日銀前橋支店の旧店舗
現在の日銀前橋支店

 関東初の支店として1944(昭和19)年に開設された日銀前橋支店(群馬県前橋市大手町)が11日、80周年を迎える。現在の同市千代田町に開設した当時は戦火が激しくなり、終戦の10日前の45年8月5日夜から翌日の未明にかけて市内を襲った「前橋空襲」(犠牲者535人)で、4人の職員が殉職した。同支店の本館は外郭を残して焼失し早期の復旧は困難を極めたが、2日後の7日には営業を再開し、地域金融を守った。北関東で唯一の日銀支店が置かれている理由を節目の年に改めて振り返る。

 同支店に残る「二十周年のしおり」には、初代支店長の堀越禎三氏による当時の回想が記されている。

 支店の開設にあたり、今年新1万円札の肖像に採用された渋沢栄一を祖父に持つ渋沢敬三総裁が、東京での度重なる空襲に「いつ本店がやられるかも知れん。近い支店は新潟、福島、松本(長野県)しかない。利根川の橋を爆撃されたら北関東は金融的に孤立する」と指摘。その上で、「一日も早く開店してもらいたい」と堀越氏に要望したという。開設の1カ月ほど前の11月上旬のことだった。

 急ピッチの開設準備では、コンクリートが乾かず、金庫の扉が付けられない事態が発生。開設2日前には本店から明日2億円送るとの指示があったが、金庫はまだ完成していなかった。職員がどうしようかと悩んでいると、堀越氏が「二階へほり上げときなさい。みんな...