いまさら説明するまでもなく、ナガオカケンメイ氏といえば日本を代表するデザイナー/デザイン活動家。デザインセレクトショップ「D&DEPARTMENT」を運営し、日本の伝統文化の継承・発展を目的としたプロジェクト「NIPPON PROJECT」を推進していることでも知られています。
『二流でいこう〜一流の盲点、三流の弱点〜』(ナガオカケンメイ著、集英社)は、「二流」であることの重要性をキーワードとして、氏が自身のたどってきたプロセス、そこにまつわる考え方、価値観、時代との距離感などをつづった書籍。その内容は、読み進める過程で何度も「そうなんだよな」とうなずいてしまったほど説得力に満ちています。だからすべてを取り上げたいくらいなのですが、それでは読む楽しさがなくなってしまいますので、ここではビジネスのヒントになりそうな部分をいくつか抜き出したいと思います。
なぜ「二流」なのか
僕は、人を伸ばす要素のひとつとして絶対に「コンプレックス」があると思う。他人からするとなんでそんなことに、と感じるような妙な意識やプライドが、オリジナルな発想へのこだわりと、社会でバランスをとることを僕に教えてくれました。
(18ページより)
氏がこのように言葉にできるのは、「僕はコンプレックスを持っている。それは、最終学歴が高卒というものだ」(14ページ)という部分から焦点を外さなかったから。そして本書を読むと、それがすべての活動につながっていることがはっきりとわかります。
一流は、そもそもニーズがないところに、社会的に考えて意義深い商品を投げ込む。(中略)二流は、自分がこれが売れてほしいと思うもの、売りたいものを売る。実際、ウチの店がやっていることはそうだ。あんまり未来的すぎてもダメだし、過去のままでもダメ。その両方を取り込んで、今日の正しさを求める。
(58ページより)
D&DEPARTMENTの「モノの売り方」について触れた箇所からの引用。ここにも、ナガオカ氏の「二流」としての考え方が反映されています。ちなみに「三流は、どこかでヒットしたものを売る」のだとか。
一流と知り合えるかどうかは、いかに「上質な二流」になれるかどうかにかかっている。周りに一流がいないと悩む暇があったら、「上質な二流」になろうと努力すること。そうすれば、いつか自然と一流が寄ってくる。
(85ページより)
そのためにすべきことはいろいろありますが、氏が言えることは「わからなかったら二流に聞け、二流を見ろ」だそうです。たとえば、新入社員なら「先輩に聞いてみればいい」わけです。
現場での立ち居振る舞い
長いメール=情熱がある、と思ってるとしたら大間違い。最近、僕ですら長いメールが届いたら、まず読まない。忙しい人にそういうメールを書くこと自体、わかっていないなと思う。一言で言うとソンしてる。
(90ページ)
これには特に共感できました。必要以上に長いメールを書いてくる人がいますが、伝えたいことを簡潔に伝えることも、ビジネスパーソンの力量であるはずだからです。
僕は、名刺入れを見れば、その人がだいたいどんな人なのか、また、名刺を重要なものと思っているかどうかがわかる。どこから出すか、さらにその出し方も重要。財布からくしゃくしゃの名刺を出すのは当然ながらアウト。できれば、内ポケットから出してほしいし、名刺入れの中を触りながら自分の名刺をなかなか見つけられずに迷ってしまうのもダメ。
こういうことがきちんとできていないとしたら、その人は、最初から人に会う気のない人だ。そして、間違いなく出会いに関して損をしていると思う。
こう話すナガオカ氏は、「名刺を持つというのは、ピストルに弾を入れるのと同じだ」とも言っています。つまり名刺交換には、それほど重要な意味があるということ。
「そばに置いておいて何度も読み返したい」とさえ思わせるのは、本書の至るところに「共感できる部分」があるから。ビジネスパーソンにとっての座右の書としても、生きるうえでの指南書としても、"気負うことなく"役立てることができると思います。
(印南敦史)