Inc.:自分の中の創造性を高めたいのなら、読書の幅を拡げ読書量も増やさなければいけないとよく言われています。

以下はダートマス大学 Tiltfactor研究室が最近発見したことから導き出された興味深い結論です。研究者チームは300人以上の被験者に短編小説や技術仕様書を含む多種多様な文書を電子的媒体か紙に印刷された形で読んでもらい、その後、読んだ文書の細部をどのぐらい具体的に記憶しているかを測ったり、もっと抽象的な質問に答えるテストを受けてもらいました。たとえば、登場人物に関して推測したり、仕様書に記載されているどのモデルが優れているかを判断させるなどです。

被験者が文書を読んで頭に入ってきた情報の処理のし方や読んだ内容を思い出すのに紙で読んだ場合とデジタルで読んだ場合とで違いは出ないと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。紙で読んだ人のほうが抽象的な思考を要する質問に対する回答で著しく優れた結果を出しており、PDFやタブレットで読んだ人は具体的な情報に関する質問に回答するほうが優れていました

上述の研究発表によれば、「タブレットやラップトップのようなデジタルプラットフォームを使って文書を読むと、情報を抽象的に解釈するよりは具体的な細部に意識が集中する傾向があります」とのこと。

肝心なのはどのように読むか

具体的で細かい情報を読み取りたいだけなら、タブレットで良いでしょう。しかしこの研究の結論は、新しいアイデアや創造性に富んだ飛躍を読書に期待する人はじっくり腰をおろして紙に印刷された形で読むことを勧めています。こうした発見が、今後は電子機器を使った読書をより良いものにしていくきっかけにもなるかもしれません。

この研究の共同著者であるMary Flanagan氏は次のようにコメントしています。

星の数ほどのアプリ、どこでも使われているスマートフォン、学校で配布されるようになったiPadからも明らかなように、デジタル機器は幅広く支持されているのは明らかですが、その割にデジタルツールが人間の理解力、認知力にどのような影響を与えるかについての研究の数は驚くほど少ないのが実情です。ときには抽象的思考を養うのも有益です。そして、もっといろいろなことがわかっていくにつれて、現在のデジタル機器に内在する偏りや欠点を克服する進化型デジタル機器を作ることができるようになるでしょう。

将来コンピューター科学者や設計者がこうした研究結果を使ってさらに高機能の文書読解用電子機器を発案する可能性があるにしても、創造性を刺激することが目的で読書をしたいなら、読みたいものを紙に印刷するか本を注文したほうが当面は良いかもしれません。

Study: Reading From a Screen Changes How You Think | Inc.

Jessica Stillman(訳:春野ユリ)

Photo by mark sebastian/Flickr (CC BY-SA 2.0).
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