「たくさんの選択肢の中から、後悔のない人生を選択してもらいたい」

去る11月19日に東京都立産業貿易センター台東館で行われた就活イベント「Venture's Live」で掲げられていたメッセージです。ベンチャー企業40社の人事が結集し、学生たちに自分たちの仕事や企業の情報をしっかり伝える。それによって「就職先は大手企業か、ベンチャー企業か」と迷った時も、視野を広くもち、学生が納得のいく選択をできるようにすることがイベントの目的です。

「就職活動」の道は1つじゃないことを、短期連載でお届けします

ライフハッカー[日本版]編集部に配属になってから、ベンチャー企業やスタートアップで働く人たちとお話をする機会がグッと増えました。私は27歳ですが、自分が恥ずかしくなるほど、しっかりとした、意欲ある同年代の方もたくさんいます。そこで思ったのは「もし、最初からこの人たちと働いていたら、自分はどうなっていたのか」でした。まるで意識は変わっていただろうし、ベンチャー企業もきっと面白いはずだと。

そこで本連載では、冒頭で紹介したVenture's Liveのレポートを皮切りに、Facebookを活用して新卒採用をしている人事担当者や、大学を休学してベンチャー企業のCTOを務める人などにインタビューし、「いかにして進路を決めるのか」を考えるヒントとなるような記事をお届けしていきます。いわゆる就職支援サイトに登録して大企業を目指すのとはちょっと違うルートで、働くことを考える話です。転職活動にもつながるポイントもあるかと思いますので、「いまの自分を変えたい!」という方も、ぜひお付き合いください。

第1回目のテーマは、Venture's Liveで学んだ「自分の軸」を決める方法。会場で行われたグループワークの内容なども交えて、紹介していきます。

800人の学生が来場。ベンチャー企業と働き方について考えた

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Venture's Liveは、就職活動中の学生を対象にベンチャー企業40社の人事担当者が協力して開催。費用を抑えつつも、多くの学生へアプローチできるようなイベントを目指し、人材紹介会社を通さずにすべて自分たちの手で作り上げました。ちなみに、ここでいうベンチャーは、会社の「規模」ではなく「スピリット」のことだそう。参加企業の一覧は公式サイトで見られます。

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イベントは大きく2つのパートに分けて進行。まずは「企業説明会」です。学生は、指定された3社合同のパネルディスカッションを3回、ランダムに選ばれた企業の個別説明を1回、その後は好きな企業の個別説明を2回、合計12社の説明を受けました。

「すべて自由に選べてしまうと、どうしても知っている企業に足を運びがちです。パネルディスカッションと1社目の企業説明を主催者側で指定したのは、興味のない分野に引き合わせ、学生の視野を広げることを大切にしたかったからです」と、主幹メンバーであるマクロミルの山口翔さん。この「偶然の出合い」が、後に行うグループワークにも生きていきます。

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説明会では「ベンチャーの定義とは」「ベンチャーあるある」など内実を伝えることをはじめ、そのもの直球で「大手企業VSベンチャー企業」について話すところも。自社の説明はもちろん、それらを取り巻く環境から理解してもらおうという姿勢が見られました。

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次に、イベントの目玉ともいえる「グループディスカッション&ワーク」。ディスカッションではテーブルごとに人事担当者がつき、その場で評価とフィードバックをするだけでなく、優秀者には後日開催される40社合同選考会への参加資格となる「プレミアムパス」を贈呈。参加企業すべての1次選考を受けられ、合格すればエントリーシート免除や特別選考権などの特典がつきます。学生にとっては学びの場であり、チャンスでもあるわけです。

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ワークは「就職活動の軸(価値観、選社軸)を考える」をテーマに、いま興味のあること、今日新たに興味を持った点/持てない点を要素として洗い出し、自分はどういった価値観を持っているかをまとめます。その後、同じグループの人と共有し、より考えを深めていきます。

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最後には「プレミアムパス」を贈呈。約半日をかけて行われたイベントで、学生は一般的な会社説明会だけでは得られない経験をしたのではと感じました。ベンチャー企業について知る、自分を知る、同年代のライバルを知る、この3点をわずか半日で一気に学べたのは大きいでしょう。

本当に「情報が足りない」のか?

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さて、今回のディスカッションのテーマは『大学1・2年生を対象にした就活サービスを企画し、人事に提案をしてください』でした。自分たちにとって身近であるおかげか、各テーブルで熱い議論が交わされていました。会場を歩きながら、いくつかのディスカッションを見ると、ある共通のキーワードが見えてきました。

「1・2年生は(興味があるけど)情報が足りない」「会社を知らない」というように、知らないことを前提としたサービスをつくろうとしていたグループが多かったのです。情報過多ともいわれる時代に「足りない」「知らない」というのは、少し不思議な感じもします。実は不足しているのは情報でなく、知ろうとするモチベーションなのではと、私は思います。つまり、知りたいものがないから情報を得られないわけです。

この問題を手助けするための方法があります。「Will - Can - Must」の輪で考えるやり方です。

「Will - Can - Must」の輪で自分の軸を決める

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これはVenture's Liveのワークでも話された内容ですが、誰にとっても有用な方法だと思いました。まず、それぞれが重なりあうように、円を3つ書いてみてください。

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Will:やりたいこと、なっていたい姿 Can:できること、スキル Must:会社から求められること、やらなくてはならないこと

この3つの輪が重なりあったところが「自分の軸」になり、輪の重なりが大きいほどに、やりがいをもって日々の仕事に当たれるのだそうです。

では、それぞれの輪について、当てはまることを書いてみましょう。些細なことでも構いません。そして、「自分の軸」と選んでいる会社がちゃんと合っているかを確認します。合っていない場合、その理由を考えてみる必要があるのです。たとえば、まったく興味のない(Willが欠けている)ところを選んでいませんか? 

「知ろうとするモチベーション」は「Willの大きさ」に比例する

なりたい姿があると、CanとMustが必要になります。その時になってはじめて、「自分の軸」をベースにした情報収集ができるようになっていくのです。これは就職だけでなく、生きていくあらゆる面でも同じことがいえるでしょう。

私がベンチャー企業の人たちを見ていて感じるのは、「Willがとても大きい」ということです(もちろん、だからこそのベンチャースピリットなのですが)。自分にWillがないと感じる人ほど、実際に彼らの話を聞いてみる価値があると思います。

さて、3つの輪の広げ方については、Venture's Liveの主幹メンバーへインタビューをした連載4回目でもあらためて取り上げます。まずはこういった考え方があることを知っておいてください!

800人のライバルがすでに動き出している

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今回のVenture's Live、グループディスカッションで優秀者として認められ、プレミアムパスを獲得したのは80人でした。彼らは選考においてはもちろん、1つの自信を得たことでしょう。そして、会場にいた800人も説明会やワークを経て、前に進んでいます。

Venture's Liveは今後も、イベントの開催や、ウェブサイトを通じて情報発信を続けていく予定だといいます。「知らない会社の人たち」として片付けてしまうのではなく、彼らはなぜベンチャーで働いているのか、そして自分の軸と共鳴するところはないか、そういった点から見ていくと発見があるはずです。

Venture's Live

(長谷川賢人)

illustration by ナカオ☆テッペイ

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