早いもので、2023年ももう終わり。あっという間ではありますが、今年も「ライフハッカー・ジャパン」読者のみなさんに役立ちそうな、たくさんの本をご紹介してきたつもりです。
4月からは週末の土曜日を「新書の日」と位置づけ、おすすめの新書をピックアップするようになったことも変化のひとつですね。
ともあれ新たな年も、少しでも役立ちそうな書籍をセレクトしていければと思っております。というわけで、年内最後になる本日は例年どおり、この1年間にご紹介してきた200冊以上の書籍のなかから、「個人的に印象に残った10冊」を厳選しました。
毎年書いていることですが、この連載ではただ「売れた本」だけを取り上げているわけではありません。あくまでも、「『ライフハッカー・ジャパン』の読者に響くかどうか」を基準に選書しているのです。
したがって一般的なランキングとはちょっと違うかもしれませんけれど、そのぶん「ピンとくる一冊」を見つけることができるのではないかと思っています。気になるものを見つけたら、年末年始にぜひ手に取ってみてください。
10位 『悩みの多い30歳へ。世界最高の人材たちと働きながら学んだ自分らしく成功する思考法』(キム・ウンジュ 著、藤田麗子 訳、 CCCメディアハウス)5月11日
著者は27歳のとき、勤めていた韓国の会社を辞めて渡米し、グーグルに入社したという人物。
ところが以後は、自分を生かしきれず、無気力感や不安に苛まれたのだそうです。しかし、あるときカウンセラーから受けた助言に助けられ、数年後には、いつの間にか成長できていた自分に気づいたのだとか。
そうしたプロセスを綴った本書は、誰しもが直面するであろうハードルを越えるために役立ってくれることでしょう。
9位 『イスラムと仲よくなれる本』(森田ルクレール優子 著、秀和システム)11月27日
パリ在住のイスラム教徒である著者は日本に帰国するたび、イスラム教はまだまだ遠く、なじみがない宗教なのだと実感するそう。
しかし外国人と交流する機会が増えている現代だからこそ、イスラムについて知っておくことは無駄ではないはず。
そんな思いをもとに書かれた本書は、イスラムの人たちについての誤解を解き、なかなか知る機会のない知識を与えてくれるはずです。
8位 『命綱なしで飛べ』(トマス・J・デロング 著、上杉隼人 訳、サンマーク出版)1月31日
仕事で結果を出したいなら、成功したいと望むなら、命綱なしで飛ぶ(flying without a net)ことを学ぶべき。著者はそう強く主張しています。そうすれば行動を妨げる不安を乗り越えることができ、少しずつ成長していけるのだと。
たしかにそうして身につけたものは、将来的に間違いなく仕事に役立つのではないでしょうか? そこで本書を通じ、自分をより高めていきたいものです。
7位 『新装版 幸せがずっと続く12の行動習慣 「人はどうしたら幸せになるか」を科学的に研究してわかったこと』(ソニア・リュボミアスキー 著、金井真弓 訳、渡辺誠 監修、日本実業出版社)12月20日
本書は、「幸せ」についての研究に長く携わってきた人物。30年におよぶプロセスのなかで、その研究が「ポジティブ心理学」と呼ばれるムーヴメントの一部として成長するさまを見てきたのだといいます。
つまりここでは、「いまよりももっと幸せになる方法」についての発見を紹介しているわけです。たとえば「意欲のある人間のほうが幸せになり、いっそう成功する」ということを明かした部分など、興味深いトピックス満載です。
6位 『頭のいい人が話す前に考えていること』(安達裕哉 著、ダイヤモンド社)5月2日
著者は就職に際し、理系研究職の道を諦め、デロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社したという過去の持ち主。
はたから見ればいかにも頭がよさそうですが、決してそうではなく、とくにコミュニケーションが大の苦手だったのだそうです。そのため信頼を失いかけ、どうするべきかを徹底的に考えた結果として身につけた知見をまとめたのが本書。
なかでも「聞くこと」の重要性を強調したパートはきっと役に立つと思います。
5位 『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』(ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ 著、児島 修 訳、辰巳出版)6月22日
幸せな人生は喜びにあふれているけれども、試練の連続でもある。著者はそのように指摘しています。喜びがある一方で苦しみも多く、しかも幸せな人生とは偶然の賜物ではないのだとも。
