2024.11.22
目指すは世界的IP創出!始動したカヤックとアスラフィルムの大きな夢
2024年11月、カヤックの連結子会社となった株式会社アスラフィルム・ラゾ株式会社。同年5月に発足したカヤックアキバスタジオのIPプロデュース事業部や、デジタルアニメ事業部とのシナジー効果が期待される。M&Aに至るまでの思いと今後の抱負について、アスラフィルム代表取締役の望月氏、カヤック代表取締役CEOの柳澤、カヤック代表取締役CTOの貝畑、カヤック財務部の吉田に語ってもらった。
株式会社アスラフィルム
2013年東京杉並に創立。デジタルアニメーションの撮影(線撮・本撮)、アニメーションの企画・制作などを展開。国内4つの拠点(東京、金沢、岡山、沖縄)での運営に加え、海外3カ国(中国・無錫、トルコ・イスタンブール、アルゼンチン・ブエノスアイレス)に業務提携先を有し、線撮分野では高い市場シェアを誇る。アニメーションの企画制作としては、大人気ゲーム「原神」の4周年祭「HoyoFair」にてオープンワールドRPG「原神」のショートアニメの一編『グゥオパァー』を手掛け、中国本土及び日本で自社配信をしている。
ラゾ株式会社
日本のアニメ業界と世界のクリエイターの架け橋となることを目的として2023年より事業を開始。日本国内のアニメーターに加え、北米、南米、欧州、アジアからアニメーターを採用し、日式アニメのクオリティを厳密に管理することで、クライアントに付加価値を提供している。
持ち前のゲーム開発スキルとアニメーションのプロによるシナジーに期待
吉田
カヤックがアスラフィルム・ラゾの株式買収を検討した背景には、どのような思いがあったのでしょうか。
貝畑
カヤックのグループ会社であるカヤックアキバスタジオはもともとゲーム開発を行ってきたのですが、そのスキルを活かした総合エンターテイメント開発会社として、違う市場に展開しようと考えてきました。3年前からは、ゲームで扱うアニメーションやCGのスキルを使いアニメ・CGアニメの市場に進出しました。例えば、CGアニメやミュージックビデオの一部を担当するような形で、1分、5分など短尺のものをつくっています。
でも、今後はもっと30分、1時間、2時間の尺もやっていきたい。そこまでできるアニメのプロフェッショナルな人たちと一緒になりたいと望んでいたんです。
柳澤
お互いの領域は近いんですよね。
貝畑
領域としては近いのですが、カヤックアキバスタジオはCGに関わる部分しかできないので、アスラフィルム・ラゾさんと組んだらもっと色々できるようになります。短尺アニメーションチームをぜひ成長させて欲しいです。もうお互いの人事的連携のやり取りも始まっています。
柳澤
将来的にはIPを生み出したいですね。それをゲーム・アニメ、全部一緒にできたらという思いがあります。
ご縁のきっかけはまさかの「コンチ」?!
吉田
どういったIPをつくりたいのか、何かイメージはあるんですか。
柳澤
個人的にはもう、「ポケットフレンズ・コンチ※」ですよ! 僕と望月さんの念願ですから。
吉田
そうなんですね(笑)。そもそも、望月さんとはこの「コンチ」つながりなんだとか......?
