターンでは常に運用はマイナスで終わりますし、値下がり局面で投資(購入)を行わないので、安く買って市場回復を待つこともできません。これでは運用が失敗するのは当然です。
運用を長く続ければ経験も貯まりますので、ますます運用を中断しないアプローチを考えられるようになります。例えば2003年春に日経平均8000円割れを経験した投資家は、2009年頭にまた日経平均が8000円を割っても、落ち着いて運用を続ける方法を考えられるようになります。下がっている時期にうろたえるばかりではなく、むしろ運用方針を楽しんで検討できるようになります。株価が下がれば売り払って運用を止めることを当たり前と思っている人は、運用を中断しない「習慣」を考えてみてください。
習慣3)解約をできるだけしない第3の習慣は「解約しない」ことです。解約することを当たり前にすると、お金は貯まっていきません。解約は資産運用において悪しき習慣といってもいいでしょう。「運用益が出たら○×を買う」というような使い方はやめたほうが賢明です。買い物は手元のお金から出すべきです。
同じ考え方では投資信託の収益分配金を受け取っては消費したり貯金している人も悪い習慣です。再投資しないとお金が増えるスピードは速まりません。またわざわざリスクをとって得られた分配金を貯金に戻すくらいなら最初から投資をしなければいいのです(分配金は税金を引かれた残りを受け取ることになる)。
ただし、解約してもいい条件があります。投資資金を残して、確実に利息を取られる借金をするよりは、解約をしたほうがマシといえます。
解約しない習慣、身につけてみてください。
習慣4)ニュースに触れる仕組みを作っておく第4の習慣はニュースを見る癖をつけることです。これはニュースを見ればマーケットの予想ができる、という意味ではありません。むしろニュースを見ることで、マーケットを読む困難さが分かるといってもいいでしょう。
それでも、投資をする以上はニュースを見る習慣が必要です。大きな流れとして何が起こっているのかは知らなければならないからです。
特に経済ニュースは自然に触れる環境を作ることが大切です。朝いつもNHKかモーニングサテライトをつける、というのは実はうまい方法です(ここでワイドショーを見ないことがポイント)。
携帯電話のガジェットやメールサービス等を活用して、通勤時間にざっと経済ニュースを読むのもアリです。とにかくヘッドラインだけでもチェックするのもいいでしょう。芸能ニュースやスポーツニュースは興味があるものを自分から取りに行きます。経済ニュースに興味が高まるまでは、自動的に受信する仕組みを「習慣」にすることが大切です。
習慣5)むやみに相場を読まない第5の習慣は、「相場を無理に読もうとしないこと」です。投資について学べば学ぶほど、自分は相場を読めるのではないか、という気がしてきます。しかし、それは不可能です。自分の相場観なんていうものは、実は耳ざわりのいい誰かの意見を丸呑みしているだけだったりします。
スポーツでは、自然体で臨むほうがいい記録が出たりしますが、あれに似ているかもしれません。無理に相場を読もうとする状態は肩に力が入ったフォームで打席に立つようなものです。
相場を読み過ぎると、リスクを偏らせた運用方針を取るようになります。自信過剰になって、過度のリスクをとった運用がまったく大ハズレすることはよくあります。
相場を絶対に読んではいけないとか思考停止しろ、といっているわけではありません。むしろ相場を無理に読むことをやめ、ある程度どのような相場でも対応できる工夫をしてほしいということです。
放っておいても相場は読みたくなります。相場について考えるときは必ず、「自分の相場観が必ずしも当たらないんだぞ」と自分を戒める習慣をつけてみてはどうでしょうか。
習慣6)借金して資産運用しない第6の習慣は借金して運用しないことです。これは一般個人における資産運用の鉄則として考えたほうがいいでしょう。
借金には必ず利息がつきます。しかし運用益は必ずプラスになるとは限りません。借金で運用するのは分の悪い賭けだと思ってください。
また借金は判断力を歪めます。返済期限のあるお金で運用することで、冷静な判断ができなくなります。この点でも借金で運用はやめておくべきだと思います。
ところで、資産運用における借金としては信用取引やFXのレバレッジも近い性格があります。担保(証拠金)を差し入れているものの、それ以上の金額で売買をした分については金利がかかりますし、わずかな元本割れが全損につながるリスクがあるため、落ち着いて投資ができなくなります。投資初心者や一般個人投資家が無理をして行う必要はありません。
借金して投資はしない、これは当たり前の習慣と心得てください。
習慣7)仕事に専念できる運用体制にしておく最後の、7つめの習慣は「運用が仕事の邪魔にならない」程度の運用にしておくことです。
一般の会社員にとっては、一生稼ぎ出すお金の中で一番ウエートが高いのは「給料・賞与・退職金」の合計です。生涯の平均年収が500万円であれば40年で2億円稼ぐことになるわけですが、おそらく運用で生涯得られる利益はうまくいっても数千万円というところでしょう(でも、十分に運用の価値はあります。年収にのみ頼ってさらに数千万円収入を上積みするのは困難だからです)。
このとき、本来集中するべき「稼ぎ」つまり仕事で稼ぐ年収を軽視し、トイレでオンライントレード等に集中するのは賢い習慣とはいえません。最悪のケースでは、年収そのものが下がってしまいます。仕事に集中していなかったり、実際に業績を落としたりすれば、年収が数十万円下げるかもしれません。そうしたデメリット以上の運用を確実にできる保証はありません。
週末にチェックすればいい、あるいは夕方にチェックすればいい、というくらいの運用方針を選ぶことが会社員にとってはとても大切です。毎日運用のことをチェックしなくてもいい運用スタイルを、自然な習慣として身につけてみてください。
さて、資産運用7つの習慣、いかがでしたか? 「自分の当たり前と思っていた習慣は、違っていたのかな?」というヒントが1つでもあれば幸いです。
また、あなたの「投資の習慣」がありましたら、ぜひ教えてください。twitter: @yam_syun までどうぞ!お待ちしてます。
(山崎俊輔)