敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ第79回。Macアイコンの生みの親であるスーザン・カレ(Susan Kare)さんに続く今回は、「Karma」のCEOであるスティーブン・バン・ウェル(Steven van Wel)氏にインタビュー。

Karmaは、どこにいてもインターネットに接続できる、プリペイド方式のモバイルホットスポット。米国の数あるWi-Fiホットスポットの中でもとても人気が高く、これまでに数多くのブロガーを助けてきました。

このインタビューでわかったことですが、共同創設者兼CEOであるウェル氏は、自社のデバイスに自信を持っており、スマートフォンを使わずに、iPod touchとKarmaで済ませているそうです。そんなウェル氏の気になる仕事術を聞いてきました。

氏名:スティーブン・バン・ウェル(Steven van Wel)

居住地:ニューヨーク

現在の職業:Karma創設者兼CEO

現在のコンピュータ:MacBook Air 13インチ。オフィスでは、これを閉じた状態で、Apple Thunderbolt DisplayとBluetoothキーボード、トラックパッドを使用しています。

現在のモバイル端末:iPod touchだけです。2年前にKarmaを創業した際、チームの全員が、ケータイを機内モードにすることを決めました。それでどこまでできるのかやってみようと。私は絶対にそれを守ることにしていて、インターネットへのアクセスはすべてKarma頼み。私のiPhoneは約1年半、ずっと機内モードになっていました。半年ほど前、iPhoneをやめてiPod touchに切り替えることにしました。通話はすべてGoogle Voiceで行なっています。そうすれば、携帯電話キャリアへの支払いが一切不要ですし、データ契約料も不要です。Karmaさえあれば、24時間365日、どこでもインターネット接続を確保できるのです。

コミュニケーションには、FaceTimeとGoogle Hangoutsをよく使います。特にFaceTimeは、家族や子どもたちとの会話用として、電話の代わりになっています。会議には「UberConference」アプリ。デバイスを問わず、携帯電話でなくても使えるのが便利です。

さらにミニマリズムを追求するために、つい先週、Facebookアプリを削除しました。Twitterアプリは今年早々に削除していて、今はラップトップからしか使っていません。私にとって「携帯電話」は、シンプルなコミュニケーションツールにすぎません。1日に20回以上もチェックしてしまうようなアプリは、集中力を阻害するだけだと思ったので、消しました。今のところ、後悔はしていません。

仕事スタイル: 効率的に

── 「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?

Sunrise」:最高のカレンダーアプリです。会議のスケジュール調整機能があって、「ちゃんと機能」します。Googleマップに接続したり、連絡先にアクセスしてオートコンプリートしたり、これから会う人の背景情報としてSNSからプロフィールを引っ張って来てくれたりもします。改善してほしい点はまだまだあるのですが、彼らは顧客の声に耳を傾けてくれると信じています。

Slack」:チャットに関しては、「HipChat」を使っていたのですが、数カ月前にSlackのモバイルアプリが使いやすいと知り、乗り換えました。動作がものすごく速いことが、乗り換えの主な理由です。もっと多くのサービスが導入されることを期待しますが、現時点でもすでに、社内Eメールの代替として重宝しています。私は、チーム内の1人からメールが来ると、できるだけその会話をSlackに持ち込むことにしています。彼らの大きなアイデアは知りませんが、こうやってメールを削減してくれるのは素晴らしいですね。

Dropbox」:考えるまでもありません。これまで、Dropboxに20回以上は救ってもらいました。私のデジタルライフは、すべてDropboxに保存されています(それでは怖いという人もいるでしょうね!)。妻とDropboxフォルダーを共有していて、すべての書類をそこに置いています。オフィスには、紙はまったく存在しません。紙の書類はすべて、「ScanSnap」でスキャンして、Dropboxに直行です。

Karma」:多少バイアスはありますが、Karmaはインターネット接続の素晴らしい方法の1つだと思います。オフィスでは、サンダーボルトディスプレイにつないで充電しています。外出時には、持って歩きます。これはもう習慣化していて、鍵や財布を持ち歩くのと同じ感覚ですね。Karmaさえあれば、接続のためのデバイスはひとつで済むし、データは自分のものになります。

1Password」:家族と休日を過ごしていると、「何をインストールしたらいいの?」と聞かれます。そんなときは、Dropboxと1Passwordを勧めています。私は200ものログインアカウントがあり、すべてに違うパスワードを使っています。でも、個々のパスワードはまったく知りません。1Passwordがあれば、マスターフレーズを覚えておくだけでいいのです。Dropboxと同じで、使い始めたらもう戻れないツールの1つだと言えるでしょう。

Taptalk」:メッセージングアプリは、ある意味コレクションしているような状態です。友達全員が同じアプリを使っているわけではないのがもどかしいですね。いま、いちばん気に入っているのはTaptalkです。今から2年ほど前にニューヨークに越してきたのですが、故郷のアムステルダムの友達とはいまでもよくやりとりをしています。Taptalkは、例えば自転車をこいでいるときでも、手軽にビデオを撮ることができます。故郷の友達からビデオを送ってもらったり。Snapchatと同じで、その瞬間に相手が何をしているかを知ることができるのは感動的ですね。このようなアプリが世界を小さくしていくのは本当に素晴らしい。だから私は、メッセージングアプリをコレクションしているのだと思います。「Telegram」についても、いい情報を耳にしています。

── 仕事場はどんな感じですか?

