ビタミンは身体にいい影響をもたらしていそうですが、自分ではあまり気づかないもの。毎日の食事やサプリに努力やお金を費やして摂っているビタミンに、果たしてその投資の価値があるのか、はっきりとはわかりません。そこで米lifehackerでは、専門家に「ビタミンは本当に効果があるのか?」について、質問を投げかけてみました。
Photo by Lisa Brewster.今回お尋ねした専門家は、ヘルスコーチで栄養士のKrista Lennox氏、栄養学者のAndy Bellatti氏、サウスカロライナ大学のBrian Parr博士です。
■食事に気をつけていてもマルチビタミン剤は飲んだ方がいいの?
私たちは、必要な栄養を一錠のピルでまかなえるような未来にはまだたどり着いていないので、普段の食事から摂取し損なっている栄養があるかもしれません。自分の食事から「足りないものは何か?」を知ることは、マルチビタミン剤が必要かどうか判断するのに役立ちます。Krista Lennox氏によると、
50歳以下の健康なアメリカ人のほとんどは、普段の食事から必要な栄養分を摂取できています。果物や野菜など、自然な状態でカラフルな食品を食べることで健康を維持し、病気にかかりにくくすることが可能です。しかし、ほとんどの人が推奨されている量の栄養分を摂取できていないのも事実。果物、野菜、低脂肪の乳製品、全粒穀物、栄養強化食品を摂ることで、普段の食事のクオリティが上がり、食事だけで推奨される栄養量が摂れるようになります。
Parr博士も彼女の意見に同意しています。
食事に気をつけているのなら、マルチビタミンはおそらく必要ないでしょう。多様なフルーツ、野菜、全粒粉穀物、低脂肪乳製品を食べていれば、十分なレベルのビタミンやミネラルを摂っていることになります。足りない部分を補うためビタミンやミネラルを摂るときには、一日に必要な量の100%をサプリに頼る必要はありません。子供用のビタミン剤でも十分なくらいです。マルチビタミン剤によって、健康状態が劇的に変わることもないですが、逆に、飲んで問題が起きるということもありません。
Andy Bellati氏も基本的には同意見ですが、具体的なアプローチも示しています。
食品は加工することで栄養分がいくらか失われるので、人によっては適切な量の栄養を摂取できていないこともあります。約3/4のアメリカ人の成人は、血圧を安定させるのに重要なミネラルを十分に摂っていないとされています。マグネシウムが多く含まれている食品は、ほうれん草、ジャガイモ、ナッツ類、オート麦などです。ビタミンD不足も深刻な問題となっています。最近の研究では、一日に必要とされている600IUでは少ないと言われており、この600IUという数字は、丈夫な骨を作るために必要なビタミンDの量から設定されていましたが、より新しい研究では、ビタミンDは他の働きにも必要だとわかってきました。私は、2,000~4,000IU摂取した方がいいと勧めています。この量は多すぎるように感じるかもしれませんが、私たちの身体は日光を浴びると10,000IUのビタミンDを生成し、その後生成が中断されます。
もし、特定の食品を様々な理由で避けているなら、そのために抜けてしまう栄養素をサプリメントで補うのはいい方法かもしれません。Andy Bellati氏は次のように続けています。
ベジタリアンの人や動物性脂肪を摂らない人には、ビタミンB12のサプリメントを飲むことをお勧めします。乳酸菌も積極的に摂った方がいいサプリメントです。おなかの調子がいいと、身体全体の調子もよくなります。実は、多くの人が無理なダイエットや環境有害物質、ストレスによって、腸の中の常在菌にダメージを与えているのです。乳酸菌サプリメントは、冷蔵保存されているものを買い、家に持って帰ったらすぐ冷蔵庫に入れておいてください。Photo by Matt Reinbold. ■自分にサプリが必要かどうかどうやって知るの?魚や海草類を普段食べない人は、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)をサプリメントで摂った方がいいでしょう。この2つは、健康な心臓の働きを促します。

この記事は、自分にサプリメントが必要かどうかわかっていなければ、意味のない情報になってしまいます。自分の健康状態を知るには、食事の内容を見直してみたり、血液検査をしてみたり、というのがまず第一歩です。
Parr博士は、サプリメントで栄養不足を補うことはできても、それ以上の効果は期待できないので、サプリメントの必要性を自分で判断するのは難しいと言っています。つまり、サプリメントはたくさん摂ったからいいというものではないのです。
典型的なアメリカ人の食事では、おそらく必要なビタミンやミネラルを摂取することはできないでしょう。不足して健康に害を及ぼすほどではありませんが、やはり足りないのはよくないので、そこをサプリメントで補うのがいいとされています。
Andy Belatti氏は、ゴールは足りない部分をサプリメントで補うのではなく、サプリがいらない食事を心がけることだと言っています。
理論的には、食事で足りない部分をサプリメントで補うのはいいことです。しかし、栄養が偏っている患者さんへは、サプリに走るのではなく、食事だけで必要な栄養を摂れるように指導しています。サプリメントにできることは限られています。身体によくない脂肪や塩分、砂糖を摂りすぎている食事をしていても、サプリを飲んでいるから大丈夫ということは絶対にありません。Photo by Erich Ferdinand. ■ビタミン剤を飲みすぎるとよくないの?
