ポイント
- 光や酸に対して安定でありながらも、光と酸を同時に作用させることで優れた分解性を示すケイ素化合物を新たに発見し、光と酸で協働的に分解可能な高分子材料の開発に成功しました。
- この材料は、普段は光に対して安定ですが、酸の有無によって自在に光安定性と光分解性を切り替えることが可能です。そのため、光の下で使い続けるような、光安定性が求められる材料に対しても、狙ったタイミングで光分解することができます。
- これによって、従来は光による微細制御との両立が困難とされてきた、光機能材料や光造形材料に対しても光分解や光加工が可能となることを実証しました。本研究は、材料の光制御技術におけるさらなる革新に貢献することが期待されます。
光で分解可能な材料は、光への安定性が低いため、太陽光や蛍光灯などの光が当たらない環境でしか使えないという制約があり、幅広い活用における大きな制限となっていました。東京大学 大学院総合文化研究科の正井 宏 助教、寺尾 潤 教授、横川 大輔 准教授、川野 勇太郎 大学院生らの研究グループは今回、その制限を打開する手法として、光と酸による協働分解が可能な材料を新たに開発しました。研究グループは、地球上に豊富に存在するケイ素から構成される化合物が、優れた光・酸協働分解性を示すことを新たに発見し、高分子材料へと応用しました。この材料は、酸の有無によって光安定な状態と光分解可能な状態を自在に切り替えられるため、従来は光による微細制御との両立が困難とされてきた、光機能材料や光造形材料に対しても光分解や光加工が可能となることを実証しました。本研究によって、たとえ光が当たる環境で使う材料であっても、協働的分解による光加工性を融合できることが示されており、材料に対する光制御技術の新たな可能性が開かれました。
本研究成果は、2024年12月4日付(現地時間)で「Advanced Materials」に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「光安定材料への酸添加による協働的光分解技術の創成(JPMJPR21N8)」、JST 次世代研究者挑戦的研究プログラム(JPMJSP2108)、科研費「光刺激と化学刺激の多重協働活性化を活用した高機能材料群の創成(課題番号:21K05181)」、天田財団、野口遵研究助成金、矢崎科学技術振興記念財団、村田学術振興財団、東電記念財団の支援を受けて実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(505KB)
<論文タイトル>
- “Synergistic Degradation of Durable Polymer Networks by Light and Acid Enabled by Pyrenylsilicon Crosslinks”
- DOI:10.1002/adma.202412544
<お問い合わせ先>
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