「一生懸命やっているのに、定時に終わらない」

「急な予定変更でスケジュールが狂う」

「締め切り直前でも仕事が終わらず、焦ってしまいミスをしてしまう」

「提出が1日、2日遅れてしまう」

「やるべきことがわかっていても、なかなか手をつけられない」

このようなことが起きてしまうのは、意思の問題ではなく、単にやり方がズレているから。そう断言するのは、『仕事は「段取りとスケジュール」で9割決まる!』(飯田剛弘著、明日香出版社)の著者です。

私は外資系企業に転職してはじめて、長時間働くやり方では世界で通用しないことを実感しました。限られた時間内でやるべきことをやり、成果を出すことが求められているのです。

時間効率を犠牲にしてでも品質にこだわる考え方とは、根本的に違います。そこで私は、仕事のやり方を徹底的に見直しはじめました。(「はじめに」より)

スケジュールを改善していくなかで、いくつか気づいたことがあるのだそうです。

・はじめから無理なスケジュールを立てていた

・お願いされたものを優先してやっていた

・マルチタスクをしてしまい、目の前の仕事に集中できていなかった

・To Do リストに頼り、実際に作業をする時間を確保していなかった

・タスクの起源は曖昧で、「なるべく早く」ばかりだった

・仕事をする上で必要な資料や情報をいつも探していた

・仕事のやり直しで、さらに時間がかかっていた

(「はじめに」より)

これらの課題を解決していった結果、余裕を持って仕事に取り組めるようになったというのです。つまり本書ではそんな経験を軸に、仕事における「スケジュール管理」のアップデート法を紹介しているわけです。

きょうは、「時間効率」に焦点を当てた第7章「時間効率を上げる『ちりつも力』」に注目してみたいと思います。

「自分は遅い」と認める人ほど成長する

限られた時間内で成果を出す人の仕事の進め方は、シンプルかつリズミカル。スイッチがオンになり、高い集中力とスピードにより、優先順位の高い仕事から一気に取りかかるものだということです。そして終わればスイッチがオフになり、ひと休み。こうしたサイクルを繰り返しているというわけです。

このスピードや時間感覚の違いを感じた時は、成長できる絶好のチャンスです。 この違いを客観的にみてください。

変なプライドを持って、自分が遅いことをごまかしたり、見栄を張って隠そうとしてはいけません。素直に「自分は遅い」と認め、仕事が速い人から、どういったことがマネできるかを考えることが大事です。(162ページより)

そして、まずはこの違いの要因を具体的に探って見ることが重要。そのため、まずは「専門知識なのか」「進め方なのか」「コミュニケーションのとり方なのか」と、「なにが違うのか?」を明確にし「どこにギャップがあるのか?」を特定すべき。

次にそのギャップを埋めるため、「なにがギャップを生むのか?」「どうすればそのギャップを埋められるのか?」という流れを意識し、合理的に考えることが大切。

そうすると「実際になにを学ぶ必要があるのか」が見えてくるので、あとは実行していくだけだということです。ただし、一から自分で学ぶのは時間がかかるため、教えてもらうことが賢い近道でもあります。

もしも「自分には無理かもしれない」と思って諦めてしまうとしたら、それはデキる人のいまの状態、つまり結果しか見ていないことが原因。そこに至った経緯や手段に目を向ける必要があるわけです。

「このままだとまずい。本気で変わりたい」と思うのであれば、デキる人がそこにたどり着くまでに取り組んできたことに目を向ける必要があるということ。そして、まずはやってみることが大切だという考え方です。(162ページより)

自分の「タイムゾーン」を見つけると集中できる

高いパフォーマンスを発揮できる時間帯は、人それぞれ違うもの。そこで、まずは自分がもっとも集中でき、パフォーマンスの上がる時間帯を把握することが大切。

そして、その時間帯を最大限に活用するために、外部から邪魔されず、集中できる環境をつくっていくべきだといいます。

一般的には、午前中は頭がスッキリしていてよく働くので、「頭を使う」仕事に適しています。例えば、企画やアイデアを考えたり、プレゼンの構成を検討したり、原稿の内容をまとめたり、自分の考えや意見をまとめたり、表現したりする仕事が向いています。

午後は能率が悪くなり、集中力が落ちやすい時間帯です。あまり頭を使わない単純作業やルーチンワーク、経費精算など粛々とできる定型的な仕事、簡単に仕上げられる仕事、あまり成果に質を求められない仕事などが向いています。(164ページより)

また、ミーティングを午後にするほうがいいという考え方もあるのだとか。人と話すから眠くなりにくく、またミーティング中は頭をあまり使わない時間もあるため、頭が働く午前中にミーティングするのはもったいないというのがその理由。

