無料アプリはみんな大好きです。タダで手に入るものを嫌う人なんて、いるでしょうか?

でも、ひとつ問題があります。ダウンロードリンクの裏側では、あらゆるデベロッパーが、自作のアプリに課金するか、無料で提供するか、ほかの方法で報酬を得るかという選択を迫られています。そして、ユーザーがお金を払いたがらなければ、デベロッパーのとる道は限られます。つまり、私たちユーザーこそが、抱き合わせのクラップウェアの需要を生み出しているのです。

米Lifehacker編集部は今週、Bittorrentクライアントのベスト5を更新しました。読者の選んだ第1位は、編集部の選んだベスト1と同じく、『uTorrent』でした。

とはいえ残念ながら、uTorrentはクラップウェアと広告という点でも議論の的になっています。uTorrentをインストールすると、すばらしいBitTorrentクライアントと一緒に、ほしくもないソフトウェアがバンドルされてくるのです。ごくまれに、くっついてきたアプリをユーザーがべた褒めすることもあります(たとえば、『Avast』で提供される『Dropbox』など)が、たいていは、ユーザーのシステムを無駄に使うしか能のないツールバーや、くだらない「システムクリーナー」です。さらに悪いことに、そうしたソフトは、オプトアウトで提供されます。つまり、インストールの際に「ノー」の意思表示をうっかり忘れると、システムに大量のゴミが詰め込まれるのです。

もちろん、クラップウェアについてデベロッパーに腹を立てるのは簡単です。ずるい手法だし、うっとうしいし、中にはウェブページに無断で広告をはさむような、有害なものさえあります。でもなぜ、人気のあるプログラムが、ユーザーをだましてまで評判を危険にさらそうとするのでしょうか? それは、そうしたクラップウェアの提供が、ユーザーが払いたがらないデベロッパーへの報酬を生んでいるからです。

プログラムにクラップウェアが含まれるわけ

150608crapware2.png

念のため、もう一度言っておきますが、バンドルされたクラップウェアは、デベロッパーの収入源です。あなたがデベロッパーで、ユーザーが自分のソフトウェアにお金を払ってくれないと想像してみれば、クラップウェアが魅力的な選択肢であることがわかるはずです。

2013年、Twitterクライアント『MetroTwit』のデベロッパー・Long Zheng氏が、クラップウェア業者との取り引きのようすを紹介しました。それにより、そうした取引がとても儲かる場合があることがわかったのです。メールのやりとりでは、とある企業(社名は伏せられています)が、オプトインのインストーラー(より一般的で有利なオプトアウトのインストーラーではありません)をバンドルしてくれれば、かなりの額を支払うと持ちかけています。

当社はWinZip、Nero、TuneUp、Yahoo!など、多くの有名ブランドと同様の提携を結んでいます。ですから、御社と提携できないのはとても残念です(後略)。

当社の見積もりですと、この種の提携を結べば、毎年推定9万~12万ドル相当の新たな収益チャンネルが御社に加わるはずです。

太字の強調は、米Lifehackerで追加したものです。言うまでもなく、MetroTwitのユーザー基盤は、WinZipやNero、さらにはuTorrentにも遠く及びません。2012年3月(上述のやりとりの約9カ月前)のブログ記事によれば、MetroTwitの1日あたりのアクティブユーザーは8000人。それに対して、uTorrentのユーザーは、1カ月あたりおよそ1億5000万人です。ですから、たとえバンドルソフトウェアがひとつだけだったとしても、そこから得られる収益は、MetroTwitのケースよりずっと高くなると考えても差し支えはないでしょう。莫大な儲けの可能性が用意されているのです。

小さなチェックボックスひとつをインストーラーに追加するだけで、デベロッパーはそのお金を手にできるのです。悪い話ではないでしょう? どちらにしても、ユーザーはそんなことを気にしないでしょうし、インストール中にいつでもチェックを外せます。それほどの大金が手に入るのなら、この程度の代償はたいしたことありませんよね? 一方で莫大な収入源、もう一方で自分の製品にお金を払いたがらないオーディエンス、という状況にあっては、そうした小さな苛立ちの種など、取るに足りないものに思えるのではないでしょうか。

ユーザー自らがまいた種

150608crapware3.jpg

「そんなことをする企業は最低だ」と罵り、あとは忘れてしまいたいところですが、私たちは方程式の反対側の要素についても考えなければいけません。つまり、ユーザーの需要です。クラップウェアが差し出すお金をデベロッパーに諦めてほしいのなら、その代わりの収入を私たちユーザーが提供すべきだと考えるのも当然です。では、クラップウェアなしで同じだけの収益をあげるとしたら、uTorrentのようなアプリの価格は、いったいどれくらいになると思いますか?

偶然ですが、その答えになりそうな数字があります――それは、年額20ドル。uTorrentでは、年額20ドルの『uTorrent Pro』サービスを提供しています。

おそらく、このサービスを利用している人はほとんどいないでしょうが、仮に、uTorrentが明日、無料オプションの提供を打ち切るとしましょう。そこでもしも、年額20ドルの有料サービスに登録するユーザーが、1億5000万人を超えるuTorrent無料ユーザーの3分の1だけだったとしても、同社は毎年10億ドルの収益を手にすることになるのです。億単位ですよ。それならばきっと、クラップウェアから生まれるほんの数百万ドルの追加収益を見限るには、充分すぎる理由になりますよね? 利用料をもう少し手ごろな年額5ドル程度に下げたとしても、現在のユーザー基盤の3分の1が利用すれば、年間2億5000万ドルの収益になります。けっして悪くない数字です。

