成果を求められる仕事にストレスはつきものですが、極度に疲れてくると集中できなくなったり、自分の身体の不調に気づかないふりをしたりして、気づくと燃え尽き症候群になっていることがあります。そして、実はこれを黙殺してしまうケースは多いです。そこで今回は、自分が抱えている問題に気づき、修正する方法を紹介します。
※ 訳者注 日本では大きな仕事が終わったあとに目的を失ってしまう状態を「燃え尽き症候群」と表現することが多いですが、英語での「バーンアウト(burnout)」は「大きなストレスを持続的に受けることによる衰弱状態」を指します。したがって、この記事は英語での「バーンアウト」について書かれています。
日本語の「燃え尽き症候群」も英語の「バーンアウト」も、ハードな一日や一週間を乗り切ったあとに軽い意味で使われることがありますが、実際の「バーンアウト」はもっと深刻なものです。
筆者は、大学卒業後にすぐ就いた職で深刻なバーンアウトを経験したとか。ストレスの大きい仕事を長時間していて、自分でも頭の片隅では何かがおかしいとわかっていたのに、自分の身に起こっていることになかなか気づかなかったそうです。
気づいたきっかけは、たまたま両親が自分のアパートにやってきて、散らかった部屋を見られたこと。筆者はきれい好きな人で、ちょっとでも片付いていないと気になる人なので、彼の部屋が雑然とした状態になるというのは、よっぽどのことだったのです。その仕事を辞めたあと、彼はバーンアウトについて知ることになり、そして自分がその典型的な状態であったことに気づき、どうやってその状態を変えなければいけなかったかがわかったとのこと。バーンアウトは深刻ですが、抜け出せないわけではありません。まず症状を認識して原因を探り、そこから行動を起こしましょう。短期でも長期でも、これらのステップを踏むことが解決につながります。
■バーンアウトを認識し、原因を突き止める方法バーンアウトは極度の疲れとは異なり、複雑なものです。実際にバーンアウトしてしまうと、必要最低限のことも満足にできなくなります。バケーションでリフレッシュすることもなくなるのです。バーンアウトの原因である仕事に興味が持てなくなるだけでなく、その他すべてのことに対してのやる気もなくなってしまいます。
楽しそうなことが楽しめなくなり、些細なことが気になり、原因が分からずいつも心が晴れない...。日常的にこのような心境になり「もう自分はこういう人間で、この状況から抜け出すことはできないのだ...」と思うようになります。もちろん、バーンアウトの症状は人それぞれで、これらの症状がすべての人に共通するわけではありませんが、よく見られる症状を挙げると次のようになります。
ソース:Tech Republic、Wikipedia、Psychology Today.
- 常に後ろ向きな気分で、何をしても好転しないような気分。
- 集中できない。
- 仕事や日常のタスクに関して無関心。
- もやもやした気分。
- 人に会いたくなく、一人でいたい。
- 運動や食事、睡眠など、健康的な生活を送るのが難しくなる。
- 何をやっても十分ではない気がする。
- 自分のニーズを無視し、人の世話ばかりしている。
- 今まで信じてきた価値観や理念に意味を感じられなくなる。
- 気が短くなる。
- 常に疲労感がある。
- 自分はダメな人間だと思う。
- 大切な人や物への関心がなくなる。
- 飽きっぽくなる。
- 心的な痛み、頭痛、長引く風邪など、原因がはっきりしない症状がある。
- 上記の症状があることを信じたくない。
これらの症状は自分では気づきにくいこともあるので、信頼できる友人や家族に頼んで気にかけてもらうことをお勧めします。外から見たあなたの状態についてだけでなく、なぜあなたがバーンアウトしているように見えるのか、という理由も聞かせてくれることでしょう。自分ではバーンアウトしている認識がないとき、外からの意見は貴重です。
友人たちは、最近あなたが働き過ぎで全然会えない...と言ってくるかもしれません。本音を言ってくれる友人だったら、最近のあなたは上の空で一緒にても楽しくなくなった、と言うかもしれません。現実を知るのは怖いかもしれませんが、自分が本調子でないこと、そしてその理由は何かを受け入れる心の準備をしておいてください。
自分がバーンアウトしていることを自覚したら、次はその原因を探る必要があります。これはそんなに難しい作業ではありません。なぜなら原因は、あなたが一番不満に思っていることに、最も長い時間を費やしているからです。
筆者がバーンアウトしていたときは、当時の仕事が原因だったので、それ以外のことに全く集中できなくなっていました。誰かがアダムに話しかけても、仕事上での問題が頭に浮かび、どうやって解決させようか心配したりしていたそうです。ようやく仕事を辞める決意ができたのは、友人が筆者に大事な話をし、それに対する意見を求められて「僕は今の仕事が嫌いだ!」と返答してしまったとき。そして、次の月曜日には辞表を出したとか。
必ずしも仕事がバーンアウトの原因とは限りませんが、原因の見つけ方は大体同じです。自分の頭の中に常にあることが何かを探れば、自然とバーンアウトの原因は見つかります。
■バーンアウトによるダメージを修復する方法バーンアウトしていることを自覚し、それを受け入れたら、その次にすることは「変わる」ことです。バーンアウトの症状が出てくるまでにはしばらくかかるので、修復にも時間を要します。つまり、思い切った変革を継続して行う必要があるのです。幸いなことに、変革をすると自分の気持ちが軽くなるのにすぐ気がつきます。変革は、自分らしさを取り戻すのに必要な触媒の働きをするのです。変革はゆっくりでかまいません。一年以上かかることもありますが、この方法で徐々にバーンアウトによるダメージを修復し、元通りにすることができます。