もちろん根本的にそうしたゆるいミーティングは改善すべきですが、意味のあるなしにかかわらず、立場上、参加しなければならないものもあるはず。

その場合はミーティングを午後に設定し、午前中は頭を使うクリエイティブな仕事に集中するなどの調整が必要だといいます。

「いつ、なにをするか」によって、パフォーマンスは変わってくるもの。そのため、どの時間帯に、どの仕事をするかを計画することが重要だというわけです。(164ページより)

「タイマー」を使って集中力をアップする

集中できずにダラダラと過ごしてしまうことは、誰にでもあるもの。疲れていたり、気になることがあったり、仕事がつまらなかったり、不安や懸念があったりなど、理由もさまざまです。

そんなときは無理をして難しい課題に取り組んだり、頭を使わなければならないクリエイティブな業務をすべきではないと著者は言います。ルーチンワークのような定型業務や、正確性を求められない単純作業などにシフトするほうが時間を有効に使え、成果を出せるということ。

しかし、それでもなかなか勢いがつかず、その日のうちに終わらせなければならない作業が残ったりすることもあるでしょう。

そんなときのために、著者はタイマーを使うことを勧めています。タイマーを使うとデッドラインの意識が強くなり、集中力が上がるというのです。

まず、仕事の内容や予定を分割して、短時間で各作業を完了できるぐらい小分けにします。 次に、「この作業を10分で終わらせるぞ」などと目標タイムを決めます。

そうしたらタイマーを10分に設定し、タイムアタックです。一気にその作業を終えるように仕向けるのです。(167ページより)

また、タイマーを使って集中力と生産性を上げるために、「ポモドーロ・テクニック」を利用するのもひとつの手。「仕事と休憩」をセットにして、それを繰り返すことで仕事に集中するということです。

たとえば「25分仕事→5分休憩」を1セットとして、4セット(2時間)終わったら、少し長めの休憩(例:15分)をとるというもの。メリットは、タイマーを使って短い時間に集中できること。「25分だけ集中すれば5分休憩がある」と考えると、やる気も湧いてくるわけです。

つまりはこうしてタイマーを使えば、一歩一歩着実に仕事を終わらせていくことが可能。また成果や実績を出していくだけではなく、達成感を積み重ねることが、「やり続けられた」という自信にもつながっていくことに。さらには、仕事のマンネリ化を防ぐというメリットもあるといいます。(166ページより)

退社前に「復習」と「予習」をする

退社前に一日の振り返りと翌日の段取りをしっかり行うことは、仕事のパフォーマンスを上げるうえでとても大切。

振り返ることによって翌日の朝からロケットスタートできるようになるわけです。なお振り返りをする際は、自分と対話しながら進めることが大事だと著者。具体的には、次の3つを行うといいそうです。

①振り返る

「きょう、やったことはなにか?」

「やり残した仕事があれば、なぜ終わらなかったのか?」

「きょうの教訓はなにか?」

②作業仕分けで、明日に備える

仕分け①:明日やることを明確にする

「明日以降に、追加でやるべき仕事はあるか?」

「締め切りや作業内容の変更はないか?」

「なにかモレがないか?」

仕分け②:いつ何をするか決める

「やり残した仕事は、いつするのか?」

「新たに増えた仕事は、いつするのか?」

「明日、空き時間を確保できているか?」

仕分け③:タスク置き場を整理する

「明日やる仕事はどこに準備してあるのか?」

「バラバラに保管・管理されていないか? 片づけたか?」

「明日、すぐにはじめられるか?」

③スキマ時間にやる作業をリストにする

ちょっとした待ち時間や突然できた空き時間を、どのように活用できるか時間管理をする上では、そのことについて真剣に考えることが重要。たとえば仮に3分あったとしたら、かなりのメールを処理できるはず。

電話も1、2件はかけられるでしょう。また書類に目を通したり、郵便物を確認することも可能。スマホがあれば場所を問わず、メールチェックや情報管理も簡単にできます。

時間が空いたことでイライラしたりぼーっとするのではなく、「スキマ時間」を「なにもしない待ち時間」から価値を生む「使える時間」に変えるべきだということ。

このように限られたスキマ時間に集中できれば、従来では考えられなかったアウトプット、成果を出すことができるわけです。

スキマ時間を使って仕事をする習慣が身につくまでは、普段から3分や5分でできることを考えておくといいそうです。ポイントは、なにをやるべきかと迷わないように、事前にリストアップしておくこと。

スキマ時間の活用を考えることで、時間をムダにしたくないという意識が芽生え、時間効率を上げることにつながるわけです。(180ページより)




スケジューリング成功の鍵は努力や根性ではなく、やるべきことを合理的に、ムダなく管理し、実行していくこと。そんな著者の主張には、大きく納得できるものがあります。

ピンときたことがらを取り入れてみるだけでも、仕事のパフォーマンスを高めることができそうです。

Photo: 印南敦史