目まぐるしく変化を続ける時代を生き抜くためには、自分で決めるしかない。そう断言するのは、『自分で決める。 ―すべてがうまくいく最強の力―』(権藤優希著、きずな出版)の著者です。

大学卒業後、日本電気株式会社(NEC)に入社し、営業として実績を積み上げたのち、4年目に独立したという人物。

現在では法人2社を設立し、複数の事業を走らせているそうです。自身が自主的に動いているからこそ、自分で決めることの大切さを実感するのかもしれません。

いまではどの店に行っても、当たり前のように外国人労働者であふれています。 今後、AI(人工知能)の急激な発展により、人間文明に計り知れない変化をもたらすと言われています。

「待ちの姿勢」では、どんどん仕事がなくなるのです。 そんななか、この時代に生き残っていける人とは、どんな人なのか? どんな価値がある人が、これからの時代を切り開いていくのか? それはまぎれもなく、「自分で決めることができる人」です。

(中略) でも、決してこれは“何も考えずに勝手に決める”ということではありません。 「自分で主導権を握る覚悟を持つ」ということです。(「Prologue」より)

覚悟を持って主導権を握り、自分で仕事を生み出し、結果に変えていく力こそが、いま求められているというのです。それどころか、自分で決められる人だけが生き残れるといっても過言ではないとさえ言います。

本書の目的は、「自分で決める生き方を身につけてもらうこと」。自分で決めれば、誰もが成長し、まわりから評価され、人が集まるようになるというのです。

では、「自分で決める力=決断力」は、どのようにして身につければいいのでしょうか? Chapter 4「圧倒的な差をつくる決断力の磨き方」のなかから、ヒントを探してみたいと思います。

「状況が整うことはない」という感覚で生きる

先に触れたとおり、著者が起業したのは社会人4年目のころ。会社で目標達成のために多くの業務をこなし、月によっては100時間の残業も当たり前だった状況下での起業だったといいます。

しかもその3年後、28歳のときには父親が病気で他界。

そんな20代を振り返って感じるのは、もしも「いまは仕事が忙しくて、起業どころじゃない」と決めつけて会社員を続けていたとしたら、起業することは不可能だっただろうということ。

父親の死後、残された母親のことを気にかけながらチャレンジするということは難しいと考えられるからです。

ちなみに入社1年目のときにも、本心では起業を意識していたにもかかわらず、「まだこの会社で3年も働いていないのに、仕事がわかったような口をきくのは速いし、企業はまだ先だな」と、勝手にブレーキをかけていたのだといいます。

入社1年目は、「まだ仕事で実績もつくっていないから」。 3年経つと、「いま、やっと責任ある仕事を任されるようになったから」。

さらに4年、5年と経つと、「役職にも就いたし、結婚もしたし、子どももできたし、親の世話をしないといけないし、いまさら…」。 このように、人は常に「いまじゃない」と言い訳ばかりして、チャンスを逃します。

断言しますが、状況が整うことは、一生ありません。(中略) むしろ、いまがもっとも状況が整っていると思うべきです。(120ページより)

時間もあり、お金もあり、人脈もあり、ノウハウもあり、自信もある。そんな完璧な状況を待っていても無駄だということ。決めるのを先延ばしするのではなく、いまの状況から勝負をかけるべきだという考え方です。

そもそも自信とは、行動したあとにしかつかないもの。弱気な人に対して「自信を持ちなよ」と声をかける人がいますが、自身は持つものでも、突然降ってくるものでもなく、「行動が先、自信があと」だということ。

時間が欲しい人に限って、「いまは時間がないからできない」と言います。 お金が欲しい人に限って、「いまはお金がないからできない」と言います。

友達が欲しい人に限って、「いまは友達がいないからできない」と言います。 成長したいという人に限って、「いまは未熟だからできない」と言います。 (121ページより)

しかし本当は、そういう状況を変えたいからこそ、新しいことを始めるものであるはず。足を止めそうになる、“やらない理由”こそが“やる理由”。

状況が整うことを待つのではなく、「いま、この自分からやる」と決められる人が、人に差をつけていくというわけです。(118ページより)

相手に決断させる最大のポイントとは?

周囲を巻き込んで決断ができる人や、商談をうまくまとめていける人は、いつも着地点が明確。

そして話がどこに向かうのかわかるため、聞く側も安心して聞くことができます。しかし逆に着地点が曖昧だと、話があちこちに飛んで、聞いている側も混乱してしまうことに。

人と会っている時間は有限。しかし、なにも決めていないと、ついつい世間話をしすぎて肝心な話に到らなかったり、相手のペースに巻き込まれ、自分が決めたい本題を切り出せないまま、終わってしまうことにもなりがちです。

つまり、ある程度アイスブレイクをしたあとに、「本日は○○の件で伺いました。△△について決めていければと思います」など、その時間内で目指すべき方向性や着地点を明確にすることが大事だというわけです。

