敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ第70回。 Huffington Postの編集長を務めるジミー・ソニ(Jimmy Soni)氏に続く今回は、『Design for Hackers』の著者でありデザイナーでもあるデビッド・カダヴィ氏(David Kadavy)にインタビュー。

デザイナーのカダヴィ氏は、今では作家に転向し、生産性、旅行、デザインについて執筆しています。著書の『Design for Hackers』は、優れたデザインと優れたエンジニアリングの融合が、デベロッパーやメーカーにとっていかに必要であるかを説くとともに、そのための原則を紹介しています。カダヴィ氏自身、しっかりとライフデザインをして生産的な人生を送っているので、ライフハッカーでも何度となく彼の言葉を引用してきました。そんなカダヴィ氏の気になる仕事術について聞いてきました。

氏名:デビッド・カダヴィ(David Kadavy)

居住地:米イリノイ州シカゴ

現在の職業:『Design for Hackers』の著者/教授、タイムマネジメントツール『Timeful』の顧問

現在のコンピュータ:MacBookAir

現在のモバイル端末:iPhone 5s(シルバー)

仕事スタイル: ていねいに

── 「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?

間違いなく、ナンバー1は「Evernote」です。何もかもEvernote上でやっています。ブログの下書き、講演準備、アイデアのブレインストーミング、文書処理はすべてEvernote。メールを書くのもEvernote。Gmailに貼り付ける際、箇条書きの丸印などを書き直す必要があるんだけど、それでもEvernoteを使っています。

140512HowIWork2.jpg

Evernoteを使い始めたころは、「Inbox」という名のノートブックがあっただけでした。それが今や膨大な量になっていて、それぞれのノートブックに番号を付けているんだけど、そのルールを説明できる自信がありません。それでも、機能していることは確かです。

Siriも使っています。今この瞬間も、部屋の中をウロウロしながらiPhoneのSiriを使って、Evernoteでこの記事を書いているところです。

その次は、「Timeful」ですね。Timefulは行動経済学者のDan Ariely氏が共同創設者として立ち上げた会社で、私は数カ月前からそこの顧問をしています。その関係で現在プライベートベータ版を使っているのですが、だんだん手放せなくなってきました。1日の過ごし方ややりたいことを計画するだけでなく、それらを実際いつやるかまで明確にしてくれます。私たちがメールやToDo、カレンダーなどの従来型ツールに不安を感じてしまうのは、お互いに矛盾することが多いからなのです。

最後に、「Fancy Hands」もいいですね。これはオンデマンドなアシスタントと言ったところでしょうか。このところ人に仕事を任せることに集中しているのですが、おかげで自分のクリエイティビティが解き放たれました。Fancy Handsを使うことで、人への依頼がうまくなるだけでなく、電話やアポイント、リサーチなどに使っていた膨大な時間を節約できています。

── 仕事場はどんな感じですか?

140512HowIWork3.jpg

ひとつの仕事場であまり多くの時間を過ごさないように心がけています。そうしないと、自分の考えが陳腐なものになってしまうから。家ではIKEAのJerkerデスクとAeronのイス、スプリットキーボード、Appleの24インチシネマディスプレイを使っています。Home Depotで買ったタイル板が1枚あるのですが、ハイレベルな思考をするときには、これをリビングの床に投げたりしています。

140512HowIWork4.jpg

週に3回は、コワーキングスペースに出向きます。そこで使うモバイルセットアップとしては、スプリットキーボード、AViiQのラップトップスタンド、そしてMacBook Airを使っています。コワーキングスペースでは大半の時間を立って過ごします。そろそろ自宅のワークステーションもスタンディングに切り替えたいですね。

── お気に入りの時間節約術は何ですか?

生産性を時間で考えるのではなく、認知的負荷で考えることです。

時間の単位は、人生であなたがアウトプットできるものを表現する概念としては弱すぎます。このことは、を書いているときに気がつきました。1日中壁に頭を打ちつけたあとで、15分間だけ驚異的に生産性が伸びたのです。

自分のメンタルの状態とリズムは、訓練によって、認識およびコントロールできるようになります。それこそが、自分の時間に最大のインパクトを与える最高の方法なのです。これを理解するには、David Rockの本『Your Brain at Work』がおすすめです。

自分の脳のアウトプットをハックする簡潔な方法が、10分ハックです。

── 愛用中のToDoリストマネジャーは何ですか?

