きっとあなたも、日常のコミュニケーションの55%が、言葉ではなくボディーランゲージで行われているという話を聞いたことがあるのではないでしょうか? とはいえ、身体が発するシグナルを読み解くことは簡単ではありません。例え同じジェスチャーでも、文脈に応じで意味が変わります。
ここでは、ボディーランゲージが重要な鍵となるような、よくある3つのシチュエーション、「相手の嘘を見抜くとき」「デートのとき」「求職活動の面接」を例に、相手が自分の気持ちを正直に伝えてくれていない場合でも、身体のシグナルから相手の本音を読み解く方法をご紹介します。
私たちはよく嘘をつきます。初対面の人と会った時など、たいてい最初の10分間で一つは嘘をつくものです。ときには一度に複数の嘘をつくことさえあります。ほんの些細な嘘かもしれませんが、とにかく嘘をついていまうのです。また、衝突を避けるためにわざと嘘をつくこともあります。しかし、我々はやはり真実を知るほうがよいのではないでしょうか?
言葉はうまく嘘をつきますが、身体は嘘が苦手です。ここでは、よくある場面で活用できるボディーランゲージの基礎をご紹介しますので、コミュニケーションをよりよいものにするために、ぜひお役立てください。
■ボディーランゲージの基礎最初に目指すべきゴールは、相手が今快適なのか不快なのかを知ることです。これは、後にコンテキスト(文脈)とボディーシグナルを学習する前の準備段階となるものです。人が快適さのレベルを表現する方法は様々ですが、ここでは一般的なものをいつか見ていくことにします。
- 近づいたり、身を乗り出してくる。
- リラックスしている手足、組まれていない腕や足。
- 長い時間のアイコンタクト。
- 照れて下を向いたり、目をそらす。
- ジーニアススマイル(正真正銘の笑顔)
- 離れたり、体をそらす。
- 腕や足を組む。
- 横を向く。
- 一歩さがったり、出ていこうとする。
- 鼻や目、首の後ろをこすったり掻いたりする。
一つのシグナルには無数の意味があります。例えば、腕を組むことは普通ネガティブな意味を持ち、その人が心を閉ざしているか、フラストレーションを感じているか、または実際に寒いと感じていることを示しています。しかし、単純に食べ過ぎただけという場合もあります。
一つだけでなく、複数のボディーランゲージに注意を向け、性急な判断を下さいないようにしてください。相手をより深く見る必要があるということです。コンテキスト(文脈)も考慮に入れながら、複数のボディーシグナルに注意を払うようにしましょう。 ■嘘を見抜くボディーランゲージを学ぶことの最大の利点は、相手が嘘をついているかどうかを、かなりの精度で判断できることです。あなたの直感も100%正確ではありません。しかし、少し訓練すればかなり正確に嘘を見抜けるようになります。
まずは、どんなタイプの嘘を見抜こうとしているのかを理解しておくことが重要です。このセクションで紹介するテクニックは、相手が不快に感じている時や、真実を恐れているときの嘘を見抜く方法です。逆に、たわいないお世辞や、面倒くさがりから来る小さな嘘や、ちょっとした誇張などを見抜くことには向いていません。それらの小さな嘘を見抜くことはとても困難ですが、小さいからといって過小評価していては真実を知ることはできない、ということもまた覚えておいてください。
ここでご紹介する、よくある一般的なボディーシグナルの読み方を学ぶことで、人と話すときに妥当で健全な観察眼をもって聞くことができるようになります。
『Liespotting』の著者Pamela Meyer氏は、ボディーランゲージを分析する研究に取り組んだ結果、嘘をついている人は居心地が悪いと感じている人と同じような振る舞いをすることを発見したそうです。
人は嘘をついているときに「ジーニアススマイル」(正真正銘の笑顔のこと、別名デュシェンヌ・スマイル・英Wiki)をすることができません。また、ジーニアススマイルは意識して作ることができないとも言われています。
どうして家族写真の笑顔はぎこちなくなってしまうのでしょうか? みんな自分は笑っているように見えるはずだと思うのですが、実際には誰の目にも作り笑いだということがわかります。それは、笑顔というものが目や目の周りのシワに特徴的に表れるからです。
