Buffer Blog:この記事のタイトルを見ると、すごいことを言っているように感じられるでしょう(私としてはそう思っていただきたいのですが!)
でもこの話の良いところは、そんなすごい成果が誰にでも出せ、一見大変なことのように思えても、実はぜんぜんそうではない、という点なのです。
実を言うと、これらの成果はすべて、毎日小さなことをコツコツと長期間やり続けることによって達成したものです。
私は、ハードなやり方よりもスマートなやり方を好み、効率的に物事をこなすための細かな工夫を考えるのが好きなのです。Bufferの初代コンテンツクラフターである私は、年中この手のトピックを掘り下げる機会を与えられました。
今回またここで、私が2015年の成果をどうやって獲得したかを紹介できることをうれしく思います。
- フランス語を1日5分練習する習慣によって、基礎的なフランス語の読み書きと会話ができるようになった。
- 毎晩1ページの読書習慣によって、過去2~3年に比べ5倍の読書量をこなせるようになった。
要するに、毎日の小さな習慣をコツコツ積み重ねることで、長期的に大きな成果を生み出したというわけです。
私が新習慣を身につけようとするとき、いつも守るようにしている4つの原則があります。これらは、いろいろと試したなかで、毎回効果を発揮している原則です。
1.小さく始める:小さな習慣を毎日繰り返す。
数年前、より健康的な習慣を身につける取り組みを始めた私が犯した最大のミスは、自分に高すぎるハードルを課してしまったことでした。
読書などめったにしない状態から、週に1冊読もうとしたり、9時起きがほとんどだった状態から毎朝6時起きを目指したりしたのです。
自分のスタート地点と、目標地点の距離が開きすぎていたために、失敗ばかりでした。そして、毎回失敗するたびに、翌日の成功のハードルが上がっていったのです。習慣の本質はルーティンだと説明するのは、James Clear 氏です。
1.REMINDER(誘因)
習慣の行動を起こす誘因またはきっかけ。
(例:交差点の信号が青になる。)
↓
2.ROUTINE(ルーティン)
取るべき行動。習慣そのもの。
(例:交差点を渡る。)
3.REWARD(利益)
習慣を実践することで得られるメリット。
(例:目的地にさらに近づく。)
ポジティブな利益が得られれば、次にきっかけが生じたときも、その行動を繰り返す気になる。その積み重ねで習慣が形成される。
私に必要だったのは、自分が毎日続けられるルーティンづくりを助ける、小さな成功の積み重ねと、目に見える進歩だったのです。
やがて私は、小さく始めるという発想に出会いました。ポイントは、毎日繰り返すことに集中し、その習慣がもたらす効果などは気にしないことです。つまり、最初は質より量を優先するのです。
良い例としてデンタルフロスがあります。フロスを何年もさぼっていたあと、毎晩することを心がけたとします。その場合、いきなりフロスを始め、毎晩10分かけようとしたのでは、まず1週間と続かないでしょう。ハードルが高すぎます。
でも、小さく始めるという方法ならとても効果的で、逆にスーパーパワーになると言えます。デンタルフロスならこんなふうにするとよいでしょう。まず、その習慣を最小単位──この場合、1本の歯をフロス──で実践するのです。これでもフロスはフロスです。しかし、これで口腔衛生が飛躍的にこうようすることはないでしょう。
効果が発揮されるのはここからです。最初は、ひたすら毎晩1本フロスすることにのみ集中します。それを1週間以上、さらに2週、3週、4週と続けます。この習慣を続けるのは、とても簡単だからです。1本だけならがんばる必要もなく、やらない言いわけすらできません。いったん1本だけのフロスが難なくできるようになったら、2本に増やします。
毎晩2本だけのフロスをしばらくのあいだ続けます。そして3本に増やします。徐々に本数を増やしていきますが、一足飛びはけっしてしないことです。面倒になるからです。
小さく始めることによってまず、習慣を無意識化することに集中します。実用的な成果を生むような大きな習慣にしなくては、という心配は後回しにします。
スコット・H・ヤングの言うように、私たちは皆、自分の力量を過信する傾向にあります。未知のことに挑戦する場合は特にそうです。スコットは、より現実的な計画を立てるには、実際、自分が思うような時間とエネルギーの2割しか費やせないと想定するよう勧めています。
では、私が「小さく始める」方法を2015年の習慣にどのように取り入れたかを紹介します。
読書:毎晩1ページ
