今回紹介するのは、『売れないモノの9割は売れるモノに変えられる』(佐藤昌弘著、アスコム)。なんとも強気なタイトルですが、「大手都市ガス会社勤務を経て、住宅リフォーム会社を創業。3年で年商3億まで成長させ、現在は一部上場企業の経営陣、官公庁、MBAスクールなど多岐にわたるコンサルティングを行なっている」という著者のプロフィールを確認すれば、これが経験に基づいた持論であることが想像できると思います。

内容もユニークでおもしろいのですが、なかでもセールスマンにとってのヒントになりそうだなと感じたのは、第3章「お客様を買う気にさせる『販売』の極意」で紹介されているメソッドです。1.ひとまずは「警戒されて当然だ」と口にすることが大切(145ページより)

家のチャイムが鳴り、ドアを開けたとき知らない男が立っていたら誰でも警戒するもの。だからこそ、「はじめまして。警戒されても当たり前ですよね。すみません」と伝えて無言になる。すると相手が「何ですか?」と聞いてくるので、「私はこういうものなのですが...やはり身構えますよねぇ」と残念そうにしていると、「何なの?」となるので話を進めていくというやり方がいいのだとか。まどろっこしすぎる気もするのですが、「『私は、怪しいものではありません』と言ってしまうのは逆効果」という点には納得させられます。

2.ドリルを欲しい客にドリルを売っていいとは限らない(146ページより)

客が皆、自分が欲しいものをわかっているとは限らないといいます。だからこそ売る側は、相手の話を掘り下げていく必要があるというのが著者の言い分。相手の言うとおりにモノを売るだけなら誰にでもできるのだから、相手の立場に立ち、本当に必要なモノを提供しなければならない。「ドリルを買いにきたお客様の話をよく聞いてみたら、欲しがっていたのは(ドリルで開けた)穴の空いたベニヤ板だった」ということもありうるというわけです。

3.宝石を売るのなら、お客様が最近行った海外旅行の話から聞こう(155ページより)

人は過去のパターンを繰り返す傾向があるもの。たとえば旅行先を決める際、どこへ行こうか迷った末、「いろいろ調べてから、面倒なのでポンと決めてしまった」という人は、宝石を買うときも、買う店を決めたらポンと買ってくれる傾向が強いそうです。相手が過去に買った類似商品を探り、「その商品を買うとき、どんなプロセスで最終的にどうやって決めたか」を聞けば、行動パターンがわかるということですね。

4.通販番組に出演する専門家が白衣を着たがるのには理由がある(161ページより)

白衣を着ることで、視聴者は無意識のうちに「権威」「専門家」「論理的」というイメージを出演者に抱き、その商品や会社を信用してしまいやすくなる。だから、通販番組に出てくる専門家は白衣を着たがる。これは非常にわかりやすい話ですね。印象のよいタレントをCMに起用することも、同じことが言えるでしょう。

5.レストランで売上を伸ばしたければ、注文はメインの料理だけを聞こう(182ページ)

レストランで注文を取る際、「一緒にデザートはいかがですか?」「お飲みものはいかがですか?」とプッシュすると逆効果。しかし、メインの料理を食べている最中にさりげなく「この料理に合うお茶があります」とすすめるなど、アプローチを変えてみれば注文の確率は高まるのだといいます。最初に小さく決済する方が心理的なストレスが少なくてすむため、効果的だそうです。

6.1000円のハチミツの値上げでは、1200円よりも1500円に(186ページより)

品質のよさに自信があるなら、安売りは禁物。価格には「値ごろ感」があるので、「買うのにちょうどいい価格帯」を意識すべき。その際、「あまり高くすると売れないから、2割アップにしよう」という考え方だとまず失敗するのだとか。人がその差を認知できる倍率は1.3、1.5、1.7だといわれているので、3割上げた方がうまくいくそうです。

極端なくらいユニークで、なかなかおもしろいとは思いませんか。他にも集客のノウハウや様々な戦略が紹介されています。

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(印南敦史)