何か新しいことを学ぶ、目標を立ててそれを達成する、あるいは、日常の雑事をこなす。こうした時には、とかく脇目も振らずに目先の課題をやりきることに集中してしまいがちです。
でも、何かを極めたいと切に願い、大胆な発想の転換を求めているのなら、「ダブルループ学習」という方法を使ってみてはいかがでしょうか。これは米紙『ニューヨーク・タイムズ』でも紹介された思考法です。ダブルループ学習は、いわば強制的な自省とも言えます。自分が今までにやってきたことや、目標達成のために立てた計画そのものを、あえて疑いの目で見てみよう、というわけです。
1970年代に、ハーバード・ビジネス・スクールでビジネス理論を研究していたクリス・アージリス氏(ちなみに、90歳の今も健在で、同大学の名誉教授職にあります)は、組織や個人が計画を阻む障害に行き当たった時にとる行動について研究を始めました。
同氏は、障害に対するもっとも一般的な反応を「シングルループ学習」と名づけました。これは、障害が発生した理由を外的要因や技術的な問題に求めるもので、視野の狭い思考プロセスと言えます。
それと比べるとあまり一般的ではありませんが、アージリス氏がはるかに効果的な認知アプローチとして挙げるのが「ダブルループ学習」です。こちらの思考法では、それまでとってきたアプローチのあらゆる面に疑問を投げかけます。そうすることで、自分の方法論や偏見、心に深くこびりついている思い込みに光を当てるのです。心理学の手法を応用してこうした自省を行うには、自分の信条を真摯に疑い、そうして得た知見に基づいて行動を起こす勇気が必要になりますが、私たちの人生や目標について、新しい見方ができるようになるかもしれません。
新しいアイデアを生み出すために、まず自分自身の思い込みを疑え、とはさんざん聞かされた話です。とはいえ、ダブルループ学習の手法は、疑うための方法を多少なりとも示してくれているので、応用しやすいといえますね。
Secret Ingredient for Success | The New York Times
Thorin Klosowski(原文/訳:長谷 睦/ガリレオ)
Photo by Doug Waldron.