私が初めてパニック発作を経験したのは19歳の時でした。インターン先の会社でプレゼンをすることになり、経営陣とインターン仲間が勢揃いする前に立った時、何かが起こったのです。皆の目が私に注がれているのを感じて、急に頭がクラクラしました。体は震えだし、寒気がしました。普段なら涼しい顔でどっしり構えていられるのに、この時は全然違って、すごく怖かったのです。
インターン仲間で一番仲の良かった子が、静かにこう言ってくれたのが聞こえました。「呼吸して」。このまま気絶してしまう、とすら思いましたが、気絶はしませんでした。どうにか最後までプレゼンをやり通すことができました。でも終わってから、トイレに行って泣きました。
パニック発作で悩む人は多い
私の体験はパニック発作としてはありがちな展開で、よく不安感に襲われる人にとってはお馴染みのものです。私の場合、2度目は祖母がらみで、3度目は好きな男の子のことで、発作が起きました。
あれから7年、今では自分の「トリガー」(何をきっかけに不安を感じるか)を把握していますし、いくつかの対処法も心得ています。それでも、不安感というモンスターの手ごわさは変わりません。それは影のようなもので、いつも私の後ろにぴったり付きまとっているのです。特に、仕事がらみで発作が起こると参ってしまいます。
仕事中に不安感に襲われるのは本当に困ります。抑制しようとすればするほど、不安は強くなります。アメリカでは18歳以上の約680万人(全人口の3.1%)が、「パニック障害」を抱えていると推定されています。
「繰り返す」ことで不安感はなくなっていく
パニック発作について、不安に悩まされたことのない人に説明するのは、外国語で話をするようなものです。本人としては、本当に世界が崩れ落ちていくような気がするし、心臓発作を起こすんじゃないかと思います。何度パニック発作を経験しても、毎回やっぱり世界が足元から崩れていくような感覚に襲われます。実はこれを書いている今も、思い出してちょっと気分が悪くなっています。
それでは、パニック発作が仕事やキャリア形成に影響しそうな場合、どうすれば良いでしょうか? 私の場合は、人前で話すのが苦手だったのですが、思いがけずこれを克服する機会を得ることになりました。自分の会社を立ち上げたために、自分のことや会社で提供するサービスについて、しょっちゅう説明しなくてはいけなくなったのです。ちなみに今も、こうした説明をだいたい1日3回は繰り返しています。不安を感じる物事でも、こんな風にたくさん回数をこなせば、それほど不安でなくなります。
以下に、私が不安感を克服するきっかけを得た出来事をまとめてみます。
周囲の人に知ってもらう
不安感に対処するにはさまざまな方法があります。私の場合は、「不安でナーバスになっている」のを周囲の人に知ってもらうと良い時があります。あまり言葉を費やしたくないのなら、個別のミーティングで「サポートが欲しいと思っている」と伝えるだけでも良いでしょう。不安感に悩まされている人は意外に多いですし、サポートが必要な場合はあるのです。
きちんと食べる
パニックによく似た身体症状は、きちんとした食事をせず、カフェインを摂りすぎている場合にも起こります。こうした食生活が原因で起こる低血糖症の症状は、パニック発作とほとんど同じなのです。低血糖症を防ぐ、きちんとした食事をしましょう。
トリガーを把握し、慣れる
ベストセラーになった『Quiet: The Power of Introverts in a World That Can't Stop Talking(静かに:おしゃべりを止められない世界の中で、内向的な人が持つ力)』の著者であるSusan Cain氏と話したことがあります。その時にCain氏は、内向的な人にとって(というか、おそらくほとんどの人にとって)、話をすることが不安材料になりがちなのは、それが自然な習慣ではないからだと言っていました。
Cain氏はこの記事の中で、「スピーチが苦手な人は少人数の前で話すことから始めると良い」とアドバイスしており、世界中に支部のあるスピーチ練習団体Toastmastersを紹介しています。そこで私もこの団体に入会しました。例会に出て、初対面の人たちの前でスピーチを披露する日を待ち構えています。きっと不安で震えてしまうけれど、ほとんどの参加者も、実は同じ気持ちなのでしょう。
他人の評価を気にしすぎない
不安感の多くは、「周囲がどう思うか」という意識から来ています。私も、パニック発作のせいで、周囲から弱いとか冷静でないとか思われたりするのではないかと気にしていました。何しろパニック発作の最中には、世界が崩れ落ちていくように感じるのですから。ところが周囲の人は、本人がそんな風に感じているとはわかっていないことが多いのです。
1人で抱え込まない
不安感の克服に効果的な方法は人それぞれです。セラピーや投薬治療が良い場合もあるし、事前に何度も練習すれば不安感が減り、身体症状も出なくなるという人もいるでしょう。ただ、多くの場合は、周囲のサポートが必要です。私の場合は、1人で抱え込まないようにしました。
不安感というのは、仕事上のものでもその他の場合でも、影のようなものだと最初に書きました。恐怖という強烈な光源から遠ざかることができれば、それだけ影は小さくなります。それでも、影は私たち自身の一部であり、なくすことはできません。私たちは、自分自身とともに生きていくすべを学ぶ必要があります。生産性を高く保ち、周囲がどう思うかを気にしすぎることなく、幸せに生きていけるように。
I Suffer From Panic Attacks, But Won't Let Them Destroy My Life or Work | Fast Company
Meredith Fineman(原文/訳:江藤千夏/ガリレオ)
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