唯一の問題は、「ユーザーがそうしないだろう」ということ。これは経営学の学位がなくてもわかることですが、1億5000万人のユーザーを抱える無料製品が、明日いきなり年額20ドル(あるいは年額5ドルでも)になったら、ユーザー数1億5000万人を長く維持するのは難しいでしょう。一部の人はアップグレードするかもしれません。場合によっては、会社の採算がとれる可能性もあります。『Plex』などのサービスは、とても安定した無料ユーザー層を維持しながら、出費を厭わない少数のユーザーに課金することで、どうにか採算をとっています。みんなが満足しているというわけです。

とはいえ、Plexはあくまでも例外であり、通例ではありません。私たちはたいてい、Androidアプリに数ドルを払ったり、いつも使っているサービスに年額5ドルを払ったりするのをためらいます(メディアの対価についても、同じような意識があります)。米Lifehackerもその例に漏れず、必ずと言っていいほど安いものよりも無料のものを選びます。でも、私たちがそうするたびに、デベロッパーはもう少し収入を増やそうと、ますますあやしげな方法を探すのです。

誤解がないように言っておきますが、無料アプリのダウンロードは、まったく悪いことではありません(それどころか、無料アプリやオープンソースのアプリを利用するべきもっともな理由もあります)。ですが、無料ソフトウェアをダウンロードしておきながら、デベロッパーがあなたの気に入らない方法で収入を得ようとしたことに文句を言うのは、ちょっと問題があるのではないでしょうか。彼らがそうしなければならないのは、私たちがケチケチしてきたからだという点を理解しなければいけません。

それでデベロッパーは苦境を脱するのでしょうか? それはありえません。良くないとわかっているソフトウェアをユーザーのコンピューターに押しつけるのは、ひどいビジネスです。でも、デベロッパーのビジネスは、私たちが彼らのソフトウェアを使うことで成り立っています。それが、みんなの大好きな無料アプリで収益を得る唯一の方法なら、これからも誰かがそうしようとするはずです。それに、お気に入りのアプリが永遠になくなってしまうのを目にするよりは、そちらのほうがまだましでしょう。それでも、クラップウェアの問題を永久に片づけたいと本気で思っているのなら、前払いの収入を望むデベロッパーをあまり批判してはいけません。

私たちにできること

150608crapware4.png

私たちのせいだと言うのは簡単ですが、問題の解決はまた別の話です。残念ですが、ユーザーが財布の紐を緩めなければ、何も変わらないでしょうし、ある商品に対して、いま払っている価格が安すぎるのだとユーザーに納得させるのも難しいことです。無料で使った経験があるなら、なおさらです。ですが、デベロッパーにクラップウェアのバンドルをやめさせたいと本当に思っているのなら、あなたにもできることがいくつかあります。

  • 有料バージョンがある場合は、そちらを買う:すべてのデベロッパーが有料バージョンを提供しているわけではありませんが、たいていは提供されています。有料で機能を追加できる場合もあれば、追加サービスのサブスクリプションが用意されているケースもあります。日常的に使っているアプリやサービスなら、有料バージョンを試してみてはどうでしょうか。
  • 無制限の「無料トライアル」をやめる:とても便利で、無料の「トライアル」を無制限に続けられるけれど、「できれば料金を支払ってください」と礼儀正しくお願いしてくるアプリはたくさんあります。実際にお金を払ってフルバージョンを買う人はごくごく一部で、その少なさはジョークのネタになるほど。お気に入りアプリを開発したデベロッパーに対してそんな仕打ちをするのは、良くありませんよね。無料トライアルのアプリを頻繁に使っていて、毎回表示されるボックスをスキップするのが習慣になっている人は、つべこべ言わずにそのアプリを買いましょう。
  • 寄付ボタンを使う:デベロッパーの多くは、アプリを(トライアルでも何でもなく)まったくの無料で提供していますが、代わりに「寄付」を求めているケースがあります。その場合も、アプリが役に立っていると思うのなら、ケチケチしてはいけません。そうしたデベロッパーは、並々ならぬ努力を積んで無料ソフトウェアを提供しているのです。いくばくかの寄付は、私たちにできるせめてものことです。
  • 『Unchecky』をインストールし、クラップウェアを無視するすべを覚える:自分の使っているアプリに払うお金がない(あるいは単に払いたくない)と言うのなら、仕方ありません。結局のところ、あなたのお金なのですから。でも、それで問題がなくなるわけではありません。現状に満足している方でも、Uncheckyなどのアプリを使えば、システムを巧みに食いものにするクラップウェアを多少なりとも制限できます。これで、あなたは無料アプリを使い続け、デベロッパーはお金を稼ぎ続けられるというわけです。もしかしたら、そうした妥協とともに生きるすべを身につけることが、解決策の一部なのかもしれません。

これで業界は変わるのでしょうか? おそらく、変わらないでしょう。ですが、試してみても損はありません。ソフトウェアが存在するかぎり、うさんくさい方法で小銭を稼ぐ人や、ユーザーの知らないうちに、承諾も得ずにクラップウェアを押しつける人は現れるでしょう。それはひどいことです。

けれど、それよりも最悪なのは、何億ものユーザーがいるソフトウェアでさえ、収益をあげるためにクラップウェア戦術に頼らなければならないという現状です。そうしたやりかたはひどく腹立たしいものですが、私たちユーザーも、自分なりにその責任を負う必要があるのです。

Eric Ravenscraft(原文/訳:梅田智世/ガリレオ)

Illustration by Sam Woolley, comic by Doghouse Diaries.