Inc.:言葉によって、やる気が出たり、励まされたり、時には人生が変わることもあります。適切な言葉を使えば、他愛のない会話が、相手にとって忘れられない瞬間に変わることもあります。(逆に、間違った言葉を使えば馬鹿に見えることも)
要するに、言葉は大事ということです。
Bufferのコンテンツ制作者のCourtney Seiterが、SNSで情報共有するときの賢い効果的な言葉の使い方について投稿していました。(SeiterのSNSや生産性やマーケティングに関する投稿も、Bufferのブログで読むことができます)英会話で自分の考えを適切に伝えたり、効果的に相手を動かしたりするときのために、覚えておくといいでしょう。
(ここからはSeiterの投稿です)
たった一言で、会議や部屋の空気が一変した経験はありませんか?
言葉には驚くほど力があります。単語1つでも、説得したり、怒らせたり、一線を引いたり、人のあなたに対する見方を変えたりします。言葉による科学や心理学を理解することで、このような言葉の力を活かすことができます。
私は、創造性を高めたり、共同作業をうまくやったり、人間関係を構築するのに効果的な英単語やフレーズを見つけました。今から紹介する10の英単語とフレーズは、中でも特に効果が大きいものです。その後で紹介する7つの単語は、まったく効果がないものです。
1.「If」前向きな仮定の話をするときに使うとパフォーマンスが上がる
これは普遍的な事実ですが、誰も失敗はしたくありません(人前では特に)。ブレインストーミングや難しい挑戦など、自分の知らないことが多い状況では、「If(仮に)」を使うことで、失敗するかもしれないプレッシャーを和らげたり、批判的な思考に陥らないようにすることができます。
『Magic Words: The Science and Secrets Behind Seven Words That Motivate, Engage, and Influence』の著者のTim Davidは、とても具体的な文章でこの魔法の単語を使っています。
仮に知っていたとしたら、あなたは何と言いますか?(What would you say if you did know?)
Davidは、「If(仮に)」という魔法の言葉を使うと、自分は仮定で考えているのだと伝えることになり、自発的に答えを出さなければならないプレッシャーを免れます。また著書には、前向きな内容の仮定の話をすると、成功への期待が大きくならないだけでなく、実際のパフォーマンスを向上させるという調査結果も載っていました。
「If(仮に)」をきっかけに仮定の話をするというのが大事です。
2.「Could」"should"を使うよりも創造性が高まる
「should」の代わりに「could」を使うと同じように魔法が起きます。「The Science of Us」に載っていた例が良かったので紹介しましょう。
1987年の研究で、輪ゴムなどを含む色々な物を被験者に与えました。一部の被験者には、与えられた物が何なのかを考えるように言い、残りの被験者には、(couldを使った英文で)与えられた物で何ができるかを考えるように言いました。その後、被験者に消しゴムを使わずに印を消してくださいと伝えました。すると、前者よりも(couldを使って伝えた)後者の被験者の方が、輪ゴムが消しゴム代わりになることにより多く気付きました。
あまり変わりがないように思うかもしれませんが、研究によって「should」は考え方や答えの可能性を狭める傾向にあり、「could」の方が新たな可能性を偏見なく考えられることが証明されています。
倫理やモラルに関する別の研究では、次のようなことが判明しました。
倫理的な葛藤に直面したとき、「どうするべきか?(What should I do?)」と考えるのではなく、「何ができるか?(What could I do?)」と考えた方が、表向きは価値観がぶつかり合っているように思えていたものが、まったく相容れないものだと気付く、道徳的な洞察が得られます。
たったひとつの英単語を変えるだけで、まったく別の考え方にたどり着きます。
3.「Yes」小さくても"Yes"を3回言うと話がまとまる
前述の著者Tim Davidの魔法の言葉にはもうひとつあります。それは「Yes(はい)」です。1回の「Yes(はい)」が次の「Yes(はい)」を引き出すという、営業に関する興味深い研究を使って説明をしています。
研究では、会話の間に相手に「Yes(はい)」を言わせるかどうかが、会話の結果に影響することに注目しています。まず最初に、営業マンにいつも通り営業をしてもらったところ、営業成績は約18%でした。そう悪くはありません。しかし、会話の早い段階で、小さなことでもいいので最低3回は相手から「Yes(はい)」を引き出すように指導したところ、営業成績は突然32%になりました。
小さな「Yes(はい)」は、「今日のお約束は3時で間違いないですよね?」の答えでもどんな状況でも構いません。
4.「Together」チームが一生懸命、頭を使って働くようになる
「Together(一緒に)」とは、関連性、所属、相互のつながりを表す言葉です。所属はマズローの欲求5段階にも入っているので、人間の心理にはとても強力に働きかけます。ですから、「Together(一緒に)」という言葉を使うことで、チームがより効果的に機能するのは驚くことではありません。
