Inc.:自律的に仕事をする社員は、そうでない者よりも幸福感が高く、生産的であることが研究によって示されています。
自分のスキルにマッチしたポジションを与えられている社員は、その部署全体、いや組織全体の在り方を変える力さえ持つことがあります。しかし、それは社員が自分の本能と創造性に任せて自主的に仕事をすることが許されている場合に限ります。
社員に自律的な仕事をさせて成功している企業のひとつが、急成長中のスタートアップBellhopsです。このスタートアップは、小規模の引っ越し案件が生じたときに地元の大学生を派遣する事業を営んでいます。この企業は、たった1年で社員数を2000人から1万人に拡大させました。自律的な組織を築くことによって。また、この自律性こそが、同社がすばらしいカスタマーサービスを提供できる秘訣であるとも言われています。
Bellhopsは各都市のシティマネジャーを、アメリカ全土の名の知られている大学出身者から雇い、そして学生と直接契約を結びます。雇われた学生は「Bellhops」と呼ばれ、地元の小規模な引っ越し案件を引き受けます。「Bellhops」は全員、社内の仕事情報ページに直接アクセスでき、「Captain」または「Wingman」としての仕事に応募できます。「Captain」は各案件の管理また顧客との調整を行い、より高い賃金を支払われます。
「Bellhops」は年間を通して引っ越しの仕事に携わることができ、自分のスケジュール、一緒に働くメンバー、どれだけ稼ぐかは自分の決断次第で変化します。
共同創業者のCameron Doodyは「現在、多くの人はただ仕事を求めているのでなく、充実感を味わえる仕事を求めています」と言います。さらにこう続けます。「職場における充実感というのは、意思決定の自由と自分だからできる仕事を得ることで生まれます。従業員の意識の高まりは同時に、顧客サービスの向上にもつながります。なぜなら、各社員が自分の仕事に対して、自分自身が経営者であるという意識で取り組むからです」
ある条件範囲の中で、選択をさせる
Bellhopsは社員に、スケジュールと責任範囲という点で裁量を与えます。社員は、担当したくない引っ越し案件には手を挙げません。こうした自由があるおかげで、社員は1件1件の仕事を、良い仕事の成果を残すため、各顧客により献身的にサービスをするための貴重な機会だと捉えるようになります。
顧客に社員を評価してもらう
高い能力をもった社員を雇うために、いまだ履歴書に頼っているのであれば、採用戦線での負けは必至です。履歴書では最高の人材を見つけ、雇うことがもはや難しいのです。
Bellhopsは、顧客に引っ越し案件を担当した社員の評価を点数でつけてもらうようにしています。そのため、社員はさらにやる気が増し、最高のサービスを提供しようと心がけます。より高い点数を得られることをめざして。
こうして得られた顧客からの評価は案件のたびにたまっていき、大学卒業と同時に各社員に公開されます。それは、従来のどんな履歴書よりも意味をもつ、リアルな「履歴書」であると言えるでしょう。すばらしい点数を得るためには、すばらしいサービスを行わなければならないのです。
9時~5時という労働時間にとらわれない
人はみな、それぞれ異なります。朝早く仕事をするのがもっとも生産性が上がるという人もいれば、自分にとってのベストな労働時間が週末だったり真夜中であることもあるでしょう。自分にとっての最適な仕事時間を決めることができると、仕事に対するやる気が大きく高まります。
それでも、管理職の多くは9時~5時という労働時間を好みます。理由はただひとつ。管理しやすいからです。社員のスケジュールの管理権を手放せるほどの信頼を社員に置いていないのです。もし、社員の仕事ぶりを確認するために、9時~5時の労働時間を必要としているのであれば、適当な人材を雇っていない、または管理すること自体に執着しているかのどちらかであると言えるでしょう。
社員の一体感を高める方法を見つける
典型的な労働時間という概念を手放すことができた場合、一方でやらなければならないことは、一体感のある社内文化を築くということです。社員自身に労働時間を管理してもらうようにすると、すばらしい自律性が生まれますが、同時に社員の孤立化を招く恐れもあります。
Bellhopsは、このジレンマを解消するために、社員の一体感を高めるための方法を見出しました。アメリカ全土に散らばった社員を結びつけるための方法です。
社員は全員、蛍光緑の帽子を身につけます。社内のニュースレターは、大学生らしいワイワイした雰囲気にあふれ、45キロのラーメン、スカイダイビング体験券、子犬を賞品とするような社内コンテストも毎週開催されます。また、各シティマネジャーは毎週、地域担当ディレクターとミーティングをし、社内の価値と仕事の進め方が明確に41週117都市で働く1万名の「Bellhops」に理解されているかが確認されます。
トレーニングを通じて、会社の価値を理解してもらう
会社のビジョンが、どれだけすばらしい内容だったとしても、それだけで社員のやる気を十分に高めることができると考えない方がいいでしょう。
会社の価値とは? またそれが社員にとって大切であるべき理由とは? 社員は会社との一体感を得たいと願っており、そのためには会社の価値を外にも明確に分かるように示さなければなりません。会社が期待することを社員に推測させてはなりません。価値を明確にし、その価値に沿って行動しなければなりません。
Bellhops アカデミーという呼び名で知られる、Bellhopsの社員トレーニングビデオを見ると、社員に期待されている顧客サービスのレベルを垣間みることができます。同社の顧客サービスの真髄とは、つまり人間同士の関係を築くことなのです。
顧客に対して本物の仕事ぶりを印象づけ、顧客と強い絆をつくるように社員を奨励することはつまり、顧客サービスのレベルを大きく高めるように奨励することであると同時に、社員に対して仕事に対する満足感も与えているのです。
社員の自律を高めるための方法としてほかにどのようなものがあるか、ぜひ考えてみてください。
The Compelling Case for Giving Employees More Freedom |Inc.
Shelley Prevost(訳:佐藤ゆき)