ToDoリストマネジャーを大きく超える存在なのが、先ほどお話しした「Timeful」ですね(私は顧問なので、Timefulの一部は、文字通り私の働き方のために作られたものです)。

── 携帯電話と PC 以外で「これは必須」のガジェットはありますか?

お気に入りのブレンダーがない生活は考えられません。自宅を離れて1カ月単位のミニライフを送るときでも、ときにはブレンダーを持って行くことがあります。でも、先日手に入れた「Ninja」は、持ち運ぶには大きすぎるようです。

── 日常のことで「これは他の人よりうまい」ということは何ですか?

人からよく言われるのですが、私は物事をブレークダウンするのがうまいようです。執筆、アート、講演など何でもいいのですが、何かが上手な人を見つけると、それを頭の中でブレークダウンして、それを上手たらしめている要素を見つけたくなります。それが見つかると、今度はその要素をほかのことに応用できないだろうかと考えてしまいます。だからこそ、優れたデザインに関する本を書くことになったんでしょうね。多くの人にとって、デザインとは主観的なもののようですが、私にとっては一連の方程式みたいなものなのです

仕事でも同じことをしています。仕事を様々なプロセスにブレークダンしていくのです。クリエイティビティは、武器になります。

── 仕事中、どんな音楽を聴いていますか?

This Will Destroy You、Explosions in the Sky、The Album Leafなど、独特の雰囲気があるポストロックのインストゥルメンタルがなかったら、本を書き上げることはできなかったでしょう。あれ以来、Spotifyのラジオ機能を使って、Molish、Purity Ringなどの新しい音楽を探索しています。でも、これらは書き物には向かないですね。Tychoのアルバム『Dive』ほど、仕事モードにしてくれるものはありません。

音楽は大好きですし、アルバムという形の芸術があることも理解しています。でも、ストリーミングサービスが習慣になってしまった今、お気に入りのプレイリストに入っている曲でも、アーティストが分からないものがたくさんあります。

── 現在、どんな本を読んでいますか?

Senecaの『Letters from a Stoic』、アーネスト・ヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』、Indi Youngの『Mental Models』です。

── あなたは外向的ですか、内向的ですか?

両向型だと思います。そもそも外向的/内向的という分け方自体よくわかりませんが、「明らかに」どっちかであると、両方について言われたことがあるのです。人と交流することでエネルギーや刺激が得られることもあれば、誰かが存在するだけで脳が握りつぶされるような感覚になることだってあるのです。

── 睡眠習慣はどのような感じですか?

定期的な睡眠習慣ですべてが変わると知るまでに、長い時間を要しました。今では、10時以降は働かないようにして、12時までに寝て、翌朝8時ごろに起きます。それより睡眠時間を削ることは、現実的ではありません。

私はとても騒々しい通りに住んでいて、窓の数メートル先には街灯があります。ですから、寝るときにはラベンダーの香りのアイマスクとMack'sのシリコン製の耳栓が欠かせません。

寝る直前には、Andrew JohnsonのiPhoneアプリ「Relax」を聴くのが習慣になっています。

── あなたが受けたものと同じ質問をしてみたい相手はいますか?

スティーブ・ジョブズ、ベンジャミン・フランクリン、ミスター・ロジャースです。

── これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください

人に頼むこと」。起業家のPaul Bragielから2006年にもらったアドバイスです。

バカみたいに明らかなことですが、何かを手に入れたいとき、人に頼むだけで済むこともあります。達成したい何かに専念するだけで、「人に頼まれる」こともできます。これを理解できるようになるまで、あまりにも長い時間がかかりました。

Bragiel氏は今年、やったことすらなかったスポーツのトレーニングに1年を費やすことで、オリンピックへの出場を「頼まれる」に至ったのです。

── そのほかに読者に伝えたいことがあればどうぞ

生産性を高める方法を決めるとき、非常に認識ミスを起こしやすいことですね。私たちの身の回りには、私たちの邪魔をしたり、自分が賢く時間を使えているかのような錯覚に陥らせるようなものがたくさんあります。ツールもたくさん出ていますが、真の問題は気持ちの問題であって、技術的なものではないのです。Timefulでは、そのあたりの改善に取り組んでいます。

Andy Orin(原文/訳:堀込泰三)

Advertisement