生きていれば、機嫌が悪くなるのは日常茶飯事。しかし、なぜ人は不機嫌になるのでしょうか? そして機嫌が悪くなったとき、どう対処すると良いのでしょうか? そこでこちらでは、機嫌が悪くなる科学的なメカニズムを解明するとともに、その対処法についても見ていきたいと思います。

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 機嫌が悪くなる原因は、昼食が遅かった、お店の対応が悪かった、通勤で渋滞にハマったなど様々。機嫌が悪くなるきっかけは、人によって異なりますし、ストレスレベルにもよります。では、機嫌が悪くなったとき、カラダや脳の中ではどのようなことが起こっているのでしょう?

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一部の心理学者は「機嫌が悪くなるのは、自我の枯渇によるものである」と考えています。研究者Roy Baumeister氏の説(英文記事参照)によると、衝動を抑えるために意思力を使うと、認知資源が消耗するのだそう。たとえば、ダイエットしているときの食事や、ひどい客対応に怒鳴るなど、何かを控えると脳が消耗してイライラするわけです。

ストレスの発端ととらえてもいいでしょう。機嫌が悪くなると、それが怒りやイライラ、皮肉として現れます。これらはすべて、血圧が上昇する原因になり、ストレスホルモンのコルチゾールの値の上昇につながることもあります。これによって、さらにイライラが募るわけです。また、急性ストレス反応の影響として現れることも...。機嫌が悪くなると血圧が上昇し、消化が止まり、心拍数が上がります。これが、疲れを感じたり、怒りっぽくなったりすることにつながるのです。

「機嫌が悪いと、世の中の見方が変わる」という研究結果もあります。専門誌『Journal of Neuroscience』で発表された2009年の研究によると、機嫌が悪いと極端に視野が狭くなる一方、機嫌が良いと周りがより広く見えるそうです。

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では、機嫌が悪くなったとき、どう対処すればよいのでしょうか? 長期にわたる抑うつではなく、一時的なものという前提で、以下の対処法を挙げてみました。ほとんどのケースに活用できるので、是非心に留めておいてください。

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食べる

理論上、やりたいことをやれば気分はよくなりますが、中でも食べることには、さまざまな効果があります。まず、一日に消費した栄養を補給できる点。食事を十分に摂っておらず、血糖値が下がっているために機嫌が悪くなっているのなら、少し食べるだけで気分は良くなるはずです。

さらに、脂肪酸は感情にポジティブな効果をもたらします。脂っこいものが好きではないなら、エンドルフィンを分泌することで知られる、辛いものを食べると効果的です。基本的に、食べると機嫌はなおりやすいもの。ただし、食べすぎには気をつけてくださいね。


運動する

運動はエンドルフィンを分泌させ、機嫌の悪さを自然と良くしてくれます。中程度以上の運動を行ない、呼吸が少し苦しくなってくると、カラダがエンドルフィンを放出し、幸福感が湧いてきます。エンドルフィンの分泌は、長い間持続するものではありませんが、ちょっとしたイヤなことなら忘れさせてくれるはずです。


音楽を聴く

音楽は、脳にドーパミンを分泌させるきっかけになります。これは楽しい気分と関連するもので、3分のポップソングを聴いている間に、しかめっ面も一変するでしょう。基本的には、曲に乗っていくうちに次の展開を予想するようになり、予想通りになると、ちょっとした喜びを感じるのです


「機嫌の悪さ」を逆手に取る

機嫌が悪くなると、注意深い思考になり、ある特定のタスクに集中しやすくなります。これは先に述べた「極端に視野が狭くなる」という現象ですが、裏を返せば、ひとつのことに集中しやすくなるということでもあるのです。

複雑なプロジェクトに着手したり、全神経を集中しなければならないようなタスクに取り組んでみましょう。また、アイデアやコミュニケーションスタイルがより具体的になるので、説得力が増すかもしれません。自分の機嫌の悪さを逆手に取るというこのアプローチは、楽しい対処法ではないかもしれませんが、いくらか仕事ははかどるかもしれません。


機嫌が悪くなるきっかけも人それぞれなら、自分のご機嫌の取り方も人それぞれ。機嫌が悪くなったときの脳やカラダの反応を知ると、より効果的な対処法が見つかりそうですね。「ご機嫌ナナメかな...」と感じたら、まずはこちらの対処法を試してみてください。

Thorin Klosowski(原文/訳:松岡由希子)