スタンフォード大学の研究では、1人で難しいパズルを解く被験者と、グループで一緒に知恵を出し合ってパズルを解き被験者に分けました。グループで「Together(一緒に)」パズルを解くようにと言われた被験者の結果は驚くべきものでした。
- 48%長い時間パズルを解いた。
- パズルの正解率が高かった。
- 見ていたパズルをより思い出すことができた。
- 作業後に疲れたと言う人が少なかった。
- パズルが面白いと言った人が多かった。
「Together(一緒に)」という言葉によって、自分1人よりも大きな何かの一部になったような気分になれるのでやる気が出たのです。
「let's(一緒に〜しましょう)」や「we(私たち)」のような言葉も、つながりや一体感が生まれるとTim Davidは言っています。
5.「Thank you」知り合った人との人間関係が続きやすくなる
感謝をするようになると、より幸せな人生になるだけでなく、仕事の人間関係やキャリアアップにもつながります。
研究によって、新しく知り合った人に、手伝ってもらった感謝の気持ちを表すと、相手があなたとの付き合いを続けたいと思いやすくなることが証明されています。ある研究では、70人の若い学生の被験者のうち、一部にだけにこのアドバイスをしました。すると、感謝の気持ちを表された人は、アドバイスを受けた被験者に、電話番号やメールアドレスなどの連絡先を教える確率が高かったのです。
また、感謝の気持ちを表した被験者たちは、かなり良い人だという評価を得ました。この研究をしたUniversity of New South Walesの心理学者Lisa Williams博士は「感謝の気持ちを表すことが、あなたは良い人間関係を築くことができる人物だという、価値ある合図となっています」と言っています。
感謝に関する研究者のJeffrey Frohは、効果的に感謝を伝えるのに大事なポイントが5つあると言います。
- タイムリーである。
- 相手の性格を褒める。
- 相手の意図を認識している。
- 相手の労力や代償を認識している。
- 自分の利益になったことをはっきりと言う。
6.「Choose to」 "have to"の代わりに使うと大きな効果が
感謝を表すと言えば、非暴力コミュニケーションの父でるマーシャル・ローゼンバーグが、「Have to(しなければならない)」を「Choose to(することにした)」に変えるだけの簡単なことで、人生が大きく変わると言っています。
- ステップ1:
これまで遊びとしてやったことがないことで、何かやりたいことがありますか? すべてを紙に書き出して、それをやらなければならないと自分に言い聞かせましょう。やるのが怖いと思っていることも、やるしかないのだと思うようになるので、書き出しましょう。
- ステップ2:
書き出したら、そこにあることはこれからやるのだということが、自分でも明らかに認められます。やらなければならない(have to)からではなく、やろうと決めた(choose to)からです。リストに書きだしたそれぞれのものの後に「〜をやると決めました」と入れましょう。
- ステップ3:
特定のことをやると決めたのだと自分で認めたら、その選択をした裏にある理由を完全に言葉にするために「私は〜〜〜だから、〜をやると決めました」と書きましょう。
7.「And」反対意見を言うときの接続詞はこれがベスト
『You First: Inspire Your Team to Grow Up, Get Along, and Get Stuff Done』の著者のLiane Daveyは、難しい会話で自分の話を聞いてもらえるようにする、素晴らしいTIPSを「ハーバード・ビジネス・レビュー」に書いていました。その中から、特に筆者が気に入ったのが「And(それで)」の使い方です。
誰かの意見に反対だと言わなければならないときは、「and(それで)」でつないでから反対の意見を言うと、必ずしも相手が間違っていて、自分が正しいということにはなりません。
自分と反対の意見を聞いて驚いても「だけど、それは間違ってる!」と切り込んではいけません。ただ、自分の意見を付け加えるだけでいいのです。Daveyはこのような話し方を勧めています。
あなたは、お客様のイベントのための予算を残す必要があると思っているのですね。私は、社員の研修のために予算を使う必要があると考えます。どうすればいいでしょうか?
『Reinventing You』の著者のDorie Clarkは、自分の話を確実に聞いてもらうために、以下のようなフレーズを使うことを勧めています。
- 「Here's what I'm thinking.(私の考えはこうです)」
- 「My perspective is based on the following assumptions...(私の見方は...を前提としています)」
- 「I came to this conclusion because...(...なので、このような結論に至りました)」
- 「I'd love to hear your reaction to what I just said.(私の発言に対する反応が聞けてうれしいです)」
- 「Do you see any flaws in my reasoning?(私の論拠になにか問題がありますか?)」
- 「Do you see the situation differently?(状況を違う風にとらえているのでしょうか?)
