もうちょっと、その...フツーになれないの?
99u:私が物心ついてから、ずっと言われてきたフレーズです。でも、人生のあらゆる選択にはリスクが伴います。たとえそれが、「フツー」でいるという選択肢でも。
いちかばちかの賭けにリスクが伴うことを知っている人は多くいますが、フツーでいることの代償を考えている人はあまりいません。私に言わせれば、現状に満足して変わろうとしないことこそ、リスクだというのに。「みんなと同じ」という楽な道を選んで、人マネの人生を歩んでいると、夢が満たされることはなく、コンフォートゾーンは縮まる一方です。誰かの指示に従い、作家・ヘンリー・デイヴィッド・ソローの言う「静かなる絶望の人生」を送るだけの毎日では、不満がたまるばかり。車や家などの必需品はそろっていても、人と違うポテンシャルを持たないなんて、人生を半分しか生きていないも同然。フツーへの道は、舗装された道であり、ラッシュアワーすら存在します。でも、人と違う人生の道では、他者と出会うことはほとんどないでしょう。
アメリカで人気のゴスペルソングに、「This little light of mine, I'm gonna let it shine...」(私の小さな光、輝かせよう)というフレーズがあります。でも、多くの人が、自らが持っている光を輝かしきれていないのが現状。その理由は2つあります。1つ目は、簡単すぎること。その光はあまりに小さく親しみがありすぎるので、人は自分の才能をないがしろにして、自分の価値に目を向けようとしないのです。2つ目が、難しすぎること。人と違う自分の才能に気づいたとき、あなたはそれを信じて世に知らしめなければなりません。きっと、それに批判的な人もいるでしょう。その恐怖があるため、難しいと思ってしまうのです。
私は教師として、学生が人と違うことを恐れているのを肌で感じています。そこでよくやるのが、1人か2人の学生を前に呼んで、彼らが面白くて賢くて魅力的であることを指摘します。そうやって褒めたあとで、私はできるだけ真剣に、こう続けます。彼らの作品は、面白くも賢くも魅力的でもないと。その瞬間、彼らにはひらめきが訪れます。
学生たちは自分をさらけ出すことが怖いので、できるだけフツーのふりをするために、作品で自分らしさを表現しようとしません。出てくるのは、当たり障りのないフツーの作品ばかり。でも、「作品に人と違う自分らしさを入れなくてどうするんだ」と私は思うわけです。作品では人と違ってもいいんだということを言ってやる人が必要なのです。
「成功を収めた」人やセレブな人たちの多くは、小さなころの天啓を果敢に追い求めてきた人たちです。ポップカルチャーを代表する天体物理学者、ニール・ドグラース・タイソンは、子どものころ夜空を見上げて、「宇宙が呼んでいる」と思ったそうです。ウィル・フェレルやティナ・フェイなどの優秀なコメディアンは、小さい頃から芸風を確立していました。ティム・バートン、トニー・ホーク、レイアード・ハミルトンなどの著名人も、子どものころから持っていた資質(おたくっぽい、間抜け、好奇心旺盛、運動神経がいい、芸術的センス)を武器にお金を稼いでいます。
でも、それらのストーリーは誰もが知っていて、ドキュメンタリーで見たり、本で読んだりしたことがあるはずです。私は、困難なときでもあえて人と違うことができる真の勇気を持つ人の武勇伝に刺激されます。その人の特異性がまだ、お金や評判、成功という評価を得ていなくても、リスクを負って日々の仕事に取り組んでいる人。難しい仕事でも、人と違える人。それは、あなたのことです。
あなたが自分のユニークさを認めることは、それを大げさにひけらかすことや、誰かの人生を演じることではありません。それは、生まれながらの自分でいるための勇気です。子どもができたからといって、バンドをやめたり、詩を書くのをやめたりする必要はありません。あなたの特異性は、あなたという人物と、クリエイティブな力の源なのです。人と違う部分こそが、あなたらしさなのです。
私の友人であるJimboは、アーティストであり、ディレクターであり、児童文学作家でもあります。彼は社会に出て最初の5年間を、配管工として過ごしました。稼ぎはよかったものの、満足は得られなかったそうです。家賃のために自分らしさを犠牲にするなんて嫌だと思った彼は、母親の悲しみをよそに、仕事を辞めてアーティストになりました。彼はこう言います。「アーティストへの道を諦めることはできなかった。お金をもらえても、もらえなくても、そうしただろう。もちろん、犠牲にしたことはある。それでも、好きでもないことに週40時間費やすよりも、大好きなことを週70時間やる方がいい。今は思った通りの状況ではないにしても、少なくとも挑戦していることは確かだ」
私は、誰もが生まれながらにしてクリエイティブだと思っています。一部の人は、それを忘れているだけだと。だから、発明や創造やダンス、それから何か新しいものを世に送り出すためには、自分が生まれながらにして持つ素晴らしさを受け入れることが必要。そうやって自分の才能を信じられるようになったなら、いろいろなことが本当の特異性を持つようになるでしょう。
その時のあなたは、きっと誰かにインスピレーションを与えるでしょう。特異性ではなく、真のあなたを受け入れてくれる聴衆が見つかります。あなたは人間性を共有するポテンシャルを生み出し、他者は自分のもがきをあなたのもがきの中に見出すことができる。そして、こんな光栄のリフレインを耳にするようになるでしょう。「あなたも人と違うんですね! 私だけだと思ってた!」と。そうやって、ビジネスが生まれるのです。そうやって、人間関係が築かれるのです。そうやって、あなたは自分に合った人を見つけるのです。
子どものころあなたを人と違わせていたことこそ、今のあなたを素晴らしくしてくれています。その特異性を選ぶのは困難を伴いますが、エキサイティングな豊かさをもたらしてくれるでしょう。報酬や成功のためでなく、自分自身の自由と、他者の道を照らすためにも、そうするべきなのです。
さあ、受け入れてください。あなたは人と違うことを。
The Undeniable Benefits of Being Weird | 99u
James Victore(訳:堀込泰三)