営業成績はトップクラスで、自分は優秀な人間だと勘違いし、すべてにおいて「やる気」を勘違い。その結果、周囲から「扱いにくい人間」だと思われるようになり、予期せぬ部署に左遷されてしまうことに...。
『やる気の伝え方』(横山信治著、徳間書店)の著者は、このような失敗をしたことがあるのだそうです。つまり本書は、そんな体験を軸に「もっと上手に立ち回ってほしい」という思いを込めて記された書籍。根底に根ざしているのは、「やる気」の伝え方です。
「やる気」とは元気よく自己アピールすることではありません。
「やる気」とは、相手に伝わらなければ、自己満足です。即ち、目線が相手に向いていないということなのです。
(4ページより)
きょうは、「Step 01 『上司との関係』を改善する」の中から要点をピックアップしてみます。
上司が陰湿だった時
人間には長所もあれば欠点もあるもの。そして、そのどちらに注目するかによって、その人の人生は大きく変わるといいます。また著者は、「もしあなたの目から見て欠点がある上司ならば、それはチャンスです」とも断言しています。なぜならそれは、「上司を助けてあげることができる」ということだから。結果、もし上司からなにも返ってこなかったとしても、陰ながら人の役に立った経験は、人生というスパンでみれば必ず大きなプラスとなるはず。
人に好かれる一番の近道は、「人を好きになること」。理由は明白で、目の前の人のよい面に注目して好きになると、ポジティブな感情が伝わるからです。逆に欠点に目がいくと、ネガティブな感情が発せられるもの。そして一番の問題は、自分が相手を嫌うことによって、相手も自分のことを嫌っているのだと思い込んでしまうこと。つまり上司の長所に目を向け、欠点は見ないようにすることが大切だということです。(15ページより)
上司と気が会わない時
「好き」「嫌い」は感情なので、コントロールすることは不可能。しかし思考は、コントロールできるものです。つまりここで著者が言いたいのは、人の欠点を見つけるよりも、「上司の良いところを見習い、自分の実力に変える方が得」だということ。
そしてそのために優先すべきは、相手に興味を持つことだといいます。なぜなら興味を持つことそのものが、相手の自己重要感を上げるから。そして興味を持って話を聞くと、共通項が見つかる。すると、相手に好感を抱くポイントが増えていく。相手がどう思っているかを空想するより、相手に良い意味での興味を持って関わる方が建設的だという考え方です。
なお人間関係をよくするには、
1.自分がしてほしいことを、相手にしてあげる
2.自分がいやなことは、相手もいや
3.人が避けることを、率先してやる
この3つが基本的な考え方であると、著者は記しています。(19ページより)
上司との関係が悪化した時
うまくいかない上司とのコミュニケーションをよくするための策として、著者は「仕事上の悩みを相談しましょう」と提案しています。「上司に相談するときのポイント」は次のとおり。
1.答えが簡単に出るようなことを相談する
2.自分の弱みや欠点をさらけ出す(無理のない範囲で)
3.上司の得意なことを相談する
人は自分を頼りにしてくれた人に好意をもつもの。相談されると上司もうれしいので、自分の欠点を打ち明けることで、信頼関係も生まれるそうです。もちろんこれは、同僚や部下にも応用可能。
そして、上司に相談することの利点は次の3点だそうです。
1.上司とゆっくり話すきっかけを容易につくることができる
2.上司に相談することで、好印象を与えることができる
3.上司の考え方が理解できる
大切なのは、相談したら必ずお礼をすること。そうすれば当然ながら、信頼度も上がるというわけです。(29ページより)
書かれていることの大半は特別なことではなく、むしろ「当たり前」なこと。しかしそれらは、忙しい日常のなかでつい忘れてしまいがちなことでもあるはず。つまり大切な原点に立ち戻るという意味でも、読む価値があると言えるのではないでしょうか。
(印南敦史)