編集委員の横尾茜です。

自分にとっては習慣化してしまって意識していないことが、他人にとっては目からウロコのライフハックだった!? なんて激レアなライフハックを探るインタビュー『突撃! 隣のライフハック』。

今回は、月間100万PVを誇る人気ブログ「Chikirinの日記」のちきりんさんに突撃しました。著作『自分のアタマで考えよう』は、発売1か月で10万部突破!

おちゃらけ社会派ブロガーのちきりんさんは、普段どんな風に「考えて」いるのか? 社会派になったきっかけは? などなど聞いてきました!

インタビューは以下から!

 

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ヨ:著作『自分のアタマで考えよう』を拝見して、失礼ですが本当は男性なのでは? と思っていたのですが...

ち:ブログを読まれている方でも、ずーっと男だと思っている方はいらっしゃいますね。取材を受ける際などにスカートをはいて、お面で写真が出たりしていますが、継続的に「ちきりんが女だったとは驚いた」とは言われます。

ヨ:非常にロジカルで社会派。そんなちきりんさんの源泉は何だったのでしょう? 子供の頃から新聞を3時間かけて読んでいたというインタビュー記事も読みましたが。

ち:一番最初は、6歳の時。7歳から小学生になるので、親に市役所から通知がくるんです。「来年4月から学童年齢なので、○○小学校に行きなさい」という。親がその通知を見せてくれました。「ちきりん、来年から小学校行きなさいって」と。私にとっては、それがものすごい衝撃でした。

なぜ誰か知らない人が、私が今ここにいて、名前がちきりんで、今6歳だということを知っていて、来年から小学校に行きなさいって言ってるんだろう!? と。つまり、社会の仕組みが義務教育への誘導をはかっている。私が初めて社会に触れた瞬間だったんです。

おじいちゃん、おばあちゃんなど、身内が知ってるならわかります。すっごく不思議で、母親に質問しまくりました。

「誰なの? なんで知ってんの?」

「あんたが生まれたときに、市役所に届けたからよ」

「なんで?」

「法律で決まっているからよ」

「次はいつ届けるの?」

「死んだときよ」

「死んだら誰が届けてくれるの?」

のようなやり取りを通して、今まで全然知らなかったけど、それによってみんな動かされてるんじゃないか? なんて猜疑心のようなものを持つようになったり。

子供の頃の「なぜなぜ?どうして?」はみんな持っている気持ちで、私にとってはその対象が社会の仕組みだったんだと思います。そんな流れもあり、新聞に興味を持つようになり、1日3時間新聞を読むようになりました。

ヨ:それにしても、新聞を毎日3時間読むのはちょっと変わった子供ですよね?

ち:今と違って、インターネットなどもないので、メディアというと新聞とテレビ、雑誌。

雑誌はターゲット年齢にわかれているので、子供ながらに子供向けのものはつまらないと思っていました。なので、大人の読み物で気軽に触れられるものが新聞だったんです。親がとっているからタダで読めるし。本はお金がかかるじゃないですか。小学校の図書館も小学生向けのものしかないし。

ヨ:親に言われて...などの強制的な感じではなかったんですね。子供の頃に学校の宿題で「新聞を読む」なんてのがあったんですが、私はテレビ欄にしか目がいかなかった子供なので、自主的に読むってすごいなーと思います。

ち:今の小学生、中学生なら、1日にインターネットを2~3時間使っている子もいると思いますし、それと同じような感覚です。私はたまたま興味の方向が社会だっただけで、男の子はカエルの解剖に夢中になっていたり、おたまじゃくしをずーっと繁殖させていたり。

新聞は親御さんが安心するのかもしれませんが、たまたま私が新聞に熱中していただけで、それはゲームでもいいと思うんです。走るでもいいし、食べるでもいいだろうし。好きなことに熱中することが大事だと思います。食べるを極めて料理評論家になるかもしれないし。


ヨ:自分のあたまで考える」にあたって、普段意識していることはありますか?

ち:インプットとアウトプットがある中で、できるだけ自分から遠いものをインプットしようと思っています。自分と似た人ではなくて、できるだけ遠い人の話を聞くように。

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2地点を知ることは、とても大事だと思っています。自分の周りから広げるのでは、世界はなかなか広がらないですよね。自分から遠い地点の人と知り合う。遠い地点の人と知り合うことで、その間についても理解できたりする

ヨ:遠くにいる人と知り合うのって難しくないですか?

