テクノロジーの進歩の影響で、変化しつつあるライフスタイル。時代とともに、個人の能力のアップデートが求められています。
でも、「時間がないのに学ぶべきことが多すぎる」と感じている方も多いのでは? もしくは、年齢とともに記憶力や集中力が低下しているとの自覚もあるかもしれません。
そうした個人の都合を社会は聞いてくれません。なんとか効率よく学習を進めていきたいところです。
そんなとき役立ちそうなのが、SuperMemo(学習アルゴリズム)。
SuperMemoとは、1980年代から研究と実践が積み重ねられてきた学習法であり、長期記憶を鍛えるシステムでもあります。
ここでは、SuperMemoを活用するためのヒントを提案したいと思います。
長期記憶を2つの側面から強化する学習法
SuperMemoは、長期記憶の2つの要素、「安定性(Stability)」と「検索性(Retrievability)」にアプローチして、効率よく記憶の定着を促すシステムです。
長期記憶の安定性は繰り返しの学習で、検索性についてはクイズを解くことで強化します。
SuperMemoにはソフトやクイズアプリがあり、最適なタイミングで通知、学習を促してくれます。ただ日本語に対応していなかったり、コンテンツの種類や数が限られていたりと、我々が利用するにはやや不自由なものです。
幸いなことに、SuperMemoのフォーマットで作成された膨大なナレッジ(英文)については閲覧可能です(睡眠について網羅的に説明したコンテンツなどは一読の価値あり)。
さらには、現代にはより使いやすいツールがありますので、これらを利用してSuperMemoのツールを代用できそうです。以下では、SuperMemoに倣った記憶の定着法をステップごとに紹介していきます。
ステップ1:学習コンテンツの収集
SuperMemoでは、少しずつ知識を身に着けていく「増分学習(Incremental Learning)」のアプローチがとられます。
増分学習では、定期的に短い時間の学習を積み重ね、より多くの学習コンテンツに触れることが奨励されます。
昨今はテキストだけでなく、動画や音声による専門家の解説といった学習コンテンツがネット上に豊富にあり、これらを活用しない手はありません。また、基礎から網羅的に解説されている参考書や書籍なども、スキャンして活用するのもいいでしょう。
さまざまな種類の学習コンテンツを保存するには、EvernoteやNotionが最適です。SuperMemoでは、学習中のページや関連ページにアクセスしやすいことを重視していますが、Evernoteなら学習のテーマごとにノートブックを作成可能。
Notionなら、親ページにインデックスを作成することで要件を満たせそうです。
ステップ2:優先順位に応じて繰り返し閲覧
1日の学習時間を決めて、学習コンテンツを読み込んでいきます。
コメントや文字の強調を入れたり、別の角度から説明したコンテンツを追加したりしながら理解を深めましょう。
学習のテーマが1つだけならそれに越したことはないのですが、多くの方が、外国語やプログラミング言語、資産運用…といった複数のテーマについて、並行して学習することを余儀なくされているのではないでしょうか。
そこでポイントとなるのが、テーマに優先順位をつけることです。忙しい日々のなかでは学習に捻出できる時間は限られています。
優先順位の高いものから順に学習していき、時間が足りなくなれば、ほかは先延ばしします。こうしたルールの施行により機械的に学習テーマを配分。コンスタンスに学習時間が設けることが学習継続のカギです。
また、理解し記憶に定着するまで読み返すことが肝要なので、学習コンテンツ名をリスト化して、閲覧回数や理解度をチェックしておきたいところ。
タスク管理ツールやExcelを活用するのもよいですが、前述のNotionであればページ内にリストを作成したり、タスクにリマインダーを設定したりできて、煩雑さが軽減するでしょう。
ステップ3:クイズ形式に落とし込む
最終的に学習コンテンツは、穴埋め問題や一問一答といったクイズ形式に落とし込みます。重要なポイントを思い出しやすいかたちにして、長期記憶の検索性を強化するのが目的です。
以下のようなポイントを意識して、クイズの作成と繰り返しを行ないましょう。
- 設問はできるだけシンプルに:シンプルな設問は、脳が処理しやすく検索性を向上させます。
- 長い答えはできるだけ分割:EUの加盟国をすべて答える質問よりも、それぞれの国の特徴にからめて設問を作成したほうが覚えやすいです。
- 難しい内容は繰り返す頻度を高める:複雑で覚えづらい知識ほど短い間隔で繰り返すことが、長期記憶に定着させるカギです。
クイズが作成できて、忘却曲線と習得度合いに応じて出題してくれるアプリには、AnkiやreminDoといったものがあります。
特にAnkiについては、理解度による復習間隔や継続期間などを細かく設定できて、繰り返しの管理をすべてアプリに任せられます。
学習コンテンツの閲覧とクイズの繰り返しは、記憶が定着しても頻度を落として続けましょう(SuperMemoでは、各学習コンテンツとも4年間繰り返しを続ける仕様になっているようです)。
SuperMemoに倣った学習法を継続するうちに、テーマごとにオリジナル百科事典のような学習コンテンツのアーカイブができ上がり、長期記憶にもそれが反映されているのが理想です。
より使いやすい学習ツールが出てきたら乗り換えるのもよし。学習法も時代に応じてアップデートしましょう。
──2019年9月12日公開記事を再編集して再掲しています。