毎晩寝る前に、1ページだけ読むことからスタートしました。それ以上読むことも多かったですが、1ページしか読めなくてもよしとしました。
あとで、習慣がしっかり身についてから、タイマーをかけて15分読み、やがて寝る前に30分、そしてほぼ毎朝30分読むようになりました。
1日1ページが積み重なり、2013年には7冊しか読めなかったのが、2014年には22冊になり、2015年は33冊読むことができました。これは、2013年のほぼ5倍になります。
私は1年半かけてこの習慣に取り組んだのです。長く聞こえるでしょうが、思い返してみればそうだったというだけのことです。
習慣に取り組んでいたときは、その日のノルマをクリアするための量にひたすら集中していました。常に、小さな日々の努力に目を向けるようにするのです。しかしあとで自分の進歩を振り返ってみると、日々の習慣がいかに大きな成果になったかに気づきます。
フランス語:毎朝1レッスン
フランス語は、以前にも少しかじったことがありましたが、続けることができませんでした。その後、本気でフランス語がうまくなりたいと思ったときに始めたのが、毎朝コーヒーを飲みながら、語学アプリ『Duolingo』のレッスンを1つだけやるという習慣でした。
1レッスンにかかる時間は約5分なので、ほんの小さなコミットメントです。またリラックスしてコーヒーを飲みながらでもできるくらい簡単なものです。私はそのうち、1レッスン以上をこなすようになり、2~3レッスン、気分が乗ってきたときには4~5レッスンやるようになりました。
結局好きなだけやったということですが、最低1レッスンはやるようにしました。習慣づけのための1日のノルマは1レッスン。だから、楽に続けられ、それ以上はやりたくないときでも大丈夫でした。最近では、フランス語の文法や構文をより深く学ぶために、『Babbel』を使っています。そしてDuolingoでは、フランス語のセクションをすべて修了しました。
Duolingoによれば、それでフランス語の41パーセントを学んだことになるそうです! これは、1日5分にしては大きな成果です!
2.一度に1つの習慣に集中する
新しい習慣をつくろうとするとき、一番厄介なのが、一度に多くの習慣に取り組まないようにすることです。自己向上のための大計画を年中考えている私は、取り組み当初の意気込みがものすごく、つい一度に複数の習慣を身につけたくなってしまいます。
しかし、そういうときは必ず失敗するのです。たいていは、そのうちのいくつかが習慣にならないというパターンですが、時には、全滅することもあります。結局、一度にたくさんのことに集中するのは無理だということなのです。マルチタスキングが良い例で、脳が常にコンテキストの切り替えを強いられます。でも、一度に複数のことに集中するなど本来できないことなのです。
そんなわけで、私は、一度に取り組む習慣は1つと決めています。その習慣が、毎日造作なく無意識にできるようになってから、新しい習慣づけを始めています。
上に挙げた私の例も、毎晩本が読めるようになってから、フランス語に集中するようにしました。そしてフランス語レッスンが難なく毎日できるようになってから、早起きに集中するようにしたのです。
習慣づけは、長い時間を要するときもあります。早起きは特に、きちんと続けるのにとても苦労しました。習慣化に約4カ月かかったのです。進展を記録してみたり、自分の逃げ道を断つために友人に報告してみたりと、さまざまなやり方を試しました。きちんとした習慣にするぞという決心は固かったのですが、そのあいだ何カ月間も新しい習慣に取り組むことができませんでした。
最近では、ほぼ毎日、がんばらなくても早起きができるようになったので、あの時長くかかっても習慣化をあきらめなくてよかったと思っています。容易ではありませんでしたが、苦労した甲斐はありました。
習慣化にどれだけ時間がかかるかは、人によって違うので、あなたなら4カ月も要らないかもしれませんし、逆に足りないかもしれません。よく、新習慣は21日で身につくと言われますが、それにかかる日数は個人によってまちまちだという研究報告が出ているのです。ある研究では、新しい習慣が身につく平均日数は66日──約2カ月という結果が出ています。
私が身をもって学んだのは、どのような習慣かによって、続ける難易度が違うのだから、一概には扱えないということ、そして、一度に1つの習慣に取り組むことで、注意とエネルギーを重点的に注ぐべきだということです。
3.障害を取り除く:必要なものをすべてその場に用意しておく