ち:私が「Facebook」や「mixi」で日記を書いていたら、きっと広がらなかったと思います。自分の近くの人にしか共有されないので。ちきりんのブログは、ウェブ上でオープンなところにある。自分の意見を友達にだけでなく、オープンな場で言う。それがきっかけで、全く接点がないような方から声をかけていただいたりするようになりました。オープンな場のブログには、クローズドな日記とは全く違う価値があると思います

ヨ:とはいえ、最初のころからアクセスがあったわけではないですよね?

ち:そうですね。でも最近は、Twitterなどのソーシャルな力が強いので、広がりやすい仕組み、見つけてもらいやすい仕組みができてきていると思います。でも、とりあえず発信しないことには見つけてもらえないので、まずは発信ですね

ヨ:ちきりんさんのブログは本当にたくさんの人に読まれていると思いますが、たくさんの人に発信する際に気を付けていることはありますか? 自分の好きなように書けなくなってしまうこともあるのでは?

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ち:全く接点がない人と知り合うきっかけになるということは、逆に私とは全く違う考えやコンセプトを持った人にも読まれるということなので、悪気なく書いたことでも、「こんなとんでもないものを!」という方もいらっしゃいます。なので、色々と気を付けるようにはなりましたが、一方でときどき「振り落とし」を行っています。

Twitter上などで「私はこういう人なのよー!」というのをアピールするため、あえて極端な発言をするんです。極端な発言をすることで、「これは価値観が違う」とか「この人とは合わない」と思った人がフォローをはずしたり、ブログを読まなくなったりします。ちきりんのブログの内容がある程度正しく伝わる、理解できる人にしぼるようなことをしているんです

ヨ:ちきりんさんの著作を読ませていただいて、人に伝えるのがとても上手な方だと思いました。伝える上で気を付けていることはありますか?

ち:「他人の目で読む」というスキルを身につければ、誰にでもできることだと思います。私の場合は、書いたものは改めて音読するようにしています

書いている時は脳から手に行くけれど、音読は目で見て口から出すという違う回路を通るので、違う人が読んだらどう感じるか? を感じられると思います。書いた後に時間をおいて再度読むのもいいと思いますよ。

ヨ:普段から本はよく読むんですか?

ち:実は本はあまり読まないんです。中学、高校、大学まではよく読んでいたんですが、最近はそこまで読んでいません。知りたいことがあったら、それを調べるために読みます。なので、本屋さんで立ち読みで済んでしまうことも多いですし、今であればネットで検索して済ませてしまうことも多いです。

でも、本屋さんは大好きなので、本屋さんには行きます。私、難しい文章は読めないので、パラパラーっとめくって2~3ページ見て、自分が理解できるか? おもしろいか? がわかったら買うようにしてます。だから、amazonで本を買うのは苦手です。

ヨ:意外です。なんだかすごく本を読まれているイメージだったので。

ち:本をよく読んでいるイメージは強いようで、本に関連するお仕事をいただくこともあります。

私、インプットに対するアウトプット効率が非常に良いんです。少ししか読んでないのに、すごく読んだようにアウトプットする世の中の人は、すごく読んで、よく考えて、慎重に少ししかアウトプットしない。でも、これってもったいない。

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なので、読書家イメージがついてるんだと思います(笑)。


ヨ:ちきりんさんは「働かない人生」を満喫されているそうですが、普段どんな風に過ごしてるんですか?

ち:去年の終わりに仕事を辞めてからは、タヒチ、イタリアなど海外に行ったり、国内で温泉に行ったり、あちこち旅行したりしました。東京にいる間は、半分ぐらいダラダラして、半分ぐらい物書きしている感じです。

1日1個までしか予定は入れたくないので、誰かと会ったり、こうして取材を受けたりなど、午後か夕方に予定を1つこなします。あとは家でお料理したり、韓国ドラマを見たりですね。

ヨ:優雅な暮らし! でも、一方で「こんなにダラダラしてていいんだろうか...」とか思っちゃいそうですが。

ち:それは洗脳されてるんですよ。自堕落はよくない! とか。日本人は勤勉でよく働きますが、それは洗脳がうまくいっているから。ほとんどの人間がダラダラしているのが好きなはずなんです。ほっといたら働かなくなっちゃうので、日本はちゃんと洗脳している。

ヨ:「考える」という行為が仕事になっている感覚はありますか?