つまりそれは、時間をかけて展開していくひとつの過程だということです。でも、困難や苦労があってこそ、豊かで幸せな人生がもたらされるはず。
そんな考え方を軸とした本書は、広い意味で「生きる勇気」を与えてくれることでしょう。
4位 『校閲記者も迷う日本語表現』(毎日新聞校閲センター 著、毎日新聞出版)12月4日
毎日新聞校閲センターの方々は、「初めて見る言葉や言葉の使い方に、読者が違和感を抱かないだろうか」と悩み続けているのだといいます。本書は日常的に向き合っていらっしゃる日本語についての、さまざまな思いをまとめた一冊。
たとえば「いつぶり」「真逆」など、どこかおかしいと感じつつも、多くの方が使っている人がいることで広まっていることばについてのあれこれを検証しているわけです。とても興味深い内容なので、日本語に対する関心も深まるのではないかと思います。
3位 『情報を正しく選択するための認知バイアス事典 行動経済学・統計学・情報学 編』(情報文化研究所(米田紘康、竹村祐亮、石井慶子)著、高橋昌一郎 監修、フォレスト出版)2月21日
本書は、2021年にベストセラーとなった『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』の続編。
「論理学」「認知科学」「社会心理学」に焦点を当てた全著に続き、ここでは「行動経済学」「統計学」「情報学」からのアプローチが試みられています。
つまり内容的には完全に独立しているわけですが、「ある答えに誘導してしまう、なんらかのきっかけによって生まれた情報」を意味する「アンカリング(Anchoring)」など、情報を正しく選択するにあたり持っておきたい見識が数多く紹介されています。
2位 『「やりたいこと」も「やるべきこと」も全部できる! 続ける思考』(井上新八 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)11月30日
著者は、「ビジネス書のデザインといえばこの人」と、出版業界人であれば誰でもが認める著名ブックデザイナー。
僕も著作『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)のデザインをお願いしたことがあるのですが、間違いなく多忙であるにもかかわらず、完璧な力量を見せつけてくださったので「さすがだなあ」と感じたことを覚えています。
本書は、そんな著者が「やりたいこと」「やるべきこと」を続けられる仕組みについての考え方をまとめたもの。下で触れている僕の新刊『先延ばしをなくす朝の習慣』と共通する部分もあり、強く共感できました。
1位 『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る』(内田 舞 著、文春新書)5月20日
著者は、ハーバード大学准教授、小児精神科医・脳科学者。分断が進むトランプ政権下のアメリカで新型コロナパンデミックを経験した2020年当時は、3人目の子がおなかにいる妊婦でもあったそうです。
ところが、おなかの大きな時期にワクチンを接種した姿を写した写真をSNSに投稿したところ、好意的な反響のみならず、数千件にもおよぶ誹謗中傷のことばにも直面することに。
そうした経験を踏まえたうえで書かれた本書で明らかにされているのは、誰もが持つ承認欲求や、ネガティブな感情のはけ口についてなどの考え方。学者としての冷静な視点に基づいているだけに説得力も大きく、強い印象を植えつけてくれました。
[番外編] 『先延ばしをなくす朝の習慣』(印南敦史 著、秀和システム)
今年も最後に、僕が発行した新刊もご紹介させてください。
僕は11年間にわたり、ほぼ毎日ここで書評を書き続けてきました(今年は身内に不幸があったため、数日お休みをいただきましたが)。
本書は、そうした経験を軸として、「コツコツ続けること」の重要性とその方法をまとめたもの。「やらなければいけないとわかってはいても、ついつい先送りしてしまう」という悩みをお持ちの方には、とくに役立つのではないかと思います。
物価が高騰したり政権が揺らいだりと“うれしくないニュース”ばかりが続く一年でした。その流れは来年も続くでしょうが、とはいえ前向きに進んでいきたいところ。そのために役立つ本を来年もご紹介していきたいと考えておりますので、引き続き、よろしくお願いします。
よいお年をお迎えください。
毎日書評は、2024年1月2日から4日まで2023年の年間ランキングTOP30をご紹介。1月5日より連載を再開いたします。
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