着地点が明確だと、時間を有効に使えるだけでなく、相手からなにを引き出すかも明確になるので、質問もシンプルになるもの。

一流の営業マンになればなるほど、周囲が気づかないほど自然にクロージングしていくといいます。着地点が明確なので、何気ない顧客との会話でもニーズをしっかりキャッチしているわけです。

話が前に進むか進まないかは、あなたの着地点の設定次第です。顧客の何気ない会話を逃さずに質問をし、そこから広げて商談の話にシフトしていくのです。(124ページより)

それは、意図どおりに顧客を誘導するということではないそうです。なぜなら、説得・強制・お願いではないから。

意図(着地)を決めたら、フラットに、顧客の立場で一緒に考えていきながら、顧客が最善の決断をできるようにお手伝いをするだけ。

その際に、顧客が自分で決めていくための十分な材料を、こちらが用意しているかどうかが重要だというわけです。

たとえば状況が似ている顧客の実例、参考文献の紹介、より詳しい技術者のアサイン、競合他社の実情など、引き出しのなかから効果的に情報を与えていくということ。

引き出しの数が多いことも、決めていく人が流されずに優位に立てるポイントだということです。(122ページより)

八方美人は、いますぐやめる

人間関係が難しくて奥深いのは、必ずしも全員が、自分と同じ当たり前で生きているわけではないから。そのことを心得ないまま、自分が「正しい」と決めつけて人に関わると、誰かが「間違っている」ということになってしまうわけです。

人はみな育ってきた環境によって考え方が違うので、人の当たり前を頭から否定することは不可能。もし自分と違う考え方の人がいたら、「間違っている」と指摘するのではなく、「それも一理ある」と捉えるべきだということです。

しかし、自分が欲しい成果を決めたとき、その「当たり前の違い」によって他人と衝突することも考えられます。

私も起業するとき、親や友達、会社の上司となんども衝突してきました。しかし、衝突するたびにいちいち折れていては、いつまでも自分の理想にはたどり着きません。

欲しい成果が違うのであれば、理解されなくて当然です。八方美人はいますぐやめましょう。(136ページより)

起業したいのに、周囲から「いいね!」と言われることをやっていたとしたら、いつまでも立ち上がれなくて当然。誰にでもいい顔をする八方美人タイプは、自分の道を決めていけないと著者はいうのです。

なにをするにしても、必ず周囲から反対の声は上がるもの。しかし決めるには、そのことに臆さず、立場を明確にすることが大切だというわけです。

なお、「怖くて、なかなか立場なんか明確にできない」という場合は、誰に流されるかを決めるべきだといいます。人は必ず誰かに影響を受け、流されて生きてきたもの。

自分が完全なオリジナルで、誰からも影響を受けずに生きてきた人などはいないわけです。

つまり、流されることは決して悪いことではないというわけです。それより重要なのは、流される対象の人を明確にして、最終的には自分で決めればいいということ。(134ページより)

自分で選んだ道は、自分で正解にする

自分で決めるためには、自分の選択にブレないことが大切。他人にどう見られるかを気にする人は、まわりの正解を気にしてしまうもの。

一方、自分で決める人は、自分が選んだ道を正解にしていくというのです。

ソフトバンクの孫さんは、「まず、登る山を決める」と言っています。 決めたら、途中どんなことが起きようが、まず登りきってください。

ところが、ほとんどの人が、山を登っていく途中で「本当にこの道でよかったのか」と迷い始め、達成もしていないのに自分には向いていないと勝手に判断してあきらめます。

そんな人が次の道へ行っても、絶対にうまくいきません。まずは、一度決めた山を登りきる(達成する)ことが先なのです。(143ページより)

選んだ道を正解にする人は、うまくいかないことが起こっても、「この課題をどう解決しよう」ということに力を使うもの。

そして、乗り越えられない障害は訪れないものでもあります。著者もあとから振り返ると、障害を乗り越えた後に、必ず次の段階へステージアップしてきたのだそうです。いいかえれば、障害はチャンスだということ。

世の中に、完璧な業界、完璧な会社、完璧な人などは存在しません。外側から見ると完璧であるように見えても、近づいてみると、たくさん粗(あら)が見つかったりするもの。

なのに、どこにでもあるような、誰にでもあるような粗が見つかるたびに道を変えていたのでは、成功できないまま、人生は終わってしまうかもしれません。

大事なことは、不完全さを受け入れていくこと。さらに、「この業界をよくしていこう」「この会社をよくしていこう」「この社長を押し上げていこう」と、補完していく人こそ成功していくものだという考え方。

登る山を決めたら、問題があったとしても、とにかく一度登り切ってみることが大切だというわけです。(143ページより)




著者は、すぐに実践できるスキルから、本質的な自己の拡張まで、読者の役に立つことだけを厳選して本書を書いたのだそうです。

そのため本書を活用できれば、それが現状を大きく変えるためのきっかけになるかもしれません。

Photo: 印南敦史