オフィスで、デスクに座っているのが好きですね。デスクの上はかなりきれいで、子どもからもらった小さなプレゼントが2つと、あとは最小限のものしか置いていません。コワーキングスペースには8つのデスクしかないので、誰も「自分の」デスクを持っていません。これが楽しくもあり、難しくもあり。私もよく、カウチでくつろいだり、テーブルを使ったり、カフェに行ったりしています。この時代にデスクなんて「必要」ないと思うと、とても楽しい気持ちになりますね。でも、大きい画面で仕事をする方が好みではあります。

141022howiwork2.jpg

── お気に入りの時間節約術は何ですか?

午前9時まではメールを見ないこと。これですべてが変わります。数カ月前に、1日を快適にスタートする方法を特集した記事でこれに出会いました。私は、朝5時半から6時に起きているので、9時までは何も考えずに「やりたいこと」だけをできる時間になるのです。メールを見ないようにすることで、生産性が驚くほど高まります。ときどきメールを書くことはありますが、受信箱は決して覗きません。最近は、弊社のカスタマーサポートソフトウェアにログインして、Karma入会時にお客様が受信する「Welcome Email」に対する反応に、返信を書いています。

その他の時間は、とにかくメールには即返信しています。未読メッセージがたまっている状態は嫌いなので、すぐに処理するようにしているのです。1日の間ずっと、受信箱に支配されない状態でいられるのは、とても快適です。

── 愛用中のToDoリストマネージャーは何ですか?

あらゆるものを試した結果、「Clear」(Mac、iOSのみ)がベストでした。シンプルかつ効率的なのがいちばんですね。Clearはカラーコード付きのシンプルなリスト。ドラッグ&ドロップで優先順位を変えることができる以外の機能は何もありません。私は、「The Daily Show」という1つのリストしか使っていません。仕事とプライベートのToDoのほか、メモとしても使っています。おかげで、私の考え、思い出すべきもの、ToDoのすべてが1カ所に集約されていて便利です。

141022howiwork3.jpg

── 携帯電話と PC 以外で「これは必須」のガジェットはありますか?

外部バッテリーを必ず持ち歩いています。iPod touchとKarmaの両方に対応できて、複数回の充電ができるものです。それともうひとつ、ポケットサイズの外部バッテリーも持っています。なくてはならないガジェットはたくさんありますが、そのどれもが、バッテリーなしでは動かないのです! 充電のためにコンセントの隣に4時間も座っていなければならないなんて事態は避けたいですからね。

── 日常のことで「これは他の人よりうまい」ということは何ですか?

優先順位づけです。いますぐに必要なこと、10分後に必要なことを把握しています。仕事でも家庭でも、そのとき注目すべきことに時間を費やすことが重要です。ToDoリストを見るときは、すぐに解決できることから取り掛かり、その他のことは後回しにします。

会社でも一緒です。当社は、スタートアップとして1つの製品だけに集中していて、すべての機能がユーザーのためになることを確保しなければなりません。人々に理解してもらうために、製品は超シンプルでなければなりません。ですから、新機能の追加よりも、既存機能の改善を優先しています。それがすべて。自社で作れる機能を追求するのではなく、お客様が必要としている機能を追求すべきなのです。お客様がずっと1つの機能を使っているのであれば、その機能に100万回の改善をしてあげるのがいいと思います。

── 仕事中、どんな音楽を聴いていますか?

静かな方がいいですね。職場ではBoseのノイズキャンセリングヘッドホンを着けています。静かな環境が難しい場合、「Spotify」でヒップホップかラップを聴いています。特定のアーティストに集中することはありません。

── 現在、何を読んでいますか?

デザイン、ソフトウェア、ハードウェアに関するブログ記事を読むのが好きです。業界経験が豊富な人や、自信の経験をシェアしてくれる人のブログです。Karmaの社員はみんな、テクノロジーやその将来についての記事を読むのが好きだと思います。私は、それ以外の博学系の読み物はどうにも苦手で...もう長いこと本に触れていません。

── あなたは外向的ですか、内向的ですか?

外向的ですね。スタートアップで意見を伝えるには、声が大きいことが大事です。これは、創設者だけでなく、社員すべてに必要な資質です。

── 睡眠習慣はどのような感じですか?

2歳と4カ月の子どもがいるので、早起きです。15年前に目覚まし時計を使うのをやめたんですが、あれは人生最高の決断だったと思います。

── あなたが受けたものと同じ質問をしてみたい相手はいますか?

イーロン・マスクです。

2つの会社をどうやって同時に経営しているのか? シンプルな答えはないでしょう。きっと、本当に懸命に働いているだけなのかもしれませんし。彼は、ジェフ・ベゾス(Amazon創設者)と同様、ものすごい数の起業家にインスピレーションを与えている起業家の1人です。彼が考えたことは、数年後には実現している。しかも、小さなプロジェクトではなく、巨大プロジェクトとして。ただただ尊敬です。

── これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください

「すべては失敗する。必ずだ」

── そのほかに読者に伝えたいことがあればどうぞ

成功に備えること。失敗に合わせてデザインすること。常に、「もしこれが大成功したらどうなるか」を考えること。自分の成功の犠牲者になってはいけません。今は数万人のお客様しかいませんが、私たちがやることはすべて、テクノロジーやパートナーシップを通して百万人と一緒に仕事をするつもりでやっています。同時に、もしものためのプランB、プランCを持っておくことが必要です。当社の次なるデバイス「Karma Go」は、プランAがこけ、プランBもこけ、現在はプランCを推進しています。今はプランCがベストだと思っていますが、プランAとBを経験しなければ、そこにはたどり着けなかったでしょう。

Andy Orin(原文/訳:堀込泰三)