有理型関数
本書では、有理型関数の数ある話題の中から、「実変数関数の積分計算(留数の原理)」、「有理型関数の存在(ミッタク・レフラーの定理)」、「有理型関数の応用(
実数上で定義された関数を複素平面の有理型関数に拡張することで、実数の範囲では得られなかった深い解析が可能になる。留数による実関数の積分計算も一例で、実数直線上では処理が非常に困難な積分計算が、複素変数を導入することで比較的容易に進められるようにしていくことができる。このことを多数の実例と演習問題と共に確認していく。
その他、デジタル信号処理の分野などで頻繁に用いられる「
いずれも他分野への応用や発展に非常に富む話題であり、数学を学習するうえでの強力な武器になり得るものばかりである。これら非常に有用な有理型関数のトピックについて、コンパクトかつ丁寧に解説した。複素関数分野の学習への第一歩として恰好の書である。
なお、本著は同著者による同シリーズ36巻『正則関数』の続編を意識して書かれている。本著のみでも無理なく知識が習得できるように十二分の工夫が凝らされているが、両書を併用することで、複素関数論の更に広い知識を得ることができるだろう。
1.1 正則関数
1.2 複素積分
1.3 コーシーの定理とコーシーの積分定理
1.4 正則関数列
1.5 正則関数の諸性質
第2章 有理型関数
2.1 ローラン級数
2.2 ローラン展開
2.3 特異点の種類と有理型関数
第3章 留数による定積分の計算法
3.1 留数
3.2 留数の原理
3.3 実変数関数の定積分の計算への応用
3.3.1 特異点が実軸にない有理関数
3.3.2 三角関数を含む積分
3.3.3 フーリエ変換の計算
3.3.4 xαを含む積分
3.3.5 特異点が実軸にある場合:コーシーの主値積分
3.3.6 その他
第4章 有理型関数に関するいくつかの定理
4.1 部分分数展開
4.2 ミッターク・レフラーの定理
4.3 偏角の原理とその応用
4.4 イェンセンの定理・ネヴァンリンナの定理
第5章 無限遠点を含む領域上の有理型関数とz変換
5.1 無限遠点での正則点と極
5.2 z変換
5.3 たたみ込み積とz変換
5.4 差分方程式とz変換
5.5 無限遠点について
5.5.1 拡張された複素平面
5.5.2 リーマン球面
第6章 無限積
6.1 無限積
6.2 無限積による正則関数
6.3 ネヴァンリンナ空間,ハーディ空間
第7章 有理拡張で得られる有理型関数
7.1 複素変数のガンマ関数
7.2 ガンマ関数の乗積表示
7.3 ゼータ関数
7.4 ゼータ関数の有理接続
付録 実変数関数の積分
A.1 広義積分
A.2 微分記号と積分記号の順序交換
問題解答
文献案内
関連図書
索引