パメラ・メイヤー氏は虚偽検出トレーニング企業「Calibrate」の創設者兼CEOで、視覚的な手がかりと心理学の手法を用いて虚偽を検出する訓練を行っています。また、ソーシャルネットワーク企業「Simpatico Networks」の創設者でもあり、『しょっちゅうウソをつかれてしまうあなたへ』の著者でもあります。さらに、ハーバード大学でMBAを、クレアモント大学院で公共政策の修士号を取得した公認不正審査士でもあります。今回は、メイヤー氏が物語の構造で嘘を見抜く方法を解説します。

心理学者や精神科医は、患者たちが自らの体験を物語として語ることで、自分に起きた出来事を理解していく助けになると知っています。実際、人はそれぞれ自分の物語を持っています。そして、人が語る物語に注意深く耳を傾ければ、様々なことが見えてきます。例えば、本当に体験した出来事を語る場合と、作り話を語る場合とでは、物語の語り方に大きな違いが現れます。

人が記憶をもとに体験を語るとき、物語のように、序章・本編・終章の順番で語られると思いがちです。しかし、実際は違います。記憶はそれほど秩序だっていません。イスラエルの元警察官Avinoam Sapir氏は、供述書の嘘を見破る分析技法「科学的内容分析(SCAN)」を開発した虚偽検出のエキスパートです。Sapir氏によると、真実の記憶をもとにした物語は、時系列では語られないそうです。劇的な体験をした物語ほど時間順では語られません。語り手は、強烈な体験をした出来事から真っ先に話そうとします。印象が薄い体験は後から補足されるのです。

もちろん、ドラマチックな出来事が最初に語られない物語はすべて「でっちあげ」というわけではありません。また、真実の物語も時系列で語られないだけで、基本的な物語構造を持っており、プロローグ、メインイベント、エピローグの3つのパートを必ず含んでいます。

プロローグ(序章)

プロローグはメインイベントへ向かうための準備をするパートです。真実の物語では、通常このパートはとても短くなります。あまり詳細には語られず、物語全体の3分の1以下の時間しかかけられないのが普通です。一方、虚偽の物語では、プロローグがやたら長くなり、不必要なほど詳細が語られます。なぜなら、嘘をつこうとする人にとって、プロローグは居心地のよい安全地帯であるからです。これから嘘をつくつもりの語り手は、プロローグの段階ではまだ真実を話していることが多いのです。その出来事が起きた時間や場所などについてはたいていは事実を話します。つまり、まだ嘘をついていないので、安心していられるのであり、この安全地帯にできるだけ長くとどまろうとするのです。

メインイベント

物語が真実である場合、メインイベント部が一番長くなります。最も重要なパートであり、核心となる出来事や行動が語られる場所です。一方、虚偽の物語では、メインイベントこそが嘘をつく場所になります。嘘の物語では、逆にメインイベントは極端に短くなります。あまり詳細には語られません。嘘を見破られるリスクがあるので、できるだけ早くやり過ごしたくなるわけです。

エピローグ(終章)

真実の物語にはエピローグが必ず含まれます。また、本人は気づいていないことが多いのですが、人はエピローグを話すときとても感情的になります。メインイベントを話すときよりも強い感情が現れることもあります。恐怖や驚きに満ちた体験をしたとき、感情を処理するのには時間がかかるものです。エピローグを話すとき、こうした処理しきれないでいる感情が顔を出すのです。

一方、虚偽の物語の90%はエピローグを含みません。メインイベントを語り終えると、そこで話をやめてしまいます。エピローグはメインイベントの体験から自分が受けた影響を語る部分です。もちろん、作り話の場合、そんな影響は受けていないのですから、話せることは何もないのです。嘘をつく人は、必要以上の嘘はつきたくないと考えています。すでにメインイベントで嘘をついたのですから、それ以上は嘘をつきたくはないのです。

つまり、真実の物語の特徴とは、時系列順に語られず、一見無関係に見えるエピソードが含まれたりすることです。一方、虚偽の物語は、論理的で一貫性がある反面、生々しい具体性に欠けるのです。

Pamela Meyer(原文/訳:伊藤貴之)

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