8.「Because」何を聞いても客観的で冷静に聞こえる
ブログを書くときに一番大事な2つの言葉のうちの1つで、最も人をやる気にさせる言葉でもあるのが「Because(なぜなら)」です。
社会心理学者のEllen Langerは、コピー機の列に割り込ませてもらうときに、この言葉の持つ力を試しました。以下の3つの異なる言い方で頼んだのです。
- 「すみません、5ページだけなのですが、コピー機を使ってもいいですか?」
- 「すみません、5ページだけなのですが、(because)急いでいるので、コピー機を使ってもいいですか?」
- 「すみません、5ページだけなのですが、(because)コピーしなければならないので、コピー機を使ってもいいですか?」
このように頼んだとき、最初の聞き方でも60%の人は割り込ませてくれましたが、「because」を使って理由を付け加えた聞き方の場合は、それぞれ94%と93%の人がOKしてくれました。
要するに、人に動いてもらいたいなら、必ず理由を言わなければならないということです。
『Well Said! Presentations and Conversations That Get Results』の著者のDarlene Priceは、「理由を伝えることで、主張が偏見のある主観的なものではなく、冷静で客観的なものに聞こえるから」この因果関係の理由付けには効果があるのだと言います。Priceは他にも因果関係を表すフレーズを紹介しています。
- Accordingly(したがって)
- As a result(結果として)
- Caused by(〜による)
- Consequently(その結果)
- Due to(〜のせいで)
- For this reason(このために)
- Since(〜なので)
- Therefore(それゆえ)
- Thus(したがって)
また、魔法の言葉のTim Davidは、さらに一歩進んで上級者向けのテクニック「ABT(Advanced Because Technique)」を紹介しています。
ABTの考え方は、相手に自分自身に対して理由付けを説明させるというものです。何かをする理由を相手にいくつも与えるのではなく、ただ「なんで?(Why?)」と相手に聞きましょう。すると、相手は自分なりの理由(because)を見つけます。そうなれば、それは相手の理由であり、人からの押し付けではなくなります。
9. 「(自分の名前)」人間は自分と関係のある物事を好む
バージニア州では、バージニアと名付けている住民が平均値の30%以上おり、ルイジアナ州では、ルイス(ルイなど)と名付けている住民が平均値の47%以上おり、ジョージア州では、ジョージアと名付けている住民が平均値の88%以上います。
これは「ネームレター効果」と呼ばれるもので、「ほとんどの人は自分に対してポジティブなつながりを感じているので、ほとんどの人は自分に関するもの(例:自分の名前の文字)を好む」ということが証明されています。
したがって、『How to Win Friends and Influence People』の著者のDale Carnegieが「人の名前というのは、その人にとってもっとも重要で親密なものだということを覚えておいてください」と書いているのはその通りなのです。
実際に、自分の名前を聞いたとき、脳はほかの名前を聞いたときとは違う独自のパターンを示すという証拠もあります。
10. 「Willing」"ノー"を"イエス"に変えることができる
社会交流学教授のElizabeth Stokoeは、人々の争い事を仲介する調停サービスをすることがよくあります。調停者と見込顧客の電話数百件を分析したところ、人の心を変える秘密の言葉を発見しました。それが「Willing(進んで〜する)」です。
StokoeはTEDトークで、電話をかけてくる人の多くは、相手が調停をしないような人だと思っているから、調停を拒否しがちだと説明しています。しかし、調停者が「先方が進んで調停しようとしているとしたらどうするか」と聞くと、反対していた人も調停をすることに同意します。
「Willing(進んで〜する)」は、「調停に興味がありますか?」というような聞き方をするよりも、はるかに効果があり、「ノー」から「イエス」に完全に返させた唯一の言葉でした。
相手が調停しないような人たから、自分もそういう人間にならなければと思っているからこそ、この言葉は効果があります。
使わない方がいい7つの言葉
逆に、一瞬そこまで有害なようには思えないのに、社員や仲間の信頼を壊し、やる気をなくす言葉もあります。Jason Friedは、次の4文字の単語の使い方には気をつけるようにと警告しています。
- Need(必要だ)
- Must(しなければならない)
- Can't(できない)
- Easy(簡単だ)
- Just(ただ)
- Only(〜だけ)
- Fast(すぐに)
他人と共同作業をしているとき(特にデザイナーとプログラマーがいる場合)は、このような言葉に気をつけましょう。これらの言葉を使うときも、耳にしたときも、慎重に対応しましょう。この言葉で本当に問題が起こります。
10 Words Smart People Always Use (and 7 They Never Do)|Inc.
Jeff Haden(訳:的野裕子)
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