ジーニアススマイルをすれば、あなたの顔にいわゆる「カラスの足跡」が現れます。笑った時に頬の筋肉が上に押し上げられ、目の周りに寄せ集まってきます。これを意識的に行うのは至難の業なのです。本当にハッピーな気持ちにならないと、この表情はなかなかできません。不快な気持ちではまず不可能です。よって、目の周りのシワは相手の笑顔がジーニアススマイルか、作り笑いかを見分けるよい指標になります。
嘘をついている人は、体を動かさずにじっとしていようと上半身を常に緊張させています。そわそわした内面を悟られたくないためです。また、わざとらしく過剰なアイコンタクトをしてきます。人は通常、常にゆったりと動いているものですし、アイコンタクトももっと自然に行うものです。上半身、特に肩の緊張と不自然なアイコンタクトを見つけたら、相手が嘘をついているサインと見ていいでしょう。
また、首や目をこすったり横を向いたりするのも、何か居心地が悪い気持ちでいるというサインです。さらに、嘘をついている人は、快適さを表すボディーランゲージをめったに表現しません。それもよい指標になります。
身体のシグナルに加えて、コンテキストにも注意を払いましょう。嘘をついている人は、真相を隠したいという意識から、過剰に詳しく説明したがる傾向にあります。また、さらなる嘘を組み上げる時間をかせぐため、あなたの質問に答えずに逆に質問してくることもあるでしょう。こうした振る舞いとネガティブなボディーランゲージとの組み合わせを見ることで、相手が嘘をついているかどうかを、より正確に見分けることが可能です。個別の振る舞いを見て性急に判断するのではなく、組み合わせを見て慎重に判断してください。
しかし、ここで気を付けなければいけないのが、人は普通のときでもこれらのぎこちない振る舞いをすることがあるということです。できれば、その人が真実を語っているときの癖や目の動きを覚えておき、嘘をついているときの振る舞いと比較してください。繰り返しますが、ひとつの振る舞いを見て簡単に判断しないでください。必ず複数のシグナルを見つけるようにしてください。
■デートのときに
初めてのデートに行くなら、ボディーランゲージは大変役に立つツールです。もし、あなたがデート中に相手の身体のシグナルにまったく注意を払わなかったとしたら、相手を不快にさせる話題をしゃべり続けてしまうかもしれません。また、あなたは自分を隠したままデートをしたくないと思う一方で、相手にできるだけ良い印象を与えたいと望むはずです。無理にリスキーな話題を持ち出すのは控えましょう。相手があなたに好意を持ってからでも遅くはありません。
無理にカリスマティックに話そうとしたり、相手の返答内容ばかりを気にしてしまうと、相手の振る舞いや身体シグナルに注意を払えなくなります。できるだけボディーランゲージに気を配れる状態でいるようにしましょう。少し訓練を積めば、身体シグナルの見分け方のコツをつかみ、それほど意識しなくても自然とできるようになるでしょう。
ボディーランゲージを読むと言っても、なにも難解なことをする必要はありません。ただ、快適か不快かの指標を見つけるだけでいいのです。つまり、相手の身体シグナルに注意を払い、相手がどれだけガードを固めているかを見ればいいのです。最初は誰もがガードします。腕を組んだり、少し距離をとったり、手のひらをうちに向けていたりします。初めてのデートであればそれが当たり前です。あなたのゴールは、相手のこうしたネガティブなボディーランゲージをもう少しオープンで受容的なものに変えることです。
さらに、あなた自身がポジティブなボディーランゲージをすることで、相手によい影響を与えることもできます。人は多かれ少なかれ相手の振る舞いを模倣するものです。あなた自身が暖かで快適な気持ちでいたなら、相手の振るまいも変わってくるでしょう。つまり、あなた自身が腕を組むのをやめ、できるだけジーニアススマイルでほほえみ、距離を取りすぎないように心がけましょう。また、ときおり手のひらを見せるのも良いです。これらの振る舞いは、すべてあなたが快適であることを示します。あなたがポジティブなボディーランゲージを表現してれば、デートの時間も快適なものとなるでしょう。
気をつけてほしいのが、ネガティブなボディーランゲージばかりに注目して気後れしてしまわないようにすることです。デートの間中、快適さのレベルは常に変動しますし、初めての場所では誰もが多少は神経質になります。ささいなミスは気にしないでください。ピアノの先生がアドバイスするように、リサイタル中は多少間違えてもそのまま弾き続けることが大切です。デート中に自信を失いそうになったら、ネガティブなサインばかりに注目していないか考えてください。そして、ポジティブなボディーランゲージを探すようにしましょう。
