被災地・福島に生まれた、フリーランスを応援する場所 | co-ba koriyama
災害を跳ね返す“エネルギー”をカタチにする場
コワーキングコミュニティ『co-ba koriyama』は、会員制のシェアードワークスペースと、各種イベントやセミナーが開催できるイベントスペースが一体となった、ユニークなコワーキングスペースです。東日本大震災の後、人材やアイデアや資金など、多種多様な“エネルギー”が福島県に集まってきました。
震災のダメージを多様な人々のアイデアあふれる起業や交流活動で跳ね返し、地域を元気にしていく場づくりをソフトとハードの両面から進めています。ハリケーンカトリーナの大災害後、コワーキングスペースの活用で地域を復興させたアメリカ・ニューオーリンズなどの事例も視察。
今もなお、さらなるスペースの充実も図っています。運営する一般社団法人『グロウイングクラウド』の代表理事、三部(さんべ)香奈さんに、お話を伺いました。
『co-ba koriyama』ワークスペース情報 |
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■ 場所:郡山市緑町9-12 三部会計事務所 第2ビル1階 ■ 座席:1階/オープンエリア30席、フリースペース(イベント利用可)/ブースエリアなし ■ 料金:一般会員/月額8,000円/入会金無料キャンペーン中 ネットワーク会員/月額15,000円/入会金無料キャンペーン中(全国のco-baの利用可能) 1DAY/1人1,000円(日)/入会金無料 ■ 営業時間:平日9:15~18:00、ミーティング利用平日9:15~21:00 土日祝日終日、イベント貸切平日9:15~21:00 土日祝日終日(土日祝日は要予約) ■ 電源:〇■ Wi-Fi:〇 ■ 飲み物: コーヒー、紅茶サーバーあり(一部有料)。フード持ち込み可。 ■ 特徴: 150平方メートルのワンフロアーに机といすを自由に移動できるワークエリアと、キッチンに卓球台があるユニークなスペース。母体が会計事務所で、税理士や社会保険労務士、中小企業診断士などの専門家に気軽に起業情報を聞けるほか、起業実践講座、創業補助金セミナーを開催しています。またオプションで法人登記ができます。 |
東日本大震災がなければ、『co-ba koriyama』は生まれなかった。
-『co-ba koriyama』を始めたきっかけを教えてください。
震災が起きたとき、私は長男を出産してちょうど3ヶ月。震災の後、不安な中で、家に居る時間が長くなって……。約9年間、地元の新聞社で記者をしていたので、「地域のために何かしたい。何かしなければ……」。このままでは物足りない感じがありながらも、でも、行動が起こせない。
それでも何かしたいと、郡山市で開かれた異業種の人による読書会『Read for Action』に参加しました。最初に読んだのは、福沢諭吉の『学問のすゝめ』。読書会での仲間は、「震災の後だからこそ、何かしたい。何か貢献したい。街のために一人ひとりができることは何だろう」と思う人たちばかり。
さまざまなテーマの本を読み、議論し、自分の行動を変えていく、まさに「行動のための読書会」でした。そしてビジネスを興したことのある人もいて、みんなが集まることで、話し合うことで、どんどんアイデアが生まれてきました。出会いの相乗効果ですね。
- 一緒に活動できる仲間との出会いがきっかけだったんですね。東日本大震災もきっかけのひとつですか?
ええ。東日本大震災が起きなかったら、読書会に行かなかったら、仲間と出会わなかったら、『co-ba koriyama』は生まれていなかったと思います。この出会いで、私の人生も一気に変わりました。
新しいことに踏み出す勇気をくれる場に。
- コワーキングスペースを始めることになった理由は何ですか。
「福島県の人たちが集い、学び合う、新しい場所があったらいいね」という意見でみんなが一致したことです。「何かやりたいけれど、新しいことになかなか踏み出せない」、そんな人を応援する「場」。そして一緒に踏み出して、その後も伴走していくような「場」。それが今、福島には必要ではないかと思いました。
一人だとなかなか最初の一歩を踏み出す勇気が出ませんよね。それが、応援してくれる人がいると、前に踏み出せることってあるじゃないですか。そういう「場」がほしいなと。そう考えたら、たくさんの出会いが集まるコワーキングスペースだと思いました。
- どのようなセミナーが人気ですか。
特に、地元の福島銀行から委託を受けて開催している『プチ起業カフェ』は毎回、大好評です。現在は4期になりましたが、1期は20人定員のところ、4倍の80人もの方から申し込みがありました。
まずは、気軽なお小遣い稼ぎから始めてみましょうという講座で、ほんどが女性、主婦。女性の関心の高さを実感しました。また、異業種の参加者による読書会『co-ba de つながる読書会』も毎月定期的に行なっています。
このほかにも、自宅で作ったパンをこちらで販売して、お客様のコメントをいただきながら商品開発に結びつけたり、スペース内のキッチンを利用して、チャレンジカフェを開いたり。机やいすを自由に移動できるので、ヨガ講座、キャリアコンサルタント講座、日本の伝統文化に関するイベントなど、さまざまな使い方ができます。私たちは「多様なチャレンジが集まるシェアードワークスペース」を理念にしていますが、まさにそうなっています。
非日常と遊びゴコロが生む | 素敵な出会いとアイデア
- 郡山市は福島県の中央に位置しますが、地域的な特色はありますか。
郡山だから、という点はいくつかあります。やはり、福島県の各地からご利用者さんが集まってくるということです。郡山市は商業都市としても事業活動が活発ですが、県庁のある福島市、歴史と伝統のある会津若松市、太平洋に面したいわき市などからのご利用があります。ちょうどこれらの市の中央に郡山が位置しているという利点があると思います。
- 場所も便利なところにありますね。
郡山駅から車で15分、最寄りのバス停からは5分。徒歩数分のところにコンビニがあり、郡山市役所や開成山(かいせいざん)公園も近いです。専用の駐車場があります。
- スペース内にはカウンターキッチンがあって、学校のように黒板やピアノもあるんですね。
我々はアイデアは、「非日常と遊びゴコロから生まれる」と考えます。日常とは違った雰囲気の中、リラックスした自由な中で、ドンドン新しいつながりや出会いに遭遇してもらいたいと思います。
カウンターキッチンが備わっているので、料理教室やケータリングによる懇親会もOKです。空いた時間に料理を作ったり、卓球をやってみたりしてもいいかもしれません。起業家というと、何か孤独な感じがするかもしれませんが、一人で考えても答えが見つからなかったり、煮詰まってしまったり―ということがあると思います。
そんな時には、『co-ba koriyama』の講座に参加して、ご利用者さん同士で会話してみてください。新しい視点が得られるかもしれませんね。そういう場にしていきたいと思います。
- 今後の目標はありますか。
10月下旬から約10日間、アメリカでハリケーンカトリーナの被災地、ニューオーリンズを視察で訪ねました。大災害の後、この地域は、コワーキングスペースが核となり、たくさんの人たちの出会いとアイデアにより、どんどん新しいビジネスが起きて復興したという歴史がある場所です。
現地での取り組みを学び、郡山のコワーキングスペース『co-ba koriyama』には大きな可能性があると痛感しました。可能性をもっと広げて、地域全体を活性化させる拠点になれればと思っています。
筆者:利用者の方にお話を伺いました。法人会員の郡山市のWebとアプリ制作会社、株式会社ネクストデザイン社長・渡邉雅也さんは「普段は打ち合せと制作に活用しています。ここは情熱ある仲間とチャンスに巡り会える場所です」と話してくれました。ここ『co-ba koriyama』から、新しい可能性の花が咲き始めています。
(おわり)