身体にいいものでも、摂りすぎるとよくないケースがビタミンにはあります。どれだけ摂取しているか、注意が必要です。気をつけないといけないのは、肝臓や体内の脂肪物質に蓄積される脂溶性のビタミンで、これは毎日摂らなくてもいいとされています。水溶性のビタミンは、摂りすぎてもすぐに尿と一緒に排出されますが、脂溶性のビタミンは限界まで身体の中に蓄積されてしまうのです。
Parr博士は、摂取量を適量に抑える方法について、こう説明しています。
ビタミンの毒性が起きるとすれば、それは脂溶性のビタミン(A、D、E、K)からです。ビタミン剤を飲んでいる場合は成分表示を見て、それぞれのビタミンやミネラルの量が一日に必要な量の100%以下であれば安全です。
Krista Lennox氏は、こう付け加えています。
ビタミンに関しては、多く摂る方がいいとは言えません。最近の調査によると、摂取過多になりがちな栄養として、鉄分、亜鉛、ビタミンA、ナイアシンが挙げられていました。■ビタミン剤によって運動能力は上がるの?

運動するときや運動に備える身体を作るのには、特定のビタミンやミネラルを摂った方がいいと聞きますが、これは本当なのでしょうか。Parr博士はそんなことはないと言っています。
理論的には、ビタミンやミネラルが運動効果や健康状態を向上させると言えますが、研究からはこれを裏付けるはっきりした結果は得られていません。ここにその例を3つ挙げます。Photo by lululemon athletica. ■サプリに含まれるビタミンと食べ物に含まれるビタミンは違うの?
- 鉄分は血液中や筋肉の中に酸素を運ぶのに重要な役割を果たしています。したがって、鉄分不足に陥ると筋肉へ運ばれる酸素量が減るので、エネルギーが減り、運動効果が下がります。しかし、すでに鉄分を十分持っている状態で鉄剤を摂っても、それ以上運動効果が上がるわけではありません。それどころか、鉄分の摂りすぎは肝臓にダメージを与える可能性があります。
- いくつかの研究で、あるビタミン剤には心臓病や癌などの慢性疾患を防ぐ効果がないと発表されています。特に、ビタミンA、C、Eやミネラルをたくさん摂っても、病気にかかるリスクは下がらず、逆に死亡率は上がっているようです。
- 栄養不足は免疫力を低下させるので、バランスの取れた食事をするのは大切なことです。とはいえ、ビタミン、ミネラルやその他のサプリメントを大量に飲んで免疫力をアップさせるのがいいとは証明されていません。実際、サプリメントの製造・販売元に効果があることを証明する義務はないので、市場に出回っているサプリのほとんどは効果を確認するテストを経ていません。テストされたサプリで見てみても、表示されているような効果は確認できませんでした(※注 すべてアメリカの事例)。
ということは、ビタミン剤を多く摂っても健康にはならないのでしょうか? 答えは、栄養的にバランスの取れた食事を摂ることと、栄養をサプリに頼ること、この2つの違いにあります。おそらく、ビタミンだけでは十分な食事にはなりません。ビタミン剤の合計よりも、ちゃんとごはんとして口にする食事の方が大切なのです。
ここまでで、ビタミンやミネラルのサプリメントは、食事で摂取できなかった部分を補うのに最も適しているとわかりましたが、サプリを健康的な食事と言えるのでしょうか? サプリと食事とでは、含まれるビタミンにどのような違いがあるのでしょうか? Kristi Lennox氏はこう説明しています。
サプリメントは食事のかわりにはなりません。なぜなら、サプリでは自然食品のようにすべての栄養を摂取することができないからです。自然食品は複雑にできているので、一つの食材でも健康であるために必要な複数の栄養を含んでいます。食物繊維は心臓病のリスクを下げたり、 2型糖尿病、体重管理に有効であることが証明されています。また、自然食品に含まれている物質は、身体を健康に保つように働くとされているのです。
Andy Bellati氏も賛成しています。
答えはイエス。食品とサプリに含まれるビタミンは別物です。たとえば、ビタミンEは、単独では食品に含まれている時のように効果的には働きません。ビタミンEを多く含む食品(ナッツ類)には、ビタミンEと結合することによって効果的にビタミンEを働かせることのできる化合物が含まれています。
まとめとしては、ビタミンは全体的に身体にいい影響を与えるものの、いい食事と組み合わせることがベストなサプリの摂り方ということになります。
買い物中にビタミン剤が安くなっているのを発見したら、ビタミン剤の効果はどれでも一緒なので、とりあえず買っておくといいかもしれません。ビタミン剤の摂りすぎにも意味がないことがわかったので、マルチビタミンを買うときには、一日に必要な摂取量を大幅に超えないように注意しましょう。自分の食事の栄養バランスをよくわかっている人は、足りない栄養素だけを補うのが良さそうですね。
Thorin Klosowski(原文/訳:山内純子)
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