習慣化したい行動をする際は、それに必要なものがすでにそこにある状態のほうが、断然実践しやすいものです。たとえば、コーヒータイムのフランス語のクイックレッスンを習慣化しようとするなら、始める時に手元に携帯電話があったほうがやりやすいですし、毎晩1ページの読書をするなら、そのとき本がベッドサイドに置いてあったほうが、やりやすいということです。
マルコム・グラッドウェルは、これを「ティッピング・ポイント」と呼んでいます。それは、行動を起こさない言いわけ、あるいはやる・やらないの分かれ目となり得る、小さな違いを指します。ティッピング・ポイントの力を示す優れた事例が、ある大学の行なった、破傷風についての啓蒙活動を装った調査です。破傷風の恐怖をあおることによって、より多くの学生に破傷風予防接種を受けさせることができるか──を調べるために実験が行われました。その結果、啓蒙プログラムが与えた恐怖の度合いは、予防接種の希望者率に影響を与えないことがわかったのです。その代わり、意外な違いが希望者率を増やしました。それは、接種が受けられるヘルスセンターを示した大学のキャンパスマップと受付時間がパンフレットに載っているかいないかでした。その情報を載せただけで、希望者率が3パーセントから28パーセントに増えたのです。
ティッピング・ポイントとは、ある行動を実行に移しやすくする、小さな違いなのです。私自身は、習慣を実践しない理由となり得る障害を取り除くことだ、というふうに考えています。
私が2016年に身につけたい習慣の1つは、ピアノをもっと頻繁に弾くことです。これまでは、いつでも気が向いたときに弾いていたのですが、この頻度では上達が望めません。でも、ピアノがすぐそばにあれば頻繁に弾くという自分の傾向に気づいたので、ピアノをリビングとダイニングとキッチンが隣接するスポットの隅に移しました。これなら、料理を加熱しているあいだとか、キッチンに午後のスナックを取りに行ったついでなどにちょこっと座って弾けるからです。
今年取り組みたいもう1つの習慣は、もっと定期的に運動することです。私は、いったん運動着を着てしまえば、必ず外へ出て走れることを自覚しています。しかし、ウエアに着替えるまでは、外で運動しない言いわけを考えることが多いのです。ウエアを前の晩に出しておいて、朝起きたらすぐ、運動のことを考える前に着てしまう、というようにすると、比較的速やかに外に出られることもわかっています。習慣づけに取り組む際は、これをもっと定期的に行えばよいのだと思います。
4.習慣を積み重ねる:現行のルーティンに新しいものを追加する
新習慣を身につけるための私のお気に入りの方法の1つが、以前からある習慣に付け加えるというものです。数個の習慣を1つのルーティンの流れにまとめ、各習慣が次の習慣を誘発するようにするのです。
この方法が良いのは、あなたには、自分でも気づいていないかもしれない多くの習慣がすでに身についており、それを利用できるという点です。寝る前の歯みがき、朝の起床、毎日同じ時間にコーヒーを入れる、といったことはすべて既存の習慣です。毎日同じ時間に、考えずにやっているなら、それは立派な習慣であり、そこに新習慣をつけ足せるのです。
現行の習慣をやり終えたあとに新習慣を実践すると、現行の習慣がしっかりしているおかげで、新習慣も身につきやすいのです。たとえば、私が朝起きて一番にすることは、コーヒーを入れに下に行くことです。そしてコーヒーができたら、フランス語のレッスンを始めます。つまり、コーヒーを入れるという以前からの習慣が、フランス語のレッスンをやり遂げる誘因になっているわけです。
そして床につくとき、ベッドに座って本を開きます。ベッドに入って、本を目にすることが、毎晩の読書を誘発するのです。
新習慣を身につけ、それを長く続けていくための最も効果的な方法は、その行動を起こす誘因を目にすることである、という研究報告があります。習慣を積み重ねるには、現行の習慣を、習慣化すべき新しい行動を起こす誘因として使うことです。
時間をかけて、現行習慣に新習慣を追加してゆけば、すでにやっている無意識の行動をうまく活用することができます。
新習慣を身につけることは、私の趣味のようなものになっています。毎日繰り返す些細な習慣を身につけるだけで、新しいスキルが習得でき、それが時とともに上達していくと思うと、ワクワクします。習慣化によって、偉大な成果が格段に達成しやすくなるのです。
How to Build Life-Changing Habits Through Tiny Changes | Buffer Blog
Belle Beth Cooper(訳:和田美樹)
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