Inc.:今回の記事のテーマは、宇宙、AOLの共同創設者、そして第二次世界大戦を題材にしたドラマ『バンド・オブ・ブラザース』です。また、起業におけるリーダーシップで重要なこと、そして謙虚さについてです。いったい何のことか分からないかもしれませんが、少々のご辛抱を。新婚生活の新鮮味が失われつつあった最近、私と妻は、4200メートルの標高を誇るハワイのマウナ・ケア山へ、トレッキングに出かけました。そこは、ハワイのなかでも冬用コートや帽子が役に立つ稀な場所の1つであり、星空を眺めるのに最高な場所でもありました。
マウナ・ケア山に惹かれるようになったのは、70セクスティリオンの星が宇宙には存在するという科学者の試算を紹介した本を読んでからのことです。
セクスティリオンというのは、10の21乗です。それは人間の想像力をはるかに越える数ですが、たとえば地球上の人間の数、70億と比較してみてください。70セクスティリオンの星が存在すると試算すると、地球上の1人の人間につき、1兆の星があるということです。
謙虚さについて考えたこと
私は、自分という存在のちっぽけさに思いをはせました。すると、私の頭には2人の偉大な存在が思い浮かびました。AOL共同創業者でありベンチャーキャピタリストでもあるスティーブ・ケース氏、そしてリチャード・"ディック"・ウィンターズ氏です。ウィンターズ氏は、第二次世界大戦中にパラシュート歩兵連隊を率いた軍人であり、米テレビドラマ『バンド・オブ・ブラザース』で描かれたことで、有名になりました。
私は、最近行ったケース氏とのインタビューで、意外な言葉を耳にしました。彼は、ビジネスのアイデアを売り込むときに犯しがちな過ちは「謙虚さの欠如」であると述べたのです。
同様に、ウィンターズ氏も自身の著作において、リーダーシップにおける謙虚さの重要性を次のように説いています。「誰が功績を得るかということに頭を悩まさなければ、より多くの仕事を成し遂げることができる」。
ノルマンディーの過酷な闘いを率いた兵隊である彼は、続けてこのように書きます。「リーダーは作戦が失敗したときに責任を負い、成功したときにはチームのメンバーに功績を与えるべきだ。彼らが最大の仕事をしたのだから」。
大切なことは「バランス」である
宇宙の壮大さを前にすれば、謙虚さを感じるのは当然のことでしょう。ですが、謙虚な姿勢を保ちつつ、壮大な目標を達成するには実際どうすればよいのでしょうか?
その答えは「バランス」にあります。この地球上でもっとも美しい景色の1つを眺めながら思索に耽った結果、思いついたのはこのようなことです。
謙虚さとは「チームを尊重すること」
もし、あなたがリーダーとしてチームメンバーを尊重できないのであれば、チームを編成しない方が両者のためになるでしょう。チームメンバーを尊重するというのは、彼らの貢献や個々の能力を尊重するということでもありますが、同時に効果的にリーダーシップを発揮することでもあります。価値のある目標を設定するだけでなく、どうすればその目標に達することができるか、道筋を示すことが必要なのです。
謙虚さとは「顧客を尊重すること」
同様に、謙虚さとは、あなたが解決しようとしている問題を抱える人々を尊重し、また傾聴することでもあります。Jon Burgstone氏と私が、以前別の記事でも書いたように、価値のある起業とは「顧客の抱える重要な課題を解決し、ささやかな形で世界をより良い場所にしなければならない」のです。つまり、顧客を尊重し、彼らの声に耳を傾けることなしには、重要な課題を認識することはできません。
謙虚さとは「大胆な問題に挑むこと」
世界最大のインターネット企業をスタートする? すばらしい目標です。ナチスを倒して、ヨーロッパを解放する? 間違いなく、勇敢で価値ある挑戦です。起業を成功させるための要因のひとつが、他の分野におけるリーダーシップの在り方とも共通するというのは驚くことではありません。つまり、解決すべき問題、努力を費やすべき目標を見つけることが重要なのです。
謙虚さと壮大さというパラドックスに関する哲学は、博士論文のテーマにも値するほどの大きな論考かもしれません。真の謙虚さを実践するには、無数の星に手を伸ばす必要があります。幸い、私たちの空には70セクスティリオンの星があるのです。
Be Humble When You're Changing the World |Inc.
Bill Murphy Jr.(訳:佐藤ゆき)
Photo via Shutterstock.