最近自分がいくつ仕事を掛け持ちしてるのかわからなくなります。執筆活動(一応報酬あり)、NPOの理事長、去年の夏に刊行したばかりの雑誌の仕事...どの仕事に対しても同じ熱意で向きあっていますが、確実に給与をもらうよりもただ働きの方が多いと言えます。
「ただで働かされるなんてダメだよ!」善意ある友人のこんなアドバイスを聞いても、私は彼の意見に少々納得できませんでした。私は自分が関わっているどのプロジェクトにも情熱を傾けて取り組んでいて(自分が稼がない限りお金は入ってこないという事実はわかっているのですが)、仕事と報酬の割合についてあまり気にしていないのが正直なところです。
自分の中での基本的な取り決めは、生活に必要な支払いがちゃんとできて、おいしいコーヒーと地産の肉や野菜が買えて、ほんの少しの貯えができればそれでいいということ。つまり、自分にとって本当に素晴らしい動機だと感じられる何かのために、余暇を使えたらそれでいいと思っているのです。
数日後にまた同じことを別の人から聞きました。「ただ働きなんてするものじゃない」...でも、本当に?
いや、むしろただ働きすべきじゃない?
みなさんがいかにご自身のキャリアを紡いで来られ、自分の中で決めている約束事があるのかをよく理解できますし、それに敬意を払います。その一方で、無給で何かをすることの良さを挙げてみます。
・その何かが自分にとって一番興味のある分野なのかもしれない
・「あなたらしく生きる」という情緒的な良い結果をもたらす
・ただで請け負うことの多くが、実際は採算が取れるものである
もしも、生活する上で根本的に必要な支払いや食費、貯蓄などが現在の収入で賄われているのであれば、無償で何かをやってみると良いことがあるとお伝えしたいのです。
(免責事項:歩合制で営業活動されている方々の中で、無給で働く人々に大きな憧れを抱くことが多く見受けられますが、そのイメージと私が述べる内容がマッチするかわからないので、あなたの経験から違う意見があったら、お伺いしたいと思います。)
これから述べる可能性の内、1つかそれ以上当てはまるようなら、無給であっても働いてみることをお勧めします。
自分の業界のトップと会う機会を得る
学術的な仕事や非営利団体の仕事などをしていると、このような事がよく起こります。地方での文筆業やボランティア活動をしている中で、飲みに行ったりニュースレターをデザインしたりスタッフイベントなどに出たりしてると、そこで輝かしい功績と名声のある作家や芸術家と同席して、親交を深める機会に恵まれることがあるのです。いきなり隣に立っているトム・ブロコウ(アメリカの著名なニュースキャスター)にお酒を手渡したりもできるのですよ。そう、あのトム・ブロコウに!
彼のようなスーパースターのちょっと下の層にいるような人たちが、実はおそらくキャリア形成の上で一番の助けになるでしょう。 例えば、あなたがお酒を運ぶウェイトレスの仕事、ケータリングビジネス、小さい会社のお客様向けニュースレターの作成などを生業にしているとしたら、彼らは普段の生活では出会えない類の人々との橋渡しをしてくれます。古い言い回しですが、「コネが物を言う」世界というのがあるのです。
私はNPOの代表として(この仕事でよく何日も遅くまでただ働きしてるのですが)、ある小さな作家の会合で、出版過程について話をしたことがありました。結果として、その時招かれていた出版代理人の方に良い印象を与えられ、その後も友人としてとても良いお付き合いをしています。私には担当の代理人がすでにいますが、あの時出会った友人にその後もアドバイスをいただいたり、彼女が勧めてくれる編集者の方々と会わせて貰ったりもしています。無給で行った仕事が、私に大きな飛躍をもたらした友人を与えてくれたのでした。
これまでの経験では学んでこれなかった技能を学べる
助成金の申請や広報の仕事をしている方々に、よく見られるケースです。例えば、PTA活動や地域自治会、教会の奉仕活動をするグループなどで助成金を申請する機会がよくあります。また、小さな活動の立ち上げ当初は広報活動が必須ですが、それをプロに頼んで支払う余裕はありません。そんな時に、「実は私ずっと学びたいと思っていました!」と声に出し、PTAや近所の会合などで発足メンバーに名乗りをあげて、キャリアの初歩をスタートしています。
仰々しい類の専門書に何冊か目を通し、何十時間、何百時間のただ働きを経験したら、助成金の申請は見事提出に至り、審査に通ります。目標は達成され、あなたが関わったプロジェクトが度重なる成功を収めれば、給与が発生する仕事にスムーズに移行していけるのです。あなたが手助けした際に関わった人々は、喜んで推薦状を書いてくれるでしょう。
他では使ったことがないような肩書を得る
私は雑誌を発行していますが、いつも猫の手も借りたいほどです。あるボランティアの方がこんなことを言いました。「編集作業の経験ありと、いつか自分の職務経歴書に書きたいのです」。彼女のこれまでの経歴は分野が違うものでした。ただ、他にもボランティアの方々がたくさんいてくれた頃でしたので、細かいことは気にせず、彼女がやってみたい作業とその経験を積めるように編集者の肩書を喜んで与えました。それは私たちにとっても足りていない役割を埋めてくれることになったため、多いに助ったのです。
さらに無給で働いていたとしても、自分のやりたいことを始めれば、雇われの身ではまわってこないような職位を使うことができます。例えば、小さなNPO法人をあなたが立ち上げたとしましょう。するといきなり事務局長です! どうですか? 次に職探しをする際、雇い主側が「○年の職務経験と、○年のマネージメント経験をお持ちの方」と雇用条件を提示していたら、あなたは全ての項目を満たすことになるでしょう。
無給の仕事が、その後のポジションを得る大きなきっかけになる
ある役員が、役員会でこんな申し入れをしました。「私は6カ月間常任理事として無給で働きます。その間、自分の給与分の資金は必ず集めてみせます」。その6カ月後、ボランティアの彼は必要な金額を助成金や寄付金によって集めました。結果的に、それは彼がいなければ集められなかった資金だったので、自分自身の良い売り込みとなったといえます。
こうしたやり方をする場合は、書面で契約書を作成しておいた方が良いでしょう。また弁護士に依頼して正式な文面を作成しておくのも良いかもしれません。例えば「もし某さんが何年何月何日までに、X円の助成金を得て、X円の寄付金を集めることができたら、給与Y円が何年何月何日付けで発生します」といった形です。
あなたがやっていることを心から好きでいましょう
タダで働く余裕があるとはいえ、住む家の無い若者たちがスタッフとなって運営しているような地域社会への奉仕活動をする小さなNPOで、先も見えず、その分野でキャリアを積むには自分はそれほど若くもなく、やってる仕事といえば皿洗いばかり...でも、その仕事で出会える人々との会話はとても楽しくて、世の中に少しでも貢献できている自分を感じられる。そんな風に感じるなら、ぜひやってみましょう!
Sarah Gilbert(原文/ 訳:椎野陽菜)
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