99u:私たちは、毎日仕事上で約3万5000もの案件を決定しなければならないと言われています。たとえば、ホームページの色について迷ったり、いっそ転職してしまおうか迷ったり...。決定疲れは、皆さんも感じたことがあるかもしれません。
1日の精神力には限りがあり、意思決定を行うごとに消耗します。『WILLPOWER 意志力の科学』の共同執筆者であるRoy F. Baumeister氏によると、仕事における意思決定は、ドーナツを断ったり、ドラッグを断ったりするために使う意思力と、同じように消耗するのだそうです。
つまり、適切な取引相手を選んだり、採用を決めたりする能力が、毎日行っている選択、つまり何を着るかで悩むことで損なわれる可能性があるということです。たとえば、6歳から60歳までの女性が、平均して約287日もクローゼットと格闘している姿を想像してみてください。
洋服選びは男性にとっても手間のかかることで、1日あたり約13分を費やしています(女性は平均10分/日)。時間とエネルギーが有限であるとわかったら、毎日着る服を選ぶのは、生産的ではないと思いますよね。このプロセスを簡素化して、決定疲れを軽減したいと考えているのは皆さんだけではありません。
実際、スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグ、アルベルト・アインシュタイン、そして バラク・オバマも毎日同じ服を着ることで知られています。そして、スウェーデンを拠点とするアートディレクターであるMatilda Kahl氏は、1年中毎日同じ服を着ることで、たちまち有名になりました。ニュースサイト「Adweek」のインタビューで、次のように述べています。
Adweek:仕事着として白シャツ、黒ズボン、黒ブレザーを制服化しようと思った最大の動機は何ですか? Kahl:出勤時に衣服を選ぶ手間を取り払えば、かなりの時間とエネルギーが節約できるとわかったからです。仕事にはクリエイティブな発想を必要とするものもあるため、そちらに時間を割きたいと考えました。 Adweek:仕事着を制服化したことで、生産性に変化が生じましたか? Kahl:はい。衣服に気を使う必要がなくなって初めて、どれほどたくさんのエネルギーを消耗していたか気づきました。仕事着を制服化する前は、1日中着ている服を見直して、きちんと自分を表現できているのか気にしていました。今は、選びぬいた服を着ているので満足していますし、服を選ぶ代わりに、仕事に全エネルギーを注げます。仕事において、着こなしではなく、創造力を評価されることが、本当の意味で自信の源となっています。
このアイデアは独創的というわけではありません。男性が1920年代以降、ずっとスーツを着ている意味を考えてみてください。
彼女の場合、クローゼットに定番アイテムをそろえる「カプセル・ワードローブ」に、自分を十分に表現できる仕事用の服を用意する、というアイデアを取り入れました。自信のもてる着こなしは、その日の過ごし方や考え方、個性、社会的評価にも良い影響を及ぼします。
しかしながら、そういった利点を得るためには、最初の抵抗を克服する必要があるかもしれません。女性ファッション誌『Harper's Bazaar』の記事の中で、Kahl氏は直面したいくつかの問題について述べています。
親しくない同僚の多くは、私が宗教的なものか何かに入ったのか?と尋ねてきました。
そして、そのほかでもっとも多かった質問が、「つまらなくないか?」です。これはもっともな質問で、私の業界で、オフィススタイルが形式ばらないものであることと、大いに関係しているのでしょう。ここでは、自分たちの個性を着るもので表現する機会が与えられており、行動のすべてにおいて「クリエイティブな精神」が褒めたたえられるのです。
さらに、女性には完璧な外見を維持するよう、過度なプレッシャーがかかるものです。結局、今では皆の理想が高すぎて、登れない山のようになってしまいました。だから、多くの人がファッションに振り回されるのも、無理は無いのです。
クリエイティブな仕事のプロフェッショナルとして、自信をもって仕事着を制服化しましょう。朝、洋服を決める必要がなくなれば、きっと仕事に集中できるようになるはずです。
Why You Should Wear the Same Thing to Work Every Day|99u
Hamza Khan(訳:コニャック)
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