車1台駐車できるだけのスペースがある人に朗報だ。軒先などのちょっとした遊休地を、お金に換えるシェアリングサービスとして「軒先ビジネス」が活況だ。
コロナの影響で、在宅勤務や外出自粛、飲食店への時短要請の影響で、飲食店が店舗を構えず、キッチンカーでお弁当を売る動きが加速している。
教えてくれたのは、スキマの有効活用に詳しい「スキマハンター」こと、軒先株式会社 代表取締役の西浦明子氏だ。
空きスペースの写真さえあれば、登録可能!
2008年のサービス開始から、2万件の利用実績あり
所有するビルの軒先や屋上、階段下のようなデッドスペースはないだろうか?
もしくは、買い手が付くまでの売り出し中のビルや、定休日や稼働していない時間帯の店舗のスペースがある人は、「軒先ビジネス」に、空きスペースを登録して、一時貸しすることができる。
「軒先ビジネス」は、2008年から始まった、遊休スペースの借り手と貸し手をつなぐマッチングサイトだ。スペースを借りる側は、物販や催事の目的で、場所を借りる。貸す時間や、利用料金などは、貸す側が自由に設定できる。
「登録の際に、登録料や掲載料、初期費用などの費用は一切不要です。場所の写真さえあれば、すぐに登録できます。ただし、スペースの利用料から、35%が手数料として差し引かれます」
事故が発生した場合などに備えて、利用料には保険料が付加され、保険料は借り手が支払う仕組みだ。現在までに、登録されたスペースはのべ7500件、利用件数は年間2万件以上となっている。
軒先ビジネスが、大きく飛躍したきっかけになったのが、2008年のリーマンショックだった。市況が落ち込み、不動産オーナーや管理会社などから稼働率を少しでも上げるために、問い合わせが急増した。その流れを掴む契機になったのが、ある成功事例である。
「東京・四谷三丁目の好立地に取り壊す予定の不動産があり、なかなか買い手がつかず、買主が見つかるまでの間だけと軽い気持ちでオーナーさまが登録されました。
すると、その物件に予約が殺到。生活雑貨の販売スペースとして利用されました。付近には高齢者が多く住んでおり、雑貨店は繁盛し、9ケ月の登録で500万円ほどの利用料になりました」
コロナが追い風に。利用者数は前年比1.5~2倍
商店街に近い、住宅地の人気が急上昇
実は今、コロナの影響で、遊休スペースを求める動きが増している。
「屋外は密になりにくいことから、物販や催事スペースとして、屋外のスペースを求めている方が増えています。そのため『軒先ビジネス』の利用者数は前年比1.5~2倍に。全国展開していますが、場所別では一都3県の利用者数が多いものの、全国的に催事販売ができるスペースを求める動きがあります」
外出自粛や在宅勤務の広がりによって、住宅地に人が増えている。これまでキッチンカーというと、ビジネス街に出店していたが、最近では、吉祥寺などの商店街に近い住宅地に出店する動きがあるという。
「飲食店への時短営業要請の流れから、キッチンカーでお弁当やテイクアウトのお総菜を売りたいとのニーズが急増しています。西麻布などの人気店の有名シェフや大手飲食チェーンさえも、キッチンカーを確保する動きが始まっています。すでにキッチンカーを置くための駐車スペースが足りない状況です」
飲食店を始めるには店舗を構える費用などコストがかかるが、キッチンカーなら200~300万円でスタートできる。
車1台置けるだけのスペースがあれば、キッチンカーに場所を貸すことで、プラスの収益が見込めるわけだ。
「キッチンカーを置くための駐車スペースとして場所を貸し出す場合、利用料の目安は、10~15時の4~5時間で1日3000~5000円ほど。月に平日だけ20日間貸し出すとして、月6~10万円の売上が見込めます」
立地や広さ、ニーズによって、利用料はピンキリだが、売上から手数料を差し引いても、ワンルームの1ケ月分ほどの家賃収入に匹敵する収入になる可能性がある。
軒先株式会社では、飲食店オーナーと開業希望者をマッチングする飲食店向けのマッチングサイト「magari」も始めている。
売却までの一定期間や、遊休地や空きテナント、空きスペースがある人は、こうしたスペースの活用法を検討してみるのもよさそうだ。
健美家編集部(協力:高橋洋子)