■バーンアウトの原因を断ち切る変革の前にすることは、バーンアウトと関わっているのが何かを探ることです。あなたのバーンアウトの原因が何であれ、断ち切る必要があります。原因が仕事にあるのなら、具体的にどんな問題なのかを探り、できるだけ変えるようにしましょう。変えられそうにない問題であれば、もしかしたら辞め時なのかもしれません。昨今の高い失業率を考えると、辞めるというのは恐ろしい決断です。この決断を実行に移すためには、数ヶ月は無職でも暮らしていける貯金を用意したり、次の仕事を決めておきましょう。
次の仕事を決めるときには、「自分に合ったスケジュール」と「自分がコントロールできること」の二点を重視するといいかもしれません。自分に合ったスケジュールが大切な理由は、働きすぎるのはよくないからです。一般的に、バーンアウトは長時間労働のため、自分の時間がなくなることで起こります。コントロールが大事なのは、自分の生活をコントロールできなかったことによってバーンアウトが起こったからです。
責任を持って大きなタスクを任されるような仕事に変われば、しばらくすると、軌道に乗ってきたことを感じるかもしれません。今まで自分には向いていないと考えていた職種にチャレンジするのも悪くありません。案外合っていることに気づくこともあります。また、自分には簡単すぎると感じる仕事にも、一つ二つ応募してみることをお勧めします。なぜなら、そういう仕事に就けば時間がフレキシブルになり、コントロールしやすいからです。次の仕事を始めるまでに、一ヶ月かそれ以上空いても経済的に困らないのなら、ぜひ休みを取ってください。バケーションが問題を解決してくれるわけではありませんが、次のステップに進むためのエネルギーを補給することはできます。
しかし、バーンアウトの原因の中には、断ち切るのが不可能なものもあります。そういう場合は、躊躇せずに周囲に助けを求めください。友人や家族にサポートを求めれば、時間はかかっても問題解決の糸口が見つかるかもしれません。
■いつもと違うことをしてみるおそらく、あなたは型通りの毎日を送っていて、それがバーンアウトから抜け出せない原因の一つになっているのではないでしょうか。なぜなら、バーンアウトしているときは決まったこと以外のことをする気力が起きないからです。しかし、そこでひと頑張りしていつもと違うことをしてみれば、大きな変化が期待できます。
一日中座って仕事をしている人ならば、公園を散歩してみましょう。常にデジタルなものとつながっている人は、トランプやボードゲームなど、アナログなものを楽しんでみましょう。いつも早起きしている人ならば、ちょっと朝寝をしてみましょう。逆に、毎朝ゆっくり起きている人は、試しに早起きしてみてください。いつもと違うことをしてみれば、きっとリフレッシュできます。
■健康的になる言わずもがな、健康は大事ですが、バーンアウトしていると健康を維持することが難しくなっていきます。バーンアウト状態になると自分のニーズを軽視する傾向に陥りがちなので、そこで不健康な習慣が身に付いてしまうと、改善するのはかなり困難です。
エクササイズしたり、身体にいい物を食べようという気が全く起きないときにできることは、本当にわずかしかありません。ジムに行って30分エクササイズするのが嫌だというのは簡単ですが、家で5~15分でできる簡単なエクササイズなら、拒否したい気持ちもそれほど起きないかもしれません。簡単にできそうなものを一つ二つ選んで、一日の中のちょっとした時間にやってみてください。短時間でも毎日エクササイズを行えば、体調は少しずつ良くなっていきます。また、エクササイズとは別に、意識して身体を動かすようにしてください。長時間同じ姿勢でいるのは身体に良くないので、こまめに身体を動かすことで体調は変わっていきます。
健康的な食事を続けるには、強い意思の力が必要です。バーンアウトしているときの楽しみは、時々身体に悪い食べ物を食べることだったりするので、それを我慢するのは容易ではありません。これもエクササイズと同じで、少しずつゆっくりと食生活を変えていきましょう。
まず、定期的に食べたいもののすべてをリストアップし、その中のヘルシーな食べ物トップ5に注目します。それらを特に食べるように心がけつつ、全体的に食べる量をコントロールし、食べすぎないようにします。この方法ではドラマチックな変化は望めませんが、普段食べているものに注目することで、食生活を改善することが可能です。それほど負担でないのならば、自炊することをお勧めします。自分で作ることで、身体に入るものの量をコントロールしやすくなるからです。
最後に、睡眠の質を向上させましょう。睡眠不足だった人はもっと眠るようにしてください。バーンアウトの主な症状は慢性的な疲労なので、良質な睡眠は症状の改善に役立ちます。アプリを使って自分の睡眠をモニターしてみると、問題が見えてくることもありますよ。
■気長に変化を待つすでに述べたように、バーンアウトから抜け出すには時間がかかります。気分はすぐに良くなるかもしれませんが、根本的な問題を解決し、元の自分に戻るまでの道のりは長いものです。
気分が上向きになって体力や気力が戻り、仕事でもプライベートでもハッピーになってきたら、短期的、長期的なゴールを設定しましょう。そうすれば、バーンアウトからの回復がプロセスであることを認識することが可能です。小さな目標を一つ一つクリアしていく自分を認識すれば、一見何も変わっていないようでも、自分が前に進んでいることに気づきます。一歩ずつ進んで行く努力をすれば、やがてバーンアウトから抜け出すことができるのです。
Images by Leremy(Shutterstock) and Roman Sigaev(Shutterstock).Adam Dachis(原文/訳:山内純子)