孫正義 「リスク」を「成功」に変える28のルール』(三木雄信著、KADOKAWA/中経出版)は、過去にソフトバンク社長室長を務めてきた著者が、その稀有な経験に基づいて「孫正義が決断するためのルール」を明かした書籍。テーマを「孫正義の生き方」「決断の方程式」「仕事術」「逆転の思考」に分け、Q&A形式で28のルールを紹介しています。

第3章「仕事術 仕事の悩みは仕事で解決」から、いくつかを引き出してみたいと思います。

「今日できること」は今日やる!

Q:仕事がうまくいかず、夜も眠れません。どうしたらいいのでしょうか?

A:「今日の仕事」と「明日以降の仕事」に分ける

何年か社会人をやっていれば、一度はこんな悩みを持つときがあるもの。しかし仕事の悩みを抱えたままベッドに入っても、悪いことばかり想像して、ますますネガティブな気持ちが強まってくるだけ。ならば仕事を始めて、悩みのもとを解決する努力をした方がよい。これが孫正義氏の言う「仕事の悩みは、仕事でしか解決できない」ということだそうです。

次にやるべきは、「今日できること」と「明日以降しかできないこと」を明確に線引きすること。そして書き上がったら、「今日できること」をどんどん実行していく。そうやってすべてを終えたら、残っているのは「明日以降しかできないこと」だけ。そこまで作業を進めれば疲れも出てきますし、さすがに眠くなるというわけです。

孫正義氏も、深夜までミーティングを続け、詰められるところまで詰めると最後に必ず「よし! 見えてきたな」と声に出して帰るのだとか。それは、「その日にできることはやり尽くした」という合図のようなものだといいます。(138ページより)

リーダーはどんな時でも全責任を取る!

Q:リーダーシップとは何でしょうか?

A:目標を決めて役割を振って、責任を取ること

リーダーシップのあり方はいろいろ。しかし孫正義氏を間近で見ていて、著者は気づいたことがあるそうです。それは氏が「目標を決めて役割を振って、責任を取ること」でリーダーシップを発揮しているということ。

そして「社員に役割を振る」ことについて徹底しているのだといいます。あいまいな支持や複雑で難しい指示を社員に与えてもなかなか伝わらず、できもしない指示を出しても無意味。それぞれの社員の能力を見て、指示を与えることが大切だということです。

重要なのは、リーダーが責任を取ること。たとえば「孫正義が責任を取る」ことは、ソフトバンクが快進撃を続けている理由のひとつでもあるといいます。(145ページより)

段取りを組んだら考え込まないで一気にやる

Q:プレゼンテーションの準備や資料作成など仕事が遅くて困っています。どうしたらいいでしょうか?

A:難しい資料は一晩寝かせ、「1泊2日」で作る

仕事を素早く片づける方法として著者がおすすめしているのは、「1泊2日資料作成法」。ソフトバンク時代、孫正義氏から「大至急、資料を作れ。明日の朝まで」と言われる中で編み出した方法だそうです。

まず1日目に、荒削りでも一気に作ってしまう。この過程で全体の流れを決め、必要なデータなども洗い出す。そして2日目に、足りない資料やデータなどを集めて一気に仕上げる。これがもっとも効率的な資料の作り方だということ。仕事をどんどんこなしていくためには、可能な限り、その瞬間でできることはすべてやってしまい、とにかくいったん仕上げることが大切。そしてそのうえで、無駄な手戻りの原因になるような情報のインプットの時間を減らすことが重要だという考え方です。

さらに意識すべきは、考え込まないこと。孫正義氏もよく、「どんなことでも10秒考えればわかる。10秒考えてもわからない問題は、それ以上考えても無駄だ」と話していたのだそうです。(182ページより)

何かを学ぶつもりで取り組む!

Q:自分が「やるべきだと考える仕事」と「上から押しつけられた仕事」、どっちを優先させたほうがよいでしょうか?

A:「押しつけられた仕事」こそ全力を注ぎ、肥やしにする

「やるべきだと考える仕事」とは、自ら新しい企画を立てたり、その作業をしたりすること。将来への投資ともいえ、自分でやるべきだと決めた仕事だからこそ、納期も仕上がりのイメージも自分で決めることができる要素が多い。

それに対して「上から押しつけられた仕事」は、重要度が低く、時間や手間がかかったり、失敗する可能性が高いものかもしれません。しかし、こうした仕事こそ、実はていねいにしっかりやるべきだと著者は断言しています。なぜならそういった仕事は、仕事のやり方や、他部門の考え方を学ぶよいチャンスである場合が多いから。

地味で無駄に見える仕事でも、そこからどんなことをどれだけ学べるかは、仕事に対する姿勢次第。単に「押しつけられた」と捉えず、なにかを学ぶつもりで取り組むことが大切だというわけです。だからこそ、ビジネスパーソンならば、上から押しつけられた仕事をきっちり仕上げるべき。そのうえで、将来への投資になる仕事をやるべきだといいます。(191ページより)

本文内では、このようなひとつひとつのことがらについて、孫正義氏がどのような結論を出したかなどが具体的に説明されています。だからこそ、説得力は抜群。「なぜ、そうなるのか」の根拠が、きちんとわかる内容になっているのです。

特にリーダーシップについて悩んでいる方にとって、本書は大きなヒントになるのではないでしょうか。

(印南敦史)

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