新たなパブリッシュメディアが、またひとつ登場です。
電子出版サービス「Paberish(ペイバリッシュ)」は、自分の知識をブログ記事形式の「スクロールブック」としてまとめ、値段をつけて販売できます。読者は気に入ったスクロールブックを購入し、専用のiPhoneアプリで読みます。
Paberishでは、特に以下のような情報を求めているとのこと。
・特定の層に人気のあるブログ記事・講演やイベントで話して評判になった知識や技術
・書籍出版は難しいマニアックな情報
例えば、現在販売中のスクロールブックの著者には、2012年イグノーベル賞受賞者の栗原一貴さん、ライフハッカーにも以前寄稿いただいた「AR3兄弟の長男」こと川田十夢さん、「印刷の余白Lab.」で有名な印刷ディレクターの野口尚子さんなど、多彩な顔ぶれが並びます。
早速、「読む」と「出版する」を体験してみました。■Paberishの特徴
まずは簡単に印税などの特徴をまとめておきます。
■スクロールブックを「読む」
- 出版費用は無料。
- スクロールブックの出版はPCから、購読はiPhoneアプリから行う。
- 販売価格は著者が設定。価格は最低85円~最高8500円までの間で選ぶ(ただし、85円、170円、250円など、Paberish側で設定してある価格帯からの選択となる)。
- 印税は販売価格の40%。振り込みは総額2000円以上になったら可能。販売時期より約2カ月後の振り込みで、楽天銀行の「メルマネサービス」を利用(※別途250円の手数料が引かれる)。
出版されているスクロールブックを読むには、iPhoneアプリ「Paberish」を起動し、レビューや評価、試し読みなどを参考にしながら、欲しいものを選びます。購入するとアプリのアドオンとして処理され、後日iTunes Storeから請求がきます。
購入後は「LIBRARY」に収められ、いつでも好きな時に読めます。さて、耳慣れない「スクロールブック」ですが、これはPaberish独自の名称です。実際に読んでみた感想として、しっくりくる例えは「ブログとほぼ同じ」でしょうか。その点、普段からスマートフォンでウェブサイトを見る人にとっては、横スクロールの電子書籍よりもなじみやすいかもしれません。
試しに、野口尚子さんのスクロールブック『TONE CURVES -- morning and evening --』を購入してみました。「画像の色調補正のカナメとも言えるトーンカーブ。トーンカーブだけを操作して、元画像をいくつかのテーマで色調補正してみました」という参考事例集です。どのように設定したかが詳細に書かれており、応用の利く良いハウツーでした。
■スクロールブックを「出版する」著者となってスクロールブックを出版するのはとても簡単です。作成画面のUIがよくできているので、ぜひ一度試してみてほしいと思います。トップページからFacebookアカウントでログインして、「新しいスクロールブックを書く」から作成画面へ。
タイトル、概要、価格、カテゴリーなどを設定して、いよいよ本文の執筆へ。作成はアイテム単位で行います。「テキスト」、「見出し」、「画像」などのメニューから選び、ひとつずつ作成していきます。メニューの「その他」には「プログラミングコード」もあるので、専門書を作るのにも良さそうです。
作成したアイテムは独立しており、後から順序を並び替えたり、設定を変えたりもできます。
下部の「プレビュー」を押すと、iPhoneで見た時のイメージを確認できます。
スクロールブックができたら、最下部の「Paberish!」ボタンを押して、出版手続きは完了です。Appleの審査を通過次第、自動的にアプリ内ストアに並びます。ただし、初めてスクロールブックを販売する時には「申請」が必要になります。申請をすると、アプリ内ストアの「近日公開」コーナーに並びます。タイトルや概要を見た10人の読者が「読みたい!」ボタン(投票のようなイメージです)を押してくれれば、正式に著者として認められ、Paberishで出版できるようになるのです。
初回だけやや壁がありますが、書いたスクロールブックをFacebookやTwitterで宣伝する機能もありますので、どうにか「読みたい!」を集めましょう。
現在の販売数第1位は、コピーライターの長谷川哲士さんがアノ「TENGA」のコピー721本をまとめたという『長谷川哲士のテンガコピー集』(私も買わずにはいられませんでした)。このようなニッチなものが出てくるのも、個人出版サービスの面白いところでしょう。
Paberishは始まったばかりですが、電子出版サービスとして非常に興味深いといえます。Androidへの対応、リーダビリティ機能の強化など、展開次第で大きなプラットフォームになる可能性があると考えます。今後に期待したいサービスのひとつです。
(長谷川賢人)