それでは「資産マイナスからの資産運用講座」を開講します。これは、3回にわたって資産運用のキホンを学ぼうというものです。ライフハッカー3周年イベントでUstreamした映像(3回分の講義をダイジェストしたもの)も閲覧できますので、あわせてご覧ください。
ただし、最初にお断りしておきますが、私は「ネットトレーディングで資産1億円!」のような記事は書きません。FXで一気に増やすようなおいしい話もありません。それは、誰でもできる運用ではないからです。また、失敗してお金を全損するようなリスクもあります。私は、、誰でも実行可能であるお金を殖やしていくための知恵、を講義したいと思います。
第一回は「運用以前!:マイナスからの脱出戦略」です。まず、運用を始める前にクリアしておくべきことを述べたいと思います。それは2つ。
- もし、資産がマイナス(つまり借金がある人)であるなら、それを原点復帰させること。
- 安定的にお金を増やす(つまり貯金)習慣を身につけること。
この2つは、資産運用の大前提です。「え、それは運用じゃないでしょ?」という人にこそ、発想の転換をしてもらいたいと思います。マネーハックの始まりです!
Photo by lalunablanca.■借金返済は効率的な運用である
今、あなたには借金がありますか? キャッシングやリボ払い、パーソナルローンというような名前はきれいなものも、実態は借金です。教育ローンや住宅ローンも金利をつけて返す以上は、借金の一部になります。
まず、あなたが借金をしているのであれば、「これ以上借金をしないこと」、「できるだけ早く返すこと」が一番の運用です。
個人が借金をして得することはほとんどありません。会社がお金を借りて商売をするのと違い、個人がお金を借りてそれ以上儲かることは、まずありません。買った服やゲームソフトが、中古で高く売れることはまずないですよね。
一方で、借金には必ず金利がついて回ります。10万円の借金は「10万円 + 金利」を返すわけです。もし「借りない」という行動をすれば、この金利を払わずにすみます。要するに、借金して買い物をすると「高い買い物」をしていることになるわけです。有利な運用を考える人はまず、借金を避けなければなりません。
また、今ある借金については早く返すようにします。「毎月1万円の返済でいいから」と思っていると、とんでもない金利を払うことになります。年利12%の金利で100万円借りるということは、毎月1万円利息がつくということです。つまり、毎月1万円返済している限り、永遠に100万円の借金が残るということになります。毎月ちゃんと返済していても、ほとんど元本が減らないということはよくあります。
向こうの返済指示に従う必要はありません。余裕があれば、毎月増額して返済すべきです(電話一本で振込先が指定してもらえます)。夏のボーナスの未使用分があるなら、これも返済に回しましょう。先ほどの例でいえば、50万円返せれば毎月の金利が5000円に減りますから、1万円の返済で元本を減らしていくことができるようになるわけです。
このとき、「株で増やして借金返済をする」という人がいますが、元本割れの可能性と時間がかかることを考えれば、すぐにローンの返済をすることが確実かつ効率的です。将来の金利負担が減った分、プラスの運用が最初から約束されているようなものなので、ぜひ返済を優先してください。
■キャリアアップも運用の一部また、今よりも年収を高くする方法があれば、それを実現することも運用としては効率的です。自分の能力よりも年収が低いと感じている人は、仕事をしながらでいいので、転職先を探してみるといいでしょう。退職してから転職先を探す必要はありません。むしろそのほうがリスクは高いです。
また、妻が専業主婦で夫だけ働いている家庭は、共働きにすることも世帯の年収を増やすいい方法です。幼児の子育て中以外は、共働きすることをおすすめします。
同じ能力や同じ条件で、年収が100万円増えるということは、株で100万円稼ぐより安定的です(マイナスの可能性も株よりは低い)。10年もたてば、1000万円の差を「稼ぐ」ことができます。株でこれだけ稼ぐための時間と労力を考えると、仕事で稼ぐほうが、はるかに効率的です。これもまた運用なのです。
■稼いだ分を節約して「残す」のも運用 ムダ遣いを減らして、お金を「残す」習慣をつけることも運用です。せっかく稼いだお金をそのまま右から左へ使ってしまうような形は、自分の稼いだ力を運用する力へ変換できていません。
毎月株で安定的にもうけることは大変ですが、実は安定的にお金を増やしていく方法があります。それは、自分の稼ぎの一部を残して積み立てること。つまり、節約も運用の一部と考えるべきなのです。
年収1000万円稼いでも、貯金ゼロという人がいます。年収500万円でも、毎年50万円確実に貯めている人もいます。10年後、資産を増やせているのはもちろん後者です。貯金としても500万円貯まりますし、その一部を運用に回すこともできます。前者はそもそも運用するお金すらありません。
今回は節約のテクニックを述べる時間がありませんが、節約して貯めることも運用である、と覚えておいてください。
■運用のスタートラインに立とうここまでの3つ~「借金を返す」、「稼ぐ」、「節約する」~が「運用以前」に考えておくべき「運用」ということになります。
運用というと株を何度も売り買いしたり、ドルをひんぱんに売り買いしたりすることと思っている人が多いのですが、それは運用の一部分に過ぎません。ここまで述べた「運用以前」の状況を整備しておくかどうかで、運用開始以降が大きく違ってくるはずです。
時間はかけてもいいので、運用をスタートする前の「運用」についてもしっかり考えておきましょう。それでは、運用のスタートラインに立ちましょう。ようこそ運用の世界へ!
(山崎俊輔)