尾山基氏

 兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラ疑惑などで内部告発された一連の問題を巡り、知事の後援会組織「ひょうごを前に進める会」の代表世話人、尾山基氏(アシックス・シニアアドバイザー、神戸商工会議所副会頭)が辞任していたことが10日、分かった。同会は片山安孝元副知事や有力経済人らでつくられたが、名簿も事務局もなく、片山氏が7月末で副知事を辞職して以降、事実上有名無実化している。元々、経済界と知事との間で微妙な距離感が指摘されていたが、断絶は決定的になった格好だ。

 尾山氏は「県議会調査特別委員会(百条委員会)などでの言動や次々に明らかになる事態にがっかりした」と述べ、支援できる状況ではないことを明らかにした。「この状態になってまでして知事を辞めないのも不可解だ」とも述べた。

 同会は2021年の前回知事選を前に片山氏や経済人らでつくられた。昨年7月には政治資金パーティーを神戸市内で開催。パーティー券は1枚2万円で約800人が参加した。

 神戸経済界は歴代知事と良好な関係を築き、地域開発や阪神・淡路大震災復興プロジェクトなどを協力して推進してきたが、斎藤県政になり、風向きが変化。神戸商工会議所の川崎博也会頭は先の会見で「『県政を前に進める』と言うなら、自身の言葉で具体的に説明すべきだ」と批判した。

 斎藤知事は10日朝の登庁時、報道陣の取材に「直接聞いていないのでコメントできない。過去のパーティー開催時に代表世話人として対応いただいたが、組織の役員に就いていたわけではないので、辞任や辞職には当たらないのでは」と説明。組織は政治団体として存続していると話した。尾山氏には「ご指導、力添えをいただいたことには心から感謝申し上げたい」とした。(加藤正文、大盛周平、金 慶順)