本や記事、インタビュー、会話などからたくさんの情報が得ても、残念ながらそのうちの大半は自然と忘れてしまいますので、一度学んだ教訓を定期的に思い出せるようなシステムを作りましょう。
読みながらメモをとる
ノートをとるのは大学生だけだと思っているかもしれませんが、ノートをとると自分の中に取り入れたことの本質と文脈を残しておけます。本の場合は、備忘録に自分の考えをまとめておけばよいでしょう。備忘録とは他の本からの抜粋を集めた本のことです。少し手間がかかりますが、コンピューターを使うとできないやり方で自分の考えを整理するのにも役立ちます。あるいは、アイデア・インデックスを使って自分が読んだ本の内容とメモを整理してもよいでしょう。
会話やスピーチの場合、重要なポイントはメモします。携帯電話やパソコンを使ってもいいですし、ペンとメモ帳でもいいでしょう(実際に手で書くと学習効果が高まります)。会話の最中は、ある種の情報が出てきたときはタイプするかどうか気を遣ってください。プライバシー尊重の観点から、書かないでおいた方がいい内容もあります。
こうしたメモはデジタル化しておけば将来楽に検索できます。どこから始めたらいいかわからないときは、『Evernote』や『Google Keep』、『Simplenote』を試してみて、自分のメモに適当なキーワードをタグづけしてください。こうしたアプリは、記事の切り抜きやスクリーンショット、画像などをコピーするのにも使えます。入手した情報の内容は簡潔に書きましょう。(例:[名前]とコーヒー、とか、[名前]の[雑誌名]掲載インタビュー、など)。頭に浮かんだ疑問や関連事項は何でもさっと書き留めておいてください。
疑わしいときは、自分で必要だと思う以上の情報を集めておくことです。必要か不要かの境目にあるときは、どちらにしろメモしておいてください(これを上手くやる方法はこちらです)。集めた情報の中から不要なものを捨てるほうが、記憶から呼び起こそうとするより簡単だからです。
集めた情報を見直す
メモをとるという行為は、旺盛な読書や情報処理には有益ですが、こうしたメモは、もう一度見直すとき、著しく有益度が高まります。2、3週間に1度は必ずメモを見直してください。
Author Ramit Sethi氏は、4週間から6週間ごとに30分間から45分間のまとまった時間を割いて、自分の本と記事のハイライトを見直すことにしています。このやり方で、忘れていたり見過ごしていたりするかもしれない重要なポイントに気づくことができます。文脈を記憶できないようなら、もともとの情報源(例:インタビュー原文やビデオに撮ったスピーチ)に立ち返ればいいのです。
自分のメモを見直すときは、もう一歩踏み込んで自分の生活や計画にどのような行動を取りこめるか考えてみてください。この情報ならこの人には役に立つかもしれない、この人なら少なくとも興味深い情報だと思ってくれるかもしれない、と思える友人や同僚に伝えてあげましょう。
同様に、入手した情報を日常会話の中で、適当なときに使ってみましょう(引用やエピソードを取り上げることと、無理にそれを押し付けることの間には微妙な境界線がありますからご注意を)。他人と情報を共有したり話しあったりするのも、その情報を覚えておくのに役立ちます。自分が無意識に見過ごしていた点を相手が指摘してくれることもありますし、自分では考えもしなかった洞察や反応を共有してくれるかもしれません。
何かと結びつけて思い出す
「物」を使ってアイデアや記憶を呼び起こすきっかけにすることができます。これを上手く使って貴重な教訓や体験を思い出しましょう。
状況や体験によって、それを思い出させるきっかけになるものは違います。たとえば、心に響いた引用文をプリントして壁に貼り、それを見るたび思い出すようにします。記憶のリストや記憶の宮殿を使って、情報を思い出すきっかけとなるものを符号化すると、このテクニックを強化できます。
一番重要な情報は毎週あるいは2週間ごとに見直しましょう。特に大切にすべき教訓や体験である場合があるからです。どんな回答不能の疑問が浮かんでくるかしっかりと吟味してください。自分のメモに立ち返り、該当する情報があるか確認する必要があるかもしれません。
直接の体験から得た「物」を使って、将来繰り返したくない間違いを思い出すようにすることもできます。たとえば、私は1度、コピー商品のデザイナージャケットをつかまされたことがあります。だから、そのジャケットをクローゼットに吊るしておいて、その体験を思い出すようにしています。
システムの一例
情報源が本の場合のやり方です。
2. ふたたびその本を開き、メモとそれに関連する引用を『Evernote』にタイプして、その情報が必要になりそうな場合(例:交渉)あるいは、該当専門分野(例:マーケティング、ビジネス)とタグづけをする。
3. もしその本が、今探している記事やテーマに関連しているなら、関連する引用をインデックス・カードに書き出して(あるいは印刷して)PCのソフトウエア上で適切にタグづけするか、備忘録に加える。
4. カレンダー上で今から4カ月後の日付に、その本や関連情報(例:交渉)を見直すように印をつける。
5. 共感を覚える内容なら、プリントアウトして壁に貼る。余計な雑音が入らないように、引用は一度に2つか3つまでしか貼らないようにする。
このシステムは臨機応変に使えます。たとえば、私は思いがけない顧客獲得の機会や交渉が発生したら、キーボードで「交渉」とタイプすると、この情報と関連メモにすぐにアクセスできるようにしてあります。
どうしても忘れるので、気軽にもう1度学び直す
人間の脳は記憶にはあまり適していません(訓練すればマシにはなりますが)。すべてを記憶しようとする代わりに、本や会話からすでに学んだ大切な教訓や体験をもう1度学び直せるようなシステムを作ってください。まず情報をしっかり集めて整理します。それから、定期的に見直して、その記憶を呼び出すきっかけになるものと結び付けて思い出せるようにしましょう。
Herbert Lui(原文/訳:春野ユリ)
Photos by watchara, Atovot, Kamilla Oliveira, Beglen, and Emily Bergquist.