メンタルをタフにすることができれば、たくさんのメリットが得られます。気持ちの立ち直りが早くなったり、もっと先まで進むことができたり。タフなメンタルは、人生があなたに打ち込む弾丸から身を守るための、鎧になるのです。でも、「タフになれ」と言われて、すぐになれるわけではありません。そこで、メンタルを鍛えるための戦術をいくつか紹介したいと思います。
そもそも、タフなメンタルって?
「タフなメンタル」とは、逆境にも負けず、強さを保てることを意味します。言い換えると、どんな困難に直面していても、集中力と判断を維持するための能力です。人生は思い通りにいかないことの方が多いものですが、だからと言って投げ出す必要はありません。タフなメンタルがあれば、失敗をしても大打撃を受けることなく、むしろ失敗から学ぶ執念を持つことができるのです。何かに圧倒されそうなときでも、回復力と執念があなたの強さを保ってくれます。
タフなメンタルとはすなわち、どんな状況にあっても、あなたの背後から背中を押し続けてくれる存在。「人生は厳しい。ヘルメットを手に入れるんだ」と語りかけてくれるのです。以下に、そのヘルメットを手に入れる方法を紹介します。
期待値を管理する
攻撃は最大の防御。逆境に対する回復力を身に付けるためには、自分の期待値をうまく管理するのがひとつの方法です。期待値をうまく管理できないでいると、いろいろなことに驚いてしまい、自分で自分を制御できなくなってしまいます。そうなると気力が失われ、持ち前の不屈の精神も弱まってしまうのです。柔軟性と臨機応変に対応する能力が、タフなメンタルを築くための礎になります。「Forbes」のChristine M. Riordanさんは、柔軟性を持つリーダーほどメンタルが強いと主張していますが、同じことは誰にでも言えるのではないでしょうか。
試合の準備ができているリーダーは、想定外の事態にも柔軟に対応する能力を持ち、守りに入ることがありません。また、タフなシチュエーションに直面しても、ユーモアを忘れません。何が起こっても柔軟なアプローチを取り、問題解決の新しい手立てを探します。リーダーは、セットプレーが崩れたときのクオーターバックのように、瞬時にしてボールを進める方法を見つけなければならないのです。
パンチをかわすことだけでなく、一撃を繰り出すことも考えなければなりません。何に遭遇するかをコントロールすることはできませんが、それに対する自分の反応は、完全にコントロールできるはずです。一歩引いて、別の視点からの状況把握に努めてください。
感情的な反応で頭がうまく働いていないときは、真の原因を知ることは困難かもしれません。時間があるのであれば、反応するまでに5分間待ってみてください。それか、解決策を見つける方法について、自分を「あなた」と呼んで自分にアドバイスしてみるのもいいかもしれません。
人は誰でも、出来事を完全に把握していないのに、過剰に反応してしまうことがあります。そんなときは、1つ1つのピースを把握することから始めて、それらを集めてから反応するといいでしょう。これを長期間続けることで、自分の期待値を、現実的なレベルに調節できるようになるはずです。
また、現実的な期待値を明確にしておけば、そのような期待値を維持できます。生きているとサプライズが意外と多いのですが、考えられることは何でも起こり得るのだと悟ることで、サプライズに対する心の準備ができるようになります。問題が発生したら、どんな結果が起こり得るのかを考える時間をとってください。解決策を探し始める前に、想定される結果を書き留めておくといいでしょう。想定される現実を見出し、それを受け入れることで、何が起きても対応できるようになります。いずれこのような考え方が自然になり、どんな状況にも穏やかかつ頭脳明晰にアプローチできるようになるでしょう。
感情に負けない
自分の感情と向き合うのは結構ですが、それが瞬時の判断力を鈍らせることもあります。メンタルがタフな人は、白熱したシチュエーションでも冷静を保つ方法を知っています。にっちもさっちも行かなくなると感情が先走ってしまいがちですが、感情の回復力を持っていれば、厳しい状況にも対応できるのです。
感情の回復力を高めるには、快適さを求めて逃げるのではなく、現実を受け入れるのが1つの方法です。米国海軍の特殊部隊には、「不快であることを快適に感じられるようになれ」という諺があります。つまり、いつまでもコンフォートゾーンの中にいては、強くなれないのです。不快な状況にも満足できるようになれば、イヤな状況から逃げるのではなく、そこから学べるようになります。「PshchCentral」のMaria Bogdanosさんは、不快な状況に直面したときにできるポジティブなことについて、次のように説明しています。
クリティカルシンキング、論理的思考、問題解決などのテクニックを使って、自分の直感への信頼感を高めます。他者を責めたい気持ちはグッとこらえてください。また、他者に期待しすぎるのも避けましょう。私たちは、ともすると専門家を信頼しすぎてしまいます。でも、自分にとって最適な方法を見つけることに関しては、あなただって十分クリエイティブで機知にとんでいるはず。だから、まずは自力でやってみるべきなのです。
あなたのことを誰よりも知っているのは、あなた自身です。でも、困難や不快な状況から逃げてしまっては、自分で克服できることを証明するチャンスを逃してしまいます。環境がすべてです。暑さに強くなりたければ砂漠に行き、寒さに強くなりたければ山に登ればいいのです。ストレスに強くなりたければ、あえてストレスフルな環境に身を置いてください。
