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音楽の旅


vol.25
   ケイト・ブッシュ / Remastered Pt.I 2020.March

ケイト・ブッシュ / Remastered Pt.I
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先頃英国はEUから離脱した。前回紹介したビートルズを始め、過去の膨大なブリティッシュ・ロックの音源の動向、あるいはこれから生み出される同国の音楽産業に少なからず影響があるのではと懸念されるところだ。とりわけ今回採り上げるケイト・ブッシュは、イングランド出身のイギリスを代表する女性シンガーソングライターであり、世界中に多くのファンを持つカリスマ的存在。2013年には、その長年の芸術活動が称えられ、大英帝国勲章が授けられている。寡作家だけに、彼女の作品を末長く愛でたいと考えているのは私だけではないだろう。

今年61歳になるケイト・ブッシュは、その独特の透明かつ繊細な声質を活かして、低音から高音まで広い音域を優れた表現力で歌いあげ数多くのアーティストに影響を与えたとされる。

77年にリリースしたデビューシングル「嵐が丘」(エミリー・ブロンテ作の有名な小説を基に製作されたテレビドラマが題材らしい)がいきなり全英シングルチャートで4週連続1位を記録。同作を収録したファーストアルバム「天使と小悪魔(The Kick Inside)」 も40万枚のセールスを記録した。ステージ上では、歌唱と共にダンスやパントマイムを繰り広げ、独特の世界観を表現。そのパフォーマンス性も高く評価されている。

ケイト・ブッシュ / Remastered Pt.I

ここで採り上げた「Remastered Pt.I」は、デビュー作「天使と小悪魔(The Kick Inside)」から、82年リリースの「ドリーミング(The Dreaming)」までの4枚のアルバムを網羅した全44曲を収録。ケイト・ブッシュ本人と、ピンクフロイドとのリマスター作業で知られるエンジニア/ジェームス・ガスリーとの共同作業による2018年リマスター音源となる。

今回試聴に用いたイヤホン、“WOOD”シリーズの「HA-FW1500」は、ケイト・ブッシュの透明感の高い澄んだ声の特徴を存分に引き出してくれた。それはひとえにウッドドーム振動板のリニアリティに優れたレスポンスがもたらしていることは明らかだ。JVCが 長年培ってきた薄膜加工技術によって成形された、薄さ50ミクロンのカバ材ウッドドームが、カーボンコーティングを施したPET振動板と重ね合わせられることで、適度な強靭さとしなやかさを両立させることができた。

また、独自のスパイラルドット+(プラス)イヤーピースの効能も無視できない。イヤーピース内側に設けられたスパイラル配列のドットが反射音を拡散・減衰させることで、よりクリアーな音の通りと抜けを実現しているのである。

最大のヒットシングル「嵐が丘」の、夢見るようなロマンチックな世界観をHA-FW1500は立体的に再現した。オーケストラの勇壮な響きを背にケイトがドラマチックな歌唱を繰り広げ、リズムセクションの賢明なサポートもくっきりと描写。そこには、金属製インナーハウジング等の無共振設計も効いているのだろう。

82年発表の4thアルバム「The Dreaming」のタイトル曲「The Dreaming」は、強力で重々しいビートを従えてケイトが勇ましく歌っているような印象。初のセルフ・プロデュース作だけに気合いの入った楽曲が並んでおり、多重録音ならではの深いサウンド、重層的な音響が聴きどころだ。この辺りにもHA-FW1500のウッドドーム振動板のレスポンスのよさが発揮されているに違いない。

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