Inc:才気がある、情熱的、威圧的、短気。

スティーブ・ジョブズの経営スタイルは、肯定的にも否定的にもさまざまな言い方をされています。好き嫌いはあれども、彼の功績を否定することはできないでしょう。短期間で、彼は地球上最も成功した企業を作り上げたのですから。

しかしながら、1985年にジョブズはApple社から事実上追放されました。その数カ月後、彼は「NeXT」という名の、高等教育産業向け高性能コンピューターの製作を主要事業とする新しい会社を立ち上げました。

その際には、Apple社で彼とともに仕事をしていた才能あふれるチームも、それまでの安定した地位を捨てて、ジョブズの新たな挑戦について行きました。この事実からもどれほど多くの人がジョブズの才能を信じていたかがうかがえます。

こちらの動画は、NeXTの設立3カ月目にジョブズが主催した社員合宿の様子ですが、非常に興味深い内容で、企業家にとって学ぶべきことがたくさんあります。その中から私が注目すべきだと思った8つの教訓について取り上げます。

1.自分の熱意を示す

ジョブズは卓越したプレゼンターとしても有名ですが、冒頭のスピーチに彼のスキルがいかんなく発揮されています。彼はスピーチの中でフレーズの繰り返しを多用します。情熱的かつ自然ですが、何よりも重要なことは、彼自身が自分が言っていることを心から信じており、それを聴衆に伝えるための労を惜しまないということです。もし話し手が自分のアイデアに対する熱意を持たなければ、誰も熱意を持って聞いてはくれないでしょう。

2.価値の創造に重点を置く

ジョブズは言います。「我々がこのような活動をしているのは、それに関して我々が熱意を持っているからです。我々が高等教育のプロセスに心から関心を寄せているからであって、金儲けをしたいからではありません」。企業家として最高の気分を味わえるのは、人々に生活が向上したと感じてもらえるような製品やサービスを提供できる時なのです。

3.チームに試練を与える

動画全編を通じて、ジョブズは社員を調べ、試練を与えます。彼は何事も決して額面通りには受け止めず、なぜ人々がそのように感じているのかを知ろうとします。さらに、彼はしきりに自分が賛成しない理由を相手にはっきりと伝えます。

そうです。ジョブズは威圧的だったかもしれませんが、これについて、スティーブ・ジョブズのもとで2度働いた経験のあるガイ・カワサキは次のように述べています。「Apple社の社員に職務上での苛烈とも言える試練になぜ耐えられるのかとたずねたら、彼らは『Appleにいれば自分の職歴上最高の仕事ができるから』と答えるでしょう」。

4.皆の軌道を外さない

「明確なビジョンを保ち、何度も繰り返し伝えてくれる人が必要です。何千マイルも歩かねばならない時、自分が最初の一歩を踏んだ時は永遠とも言える道のりのように思えますが、『ゴールにまた一歩近づいたよ』と言ってくれる人がいれば、本当に勇気づけられるものです。どのような道のりにもゴールは確実に存在します。遥か向こうに見えるのは、単なる蜃気楼ではないのです」とジョブズが言うように、スタートアップから企業が成長する過程においては、何が重要なのかを途中で見失いがちです。危険なのは企業文化が変化してしまうことなのです。

しかし、自分の会社なのですから、自分が信じる物事について妥協してはいけません。この妥協のなさがゆえにジョブズは1985年にApple社を辞めることになりましたが、後に彼は同じ理由で同社に戻って来ました。そしてそれによってApple社はこれほどの成功を収めたのです。

5.優先順位を正確に定義する

チーム内で仕事の優先順位について議論をしているシーンを見ると、ジョブズは最も重要なものに集中する能力と、なぜそれが重要なのかを主張する能力に秀でていることがわかります。

チームのメンバーが、その時の最優先項目、コンピューターの販売価格を3000ドル(約36万円)に保つことについて異議を唱えたとき、ジョブズは猛烈に抗議しました。

「消費者はCPUの速度が3倍になったら4000ドル(約48万円)でも買う、と言ったわけではありません。彼らはただ『3000ドルのコンピューターなら大した製品だろう』と言っただけです。この価格は、消費者がそれなら良い製品だろうと無条件に信じる数字であるということです」

結局チームは彼の指示に従い、価格が最優先であることに変更はありませんでした。あなたは何が重要なのかわかっていても、それがなぜ重要なのかを証明できますか? 証明できるのなら、チームは従うでしょう。

6.話を遮るべき時を判断する

チームメンバーの1人が大声でまくし立て続けた時、しばらくはジョブズも辛抱強く我慢をしていましたが、やがて忍耐が尽きた彼はメンバーの話を遮って議論の流れを元に戻します。

何年も前に、私がある会議に参加した時、チームの古株の1人が20分間も話していたのに、それを中断させる人はいませんでした。私たちはみな同じようにうんざりしていたのですが、誰も声を上げる勇気がなかったのです。結局、入社したばかりの別のマネージャーが丁重にその「スピーチ」を終わらせてくれましたが、私はこの出来事から多くのことを学びました。

よい聞き手であり、辛抱強くあるのは良いことですが、時には話を遮るべきタイミングを判断できなければ、多大な時間と資源を節約することはできません。

7.過去から学ぶべきだが、過去にとらわれるべきではない

チームメンバーが過去の失敗を嘆いたとき、ジョブズは次のように話し始めます。「私は『前回失敗したからという理由だけで、今回も失敗するだろう』という言葉は聞きたくありません。失敗というものは、我々が得た成功への窓なのだです」

偉大な起業家たちなら誰しもが、失敗は成功へのプロセスの一部であることを知っています。挑戦すればするほど失敗も多くなりますが、成功の種はそこに存在するのです。

8.プラスの側面に注目する

週末合宿の最後に、ジョブズは次のように述べました。「私は我々が知らないことに関するリストを作成し、その時、我々の会社が創立90日目だということを思い出しました。また、我々が現在知っていることすべてを見返してみると、この90日間で我々がどれほどのことを成し遂げたか、本当に驚異的なことです」

前途に長い道が存在するとき、やり残している部分に目を向けると恐ろしくて気落ちするかもしれません。常にすべきことがたくさん存在することでしょう。そういうときは必ず自分がすでに成し遂げたことを振り返ってみてください。そうすれば、前進するモチベーションが沸いてくるでしょう。

Steve Jobs Knew How to Run a Meeting: Here's How He Did it|Inc.

Justin Bariso(原文/訳:コニャック

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