タフな期間を乗り越えれば、自信が湧いてきます。この自信こそ、困難な状況においても平静を保つために必要なもの。感情に向き合うのもいいことですが、ある程度はコントロールできるようにしておけるとなおよしです。そうすれば、不快や恐怖から来る感情的反応をそのまま出すのではなく、そのような感情をチェックして、穏やかかつ効率的に問題対処できるようになるはずです。
自分のモチベーションの源を知る
上記2つを実践しても、継続し続けるためには、内から湧き出すモチベーションが必要です。では、そのモチベーションはどこから来るのでしょうか。その答えは、「なぜ?」を自問することで得られます。
- なぜ自分は、この問題を解決したいのか。
- なぜ自分は、この状況を克服したいのか。
- なぜ自分は、もっと強く(速く、健康に)なりたいのか。
このように自問することで、自分がそれを達成したい真の理由を見つけることができます。「やらなきゃいけないから」は、答えにはなりません。人生の困難な状況に直面したとき、それを克服したいかどうかを選択している余地はありません。でも、「やらなきゃいけない」よりもマシな理由は、絶対に存在します。具体的な目標を心に描いて、自分の行動に対して想定される反応を想像してみてください。あなたは、使命感を持った兵士。その兵士として、あなたを頼りにしている誰かを思い描くのです。すると、あなたが行動する理由が見えてくるはずです。
- これをもっと極めたいから。
- この人が私を必要としているから。
- もっと長生きしたい/このように見られたい/このように感じたいから。
今の状況を克服しなければならない理由がわかれば、文句を言わずに先に進めるようになります。それでも、さらなる障壁が訪れるでしょう。そこで、意志の強さも必要になります。意志を強くするには時間がかかりますが、シンプルで無関係な習慣を確立することでそれが可能になります。例えば、デンタルフロスがなかなか習慣づかないのであれば、シャワー中にフロスをするようにしてみてください。忘れてしまう日や、面倒くさくてサボってしまう日もあるでしょう。それでも、続けていればいつかは、シンプルな習慣になるのです。
意志が強くなれば、自信につながります。一見無関係なことでも、小さなことを達成するたびに、自分で自分をコントロールできている感覚が得られるでしょう。意志の強さは有限だと思うかもしれませんが、実際は自分が信じている分だけ手にすることができます。その状況を克服できると信じていれば、モチベーションは簡単に湧いてくるのです。
喜びを先延ばしにし、重要でないことは手放す
ライフハッカーでは、失敗がもたらす恩恵について、何度も紹介してきました。失敗に冷静に対処する方法を身に付けることは、メンタルを強くするための重要な要素でもあります。Sean Richardson医師は、2011年11月にTEDx talkに出演し、タフなメンタルと失敗の関係について語りました。その中で、メンタルをタフにするには、失敗を喜びの遅延としてとらえるといいと述べています。
失敗を受け入れ、望むものが今すぐに手に入らなくても構わないというスタンスでいることが、成功を手に入れるための最高の戦略です。そのためには、メンタルがタフでなくてはなりません。
自分の喜びを先延ばしにすること、すなわち、容易に手に入るインスタントな喜びにNoと言うことは、メンタルをタフにすることと同義です。偉大なことを、簡単に達成できるはずがありません。一生懸命働き、忍耐強く待つことで、メンタルをタフにすることの意味を理解できるようになるでしょう。何かがうまくいかなくても、そのミスをすぐに忘れ、達成にかかる時間と忍耐力を理解する必要があります。タフなメンタルとは、自らに「No」と言うのと同じように、自らに「やり抜くことができる」と言い聞かせることでもあるのです。
でも、時間をかけただけの価値が得られないこともあります。あなたは有能で、何があっても乗り越えて行けるはずですが、すべてに影響を与えられるわけではありません。自分がコントロールできる範囲を、自分で認めることが必要です。Inc.のJeff Haden氏は、自分でコントロールできないことは諦めることを勧めています。そうすることで、できることのためにエネルギーを取っておくべきだと。
メンタルの強さは、筋肉の強さと似ています。無限の強さを持つ人など存在しません。だから、コントロールできないことのために、力を無駄使いすることはないのです。ある人にとって、それは政治かもしれません。家族と言う人もいるでしょう。また、地球温暖化かもしれません。内容は何であれ、あなたはそれを大切にしていて、ほかの人にもそれを大切にしてほしい。だったら、できることをすればいいのです。投票する。傾聴する。リサイクルする。炭素排出量を下げる。あなたは、あなたにできることをしてください。他人を変えようとするのではなく、自分が変わるのです。
タフなメンタルとは、やらなければならないことや、やりたいことをするための、強さと回復力を身に付けること。あなたにとってメリットのないことに、力を注がないようにしてください。ときには、手放すことも必要なのです。
タフなメンタルは、ひと晩で作れるものではありません。手に入れるには、かなりの忍耐と、回復力を高めるための意識的な努力が必要です。誰の手にも負えないものもありますが、手に負えるものは、タフなメンタルという鎧をまとって跳ね返してしまいましょう。妥当な期待値を持って、感情をコントロールし、モチベーションを保ち、忍耐力を備えれば、小さなことに汗をかかずに、もっと大きな何かに備えることができるでしょう。
Patrick Allan(原文/訳:堀込泰三)
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