もし、相手が一定時間ネガティブなボディーランゲージばかりを続けていたら、話題を変えてみましょう。もちろん、どうもうまくいかずネガティブなボディーランゲージばかりを受け取ってデートが終わってしまうこともあるでしょう。もしそうなったら、またピアノレッスンからのアドバイスです。立ち止まらずに前へ進みましょう。
■面接で効果的に振る舞うために就職の面接もデートと似た所があります。よく知らない人にあなたを好きになってもらいたい場面だからです。しかし、デートではあくまで相手と同じ立場ですが、面接では基本的に相手のほうが立場が上と言えるでしょう。相手よりもあなたのほうが居心地が悪い気持ちになりやすく、ネガティブなボディーランゲージをしてしまいがちです。これはよくありません。面接では、心を閉ざしたような身体表現はなるべく避けたましょう。
あなたを雇うかどうかの決断は第一印象に大きく左右されます。さわやかな笑顔、心地よい握手、心のこもった挨拶などのポジティブなボディーランゲージは、気持良い面接の場づくりに不可欠です。面接官があなたにどんな人物像を期待しているはかわかりませんが、あなたが気持ちのいい、カリスマティックな人物であると思わせるにこしたことはありません。
しかし、ポジティブなボディーランゲージを表現するのは言うほど簡単ではありません。とくに、あなたが居心地が悪いと感じているときには難しいことでしょう。面接で居心地の悪さを感じないための一番いい方法は、しっかりと事前準備をすることです。
たとえ準備不足だと感じていたとしても、腹をすえて自信をもった態度で面接会場へ入って行きましょう。少なくとも第一印象をよくすることはできます。事前準備としては、まずその企業のことをよく研究しまましょう。それから、いくつかの有効な「サウンドバイト(決め台詞)」を覚えておくといいです。会話に行き詰まったら使ってみてください。また、面接に入る前にあなたの長所をよく思い出して自分に言い聞かせておきましょう。あなたが自分自身について肯定感を持っていれば、ポジティブなボディーランゲージも自然と出やすくなります。
もちろん一番いいのは自然と居心地の良さを感じ、それを表現することですが、そうでない場合でもいくつか役にたつ小技があります。アイコンタクトはとても重要です。もし緊張のあまりアイコンタクトが難しいと感じたら、相手の口を見るようにします。また、少し相手方へ前傾する姿勢はポジティブなシグナルとして送られ、あなたが良い聞き手であるという印象も与えるでしょう。たまに手を口元にもっていくと「あなたの話を聴いていますよ」というサインになります。
面接官はあなたが少しナーバスになっていることを理解してくれるでしょう。これは自然なことなのです。全く緊張もせずに面接会場に入ってこれるなんて、誰も期待していません。少しばかり緊張していても気にしなくていいのです。自信がありすぎても、相手に自信過剰だと受け取られたり、面接を軽く見ていると思われる可能性があります。
結局のところ、運命の大半は相手に握られているのであり、あなたはできることをするしかないのです。面接官はもしかするとあなたの靴が気に入らないかもしれないし、あなたの年齢が想定していた求人内容と違っているかもしれません。これはフタを開けてみるまではわかりません。しかし、ポジティブなボディーランゲージを表現することで、できるだけ好印象を与えるように努めることはできます。
■ボディランゲージは全体の一部にすぎないボディーランゲージについてよく理解しておけば、人とのコミュニケーションがスムーズにいくことでしょう。また、相手が嘘をついているかがわかったり、どれくらい快適なのか不快なのかがわかるのは面白いことに違いありません。しかし間違えないでください。あなたは超能力者ではありません。
あなたがどれほどボディーシグナルを読んだとしても、相手が本当のところ何を考えているか、何を感じているかが、100%正確にわかるわけではありません。ここで紹介したテクニックは、あくまで他者を理解するお手伝いです。どうか他者への気づきを増やし、コミュニケーションをより良いものにするために使ってください。決してマジシャンのフリはしないでくださいね。これらのテクニックはすべて、あなたの自然な直感をクローズアップし、より注意を払えるようにする助けをするだけなのですから。
Adam Dachis(原文/訳:伊藤貴之)