2024.12.16 05:00
【豪でSNS禁止】子ども守る議論深めたい
SNSには仲間とつながる手段や自己表現の場になるメリットもあるが、有害な情報にさらされたり、いじめの温床になったりする弊害が世界各国で指摘されている。日本でも子どもの利用が広がっている。被害からいかに守るか、議論を深めるきっかけにしたい。
新法は事業者に対し、アカウント作成の際に厳格な年齢確認を義務付けた。深刻な違反をした場合は、最大4950万豪ドル(約50億円)の制裁金を科す。子どもや保護者への罰則はなく、事業者に厳しい姿勢を示している。
禁止対象は、インスタグラムやTikTok(ティックトック)、X(旧ツイッター)など。教育的効果があると判断されたユーチューブや連絡に使われる通信アプリは対象から外れた。
背景には、SNSを通じたトラブルが相次ぐ実態がある。動画中毒やいじめなどが原因で子どもが命を絶つ事案が後を絶たず、禁止の機運が高まっていた。
法案可決を受け、アルバニージー首相は、事業者は「子どもの安全が最優先であると保証する社会的責任を負うことになった」と述べた。世論調査でも8割近くが法制化に賛成すると回答するなど、国民の多くが支持している。
一方で、法規制を巡っては課題も指摘されている。
まずは年齢確認の難しさだ。現段階では確認方法は決まっていない。もしアカウント作成に身分証明書が必須になれば、大人も含めた個人情報を事業者が蓄積しかねないとの批判も出ている。
実効性を確保できるかも見通せない。いくら規制しても抜け道を見つける子は出てくると言われる。
だからこそ、法規制の有無にかかわらず事業者には子どもの保護に向けた自主的な取り組みが求められる。同時に、子どもが危険性を理解し、自ら判断して規制できるようになるための教育も必要となる。
子どものSNSの利用制限は各国で急速に進む。フランス議会は保護者の同意がない限り、15歳未満がSNSを利用できないようにするための法律を承認。英国では、子どもに有害なコンテンツのアクセス防止策を事業者に義務付け、違反に制裁金を科す法律が成立した。
日本ではインターネットを利用する子どもの保護の在り方を探る研究が政府主導で始まった。
2021年度の文部科学省調査によると、全国の小中高校などでSNSなどを通じて嫌がらせを受ける「ネットいじめ」として認知された件数が初めて2万件を超えた。高知県内でも子どものスマートフォンの利用率が全国より高く、ネットいじめは増加傾向にある。
子どもにとってSNSは既に生活の一部となっている。適切な付き合い方を議論していきたい。