心配事があったり、怖い思いをしたとき、心臓がドキドキしたり、胃がムカムカしたりしますよね。これはすべての人が経験するもので、怖いもの、危険なものから身を守ろうとする、一種の防御機能です。しかし、あまりにそれが大きいと、恐怖感が邪魔をして人生を楽しめなくなってしまうこともあります。では、度が過ぎるほどの恐怖症を克服し、自信を持って生きるためにはどうしたらいいのでしょうか?

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 ■筆者は極度の高所恐怖症

元記事を書いたMelanieは、はしごを3段上るだけでもがたがた震えてしまうほどの、極度の高所恐怖症だそうです。恐怖症を持っている多くの人がしているように、彼女も恐怖と向き合わないという対処法を取っていました

バルコニーに行かないようにしたり、スタジアムコンサートで位置の高い席を取らないようにしたり、登らなければいけないところを避けたり...。そうすることで、普通の生活を送れていたのですが、数ヶ月前、5歳の娘とカーニバルに行ったときに「失敗」してしまいました。乗り物系はできるだけパスしていたので、一つだけでもと思って観覧車に乗ってしまったのです。

一番上で一時停止していたのが、彼女には永遠にも感じられました。ポールにしがみついている彼女を見て娘さんは、「ママ楽しいね、一番上に来れてうれしいでしょ? 怖くないよね」と。そのとき、彼女は高所恐怖症をどうにかせねばと強く心に誓ったのでした。

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そして先日、彼女はなんとウォータースライドに挑戦しました。約18mをほぼ直角に滑り落ちる滑り台の上に仰向けに寝て、時速約32kmで落ちるものです。極端とも言える方法ですが、ちゃんと心理学者のアドバイスを受けて行ったとか。彼女が学んだハックは、高所以外の恐怖症がある人でも使えるものなので、以下にご紹介します。

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■自分が何が怖いのかを分析する

具体的に何が怖いのかがわかれば、恐怖心が小さくなることがあります。恐怖を感じるものに対する向き合い方や、思い込みが間違っていることがあるからです。臨床心理学者のJeff Guardalabene氏はこう言っています。

例えば、飛行機などの飛ぶ乗り物が怖い場合、飛んだら車輪が格納される音と振動がするということ、多少の揺れはあるということ、飛行機事故の確率は低いということを知っておくことで、怖さは軽減されます。

知識があるということは力になり、安心する材料にもなります。Melanieの場合、YouTubeでウォータースライドを楽しんでいる人たちの動画を何回も見て、ちょっと面白そうだなあと感じられるところまで自分の気持ちを持っていきました。いろいろ調べることで、ウォータースライドに乗って心臓発作で死んだ人はいないということもわかりました。

なぜ自分は怖いのか、ということを知るのも克服の鍵になります。ミュージシャンで、心理学の学位を持っているAndrew Canella氏は、「シンプソンズ」の中で飛ぶことを怖がっているマージについて、「マージの恐怖は、パイロットだと思っていた父親が実はフライトアテンダントだったという失望からきていた」と描写しています。これはちょっと変わった例かもしれませんが、思いもよらなかったところに恐怖の根っこがあったと気づくことには価値があります。それによって、自分でコントロールできるものとできないものが見えてきたりするからです。

もしかしたら、怖いと感じていた理由が今になったら意味をなさないことに気づくかもしれません。たとえば、Melanieは子供のころ華奢で、何度も腕を骨折していました。あるときは、やわらかい芝生の上で転んだだけで折ってしまったくらいです。その経験が、高いところが怖いというところにつながっているとも考えられます。根っこがそこにあるのでは? と気づき、大人の自分はもう丈夫になっていることを自覚することで怖さが軽減され、屋上で開かれるパーティにも行けるようになりました。

■イメージして少しずつ恐怖と向き合う

イメージすることと恐怖と向き合うことは、恐怖症の治療法としてよく使われています。怖い状況が何であれ、自分がその中で怖がらずにいるイメージを持ってください。前出の心理学者Guardalabene氏は、「例えば、ある特定の授業でのテストが怖いのであれば、その教室で自分がどこに座るか、机の感触はどんなか、隣には誰が座っているかなど、細かく思い描き、深呼吸してください」とアドバイスしています。

また、恐怖を段階的に見ることも効果的。たとえば、犬が恐いという人では、一に犬の写真を見る、二に犬の動画を見る、三に窓越しに犬を見る、四に紐につながれている犬を通りを挟んだところから見る、といった具合です。

もし、もっと奥深い恐怖心を持っているのであれば、ビジュアル化をガイドしてくれるセラピストや、催眠療法を行うセラピストのところに行くのも一つの方法です。臨床心理学者のDr.Wylie Goodman氏が説明するところによると、セラピストがまずクライアントをリラックスさせ、安心できる環境にあることを認識させてから、恐怖心を感じる状況や物と対峙させるそうです。意識的に恐怖と向き合うのが難しい人でも、リラックスして無意識の状態になると、比較的楽に向き合うことができます。トレーニングを受けたセラピストの声のトーンや話し方が、クライアントをリラックスした状態へ導くのです。

Melanieは、YouTubeで催眠療法を行っている動画を見て、無意識的に自分も恐怖心の階段を少しずつ登っていったかもしれない、と言っています。彼女は登りきったあとに、ウォータースライドを無事に滑り降りて、この記事を書き上げるというハッピーな結末を思い描き、それがモチベーションにもなりました。

■身体を使ったリラックス

Guardalabene氏は、「progressive muscle relaxation」(PMR)や、瞑想を利用して身体をリラックスさせる方法を勧めています。PMRは、力を入れたあとに緩めるという動作を繰り返すことによって徐々に身体をリラックスさせる方法で、頭の上から足の指の先まで、身体の部位を細かく分けて行います。PMRや瞑想で身体がリラックスすると、頭の中がすっきり整理され、正常に動くようになります。また、身体のリラックス効果は、深呼吸にもあります。

その他対症療法としては、ドクターの指示のもとに安定剤を処方してもらい、一時的に恐怖から逃れることも可能です。

■マインドハック

一回きりの状況や、手っ取り早く乗り切りたい恐怖心に対しては、こんな方法もあります。

誰かの助けを借りる

セラピストや友人、SNSの力を借りて対処法を得ましょう。


自分を追い込む

そうせざるを得ない状況に自分を追い込みます。他に選択肢がなければ、やるしかないということです。


自分を知る

自分の限界はどこか、どんな時であればうまくきそうなのか、自分を見つめてみましょう。


■受け入れる

大切なのは、自分を受け入れることです。自分には怖いものがあり、コントロールできるものもあるけれど、できないものもある、と受け入れましょう。心理療法でも「受容」は鍵になります。

心理学者のDr.Goodman氏は、あるがままを受け入れる「森田療法」を用いて、受け入れることの大切さを訴えています。怖いという自分の感情を受け入れ、なぜ怖いと思うのかを見つめ、そこで必要なことをすればいいのだ、ということです。

何かに恐怖心を持っている自分を、情けない、かっこわるいなどと否定的に見ずに、そんな自分を受け入れるのが大切なようですね。

Melanie Pinola(原文/訳:山内純子)