望月
はい。ちょうどアスラフィルムができた頃で8年前くらいかな、「コンチ」の二次創作がOKになったと聞き、「もうつくっちゃいました」って持ち込みましたね。実写とアニメの融合というか、横浜の雑踏から「コンチ」が鎌倉に向かっていくという映像作品をつくりました。
柳澤
わけが分からないけど最高でした(笑)。「コンチ」で何かやるなら絶対に望月さんに頼もうと思いました。それが望月さんとの出会いでしたね。
望月
「コンチ」には思い入れがあるので、カヤック25周年のスペシャルムービーに登場したのを見た時は涙しそうになりました。
柳澤
良い話に無理やり持っていくなら、何かを生み出して、それがきっかけでつながるってすごく良いことだなぁと。
「好き」を共有する仲間同士、M&Aに迷いはなかった
吉田
M&Aに関しては、カヤックの他にも色々な会社からオファーがあったんですよね。なぜカヤックに決めてくれたのですか。
望月
圧倒的にカヤックでしたね。すごく熱い話を一緒にして、「やっぱりカヤックさん、いいな」と。「コンチ」以外にも、柳澤さんと好きなものが一致していたので驚きました。
柳澤
「ファースト・ミッション」のことかな。
望月
数あるジャッキー・チェンの映画の話をたくさんの人としますが、まさか「ファースト・ミッション」が好きだとは......。
柳澤
そもそも、この作品を知っている人が少ないんです。ジャッキーが、オープニングとエンディングの歌を日本語で歌っています。泣ける話なんですよ。
望月
監督のサモハン・キンポーが知的障害の兄役で、そのお兄ちゃんを助けるためにジャッキーが悪の組織と戦うけど、最後は刑務所に入ってしまう。今リメイクしてもグッとくる映画。社会派なんです。
柳澤
うん、泣けてくる。
望月
こんな話をされちゃったから、仲介会社から他のM&Aの話を聞いてる時も、カヤックのことがふわふわと思い浮かんでくるんです。「ああ、一緒に『ファースト・ミッション』の話をしたいな」とか(笑)。
吉田
「何をするかより誰とするか」ですね。
柳澤
誰かが会社に入る時は、事業の将来性や投資の収益性はもちろんのこと、「気持ち」の部分は重視しますよね。であれば、M&Aも同じです。カルチャーはもちろん、アスラフィルムさん側の「人」も魅力的でしたから、一緒にやっていきたいと思いました。
吉田
ちなみに、皆さんはどんなアニメ作品が好きですか?
望月
僕は「マインド・ゲーム」です。漫画が原作でカルト的人気を博したアニメで、テーマは「自分の力で人生を変えろ、掴め」。これを見たからこそ、他の内定を蹴ってStudio 4℃というアニメ会社に入ったんです。その時に4℃に集まった人間が今のアニメ業界を席巻しているのも嬉しいですね。
貝畑
僕の場合、オタクの目覚めのきっかけは「ふしぎの海のナディア」、初めて劇場で見たのは「幻魔大戦」です。いまだに見返しているのは「カムイの剣」。全てのシーンがカッコよくて、オープニングの宇崎竜童さんの曲からやられます。実は、YouTubeで毎日のようにBGMを聞いています。
望月
最高ですね〜!! 貝畑さんはけっこうなアニオタなんですね。
アセットを活かしあい、業務の効率化とビジネス領域の拡大を
吉田
最後に今後の展開について教えてください。
柳澤
まず、人材の交流をどんどんやっていきます。採用支援に関しては、カヤックの人事がかなり力になれると思います。
望月
いやー、すぐ来てほしい! とあるテレビシリーズのオファーをいただいたのですが、これがもう大変で......。カヤックさんの3Dチームの方とも、すぐ一緒にやることになるはずです。
貝畑
それは楽しみです。
望月
あと、海外出張が多すぎて大変なんです。営業担当というか、例えば、取引先の役員さんと一緒に海外をまわってくれる方がいたら嬉しいですね。
貝畑
営業的なことで言うと、僕はゴルフとポーカーができます。エンタメ系の方はけっこうポーカーをされることが多いんですよね。
望月
それなら、早速紹介したい人がいますよ。僕はずっと仕事ばっかりでゴルフもポーカーもしないから、助かります。
柳澤
望月さんはさすがに人脈が豊富ですよね。かいち(貝畑)&望月さんは、全然違うキャラクター同士で無敵な組み合わせになりそうな感じがします。
今後の展開をまとめると、ビジネスの領域拡大、採用支援、悲願のIPをつくることですね。
望月
やりましょう! 実は、もう色々面白い企画を考えているんですよね。
吉田
どんどん妄想が膨らんでいきそうですね。期待できそうです!!
(取材・吉田剣悟/文・二木薫)