ち:それはないです。最後のゲラの確認になると、締め切りがあるので仕事っぽいですが、ブログも本の原稿を書くのも特に仕事という意識はないですね

妄想が趣味なので、「3億円当たったらどうしよう」とか「石油王に見初められたらどうしよう」とか妄想してる中で、「あ、ブログにコレ書こう」というのを思いついて、ブログを書いて、そろそろお腹すいたからご飯食べよーみたいな暮らしです。子供の生活ですね(笑)。

ヨ:普段持ち歩いているものを教えてください。

ち:基本的にモバイルしないんです。原稿を書くのも家のパソコンで、Twitterも家からのみです。手帳も使ってるんですけど、重いから家に置いている。必ず持ち歩くのは歯ブラシセットぐらい。

ヨ:携帯で移動中にTwitterやブログを見たりしないんですか?

ち:パケ放題を契約していないんですよ。携帯は持ってますが、もう同じ機種を5年使ってる(笑)。公衆電話代わりです。新幹線のチケットの予約ぐらいであれば携帯経由ですが、パケ放題じゃないからすぐに消しますし。

みんな細切れの時間に携帯を使っていると思うんですが、電車を待つ時間、電車に乗っている時間、私にとってはそこが考える時間なんです。1日出かけて帰ってくると、なんだかんだ移動やら待ち時間やらで1時間ぐらいあると思うんですが、その時間に考えています。家じゃなくて外にいる、圧倒的に視野が広い時間なのに、その時間に携帯の画面にかぶりつきはないなと

ヨ:どんなことを考えてるんですか? 人間観察したりでしょうか?

ち:人間観察は大好きです。あとはお店に入ったら、ここはどんなお店? どんな人が来ているの? テーブルの数、お客さんの数、店員さんの数を数えて、赤字かな? 黒字かな? なんて考えてます。

ヨ:そういう時はメモを取ったりするんですか?

ち:メモも持ち歩かないので、もらった紙の裏とか、喫茶店のナプキンとかに書いています。でも、メモを取ると過信して忘れちゃったり、紙がぐちゃぐちゃになってなくしたり...。まあ思い出せなかったら大事なことじゃないんだ! ぐらいに割りきっちゃってます。勝間さんに怒られそう(笑)。

ヨ:2011年ももうすぐ暮れますが、今年買ってよかったものはありますか? これがあって便利になった! といったものとか。

ち:うーん、今年買ってよかったのは、この折りたたみコップですかね。(笑)。外食ランチをした後に歯磨きをするのに便利なんです。最近はインフルエンザも流行っているので、一日中外出している時なんかは、うがいにも使っています。

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私の場合、ホテル、食事、旅行にお金を使うのは全然もったいなくないんです。経験や体験に払うことには、全く躊躇しない。一方でモノを所有することは、心理的コストがめちゃくちゃ大きいんです。モノを買うと場所も取るし、今は捨てるにしてもお金がかかる。普段はできるだけシンプルなものをセレクトするようにしています

スマホにしても、今流行りのものはマルチパーパス。旅館のご飯と一緒で、必ず好きじゃないものもついてくる。そういうのが好きじゃないんですよ。とかいいながら、結構色々買っちゃってますけどね。シンプルにーとかいいながら、家はモノがあふれています(笑)。


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ということで、いかがでしたでしょうか?

お会いする前は「おちゃらけ社会派」とは書かれているものの、鋭い洞察とはっきりとした意見を持っている方なので、内心ドキドキしていたのですが、すごくやわらかな雰囲気の方でした。

できるだけ自分から遠いものをインプットする」、「細切れの時間に携帯を見るのではなく、視野を広げて考える」などは、ちょっとした行動の変化ですが、大きく世界が広がりそうです。

ちきりんさん、ためになるインタビューをありがとうございました。では、また次回! 誰かのライフハックを探りに行きます!

(横尾茜)