UnaBiz、IoTでDX支援
日本を目指すシンガポール発SU(3)
2024年12月2日
UnaBiz(ウナビズ)は、モノのインターネット(IoT)技術を用いて遠隔モニタリング・ソリューションを開発する、シンガポールに本社を置くスタートアップだ。日本へは2019年に進出。同社は東京証券取引所が2024年3月に立ち上げた、アジアの有力スタートアップに対してIPO(新規株式公開)を含めた支援をするプログラム「東証アジア・スタートアップ・ハブ」の支援企業14社の1社に選ばれた。日本市場を目指すシンガポール発スタートアップの特集最終回では、UnaBizのアレクシス・サセット最高技術責任者兼副社長(日本・韓国担当)にオンラインでインタビューした(2024年9月11日)。
遠隔でガスメーターや物流車両を自動追跡
- 質問:
- UnaBizが提供しているサービスと技術はどういうものか。
- 答え:
- UnaBizはIoT技術を核とするソリューションを提供する会社として、2019年に創業した。ガスメーターの遠隔モニタリングから物流車両の追跡、トイレの衛生管理に至るまで、幅広いアプリケーションを提供し、世界70カ国・地域で法人向けにデジタルトランスフォメーション(DX)を支援している。もともと、フランスの通信会社シグフォックス(Sigfox)が開発した、低価格で長距離伝送が可能な無線通信規格「LPWAネットワーク」を用いてサービスを展開していた。しかし、UnaBizが2022年3月にSigfoxを買収したことで、同通信規格を自前で所有する企業となった。本社はシンガポールだが、技術開発はフランス、研究開発(R&D)は台湾で行っている。
- 質問:
- 同業他社と比較してのUnaBizのIoTソリューションの特徴は何か。
- 答え:
- 既存の通信会社も、第5世代通信(5G)のIoTネットワークを通じて同様のサービスを提供している。しかし、その通信デバイスは一般的に、多くの電力を使用するだけでなく、6カ月程度で電池交換が必要となる。われわれが「0G(ゼロジー)」と呼んでいるSigfoxであれば、電力消費を抑える効果があるだけでなく、(電池も)耐用年数が10年間と長いというメリットもある。電池自体が小さいためコストも抑えられる。
- 質問:
- UnaBizのIoTソリューションを導入した事例にはどういうものがあるか。
- 答え:
- 例えば、ビル管理システムの用途として、スマート・トイレがある。トイレ内のアンモニア臭や温度、床の状態などを、IoTソリューションを通じて把握できる。空港やショッピングモールなどのトイレで導入されている。シンガポールではチャンギ空港で導入されている。
日本国内外で日系企業との協業を拡大へ
- 質問:
- UnaBizは日系企業からも資金調達をしているが、その資金調達の状況は。
- 答え:
- 2024年8月に通信会社KDDI(本社:東京都千代田区)の投資ファンド(KDDI Open Innovation Fund 3号)と通信関連事業を展開する京セラコミュニケーションシステム(KCCS、本社:京都市伏見)から資金調達した。最終的には「プレ・シリーズC」ラウンドで、総額2500万米ドルの資金調達を目指している。
- 質問:
- 2019年に日本市場へ参入したきっかけは何か。70カ国・地域で展開するUnaBizにとって、日本の位置付けは。
- 答え:
- UnaBizが2018年8月にシリーズAとして実施した資金調達ラウンドに、(KDDI傘下のIoT通信プラットフォーム会社)ソラコムが出資者として参画した。その後、日本瓦斯(ニチガス、本社:東京渋谷区)向けに家庭用ガスメーターの使用量をリアルタイムで計測するソリューションを、2019年にソラコムと提携して提供したことが、日本参入のきっかけとなった。UnaBizにとって日本市場は重要な市場であり、スマートメーター関連のサービスは、日本が最大級のサービス提供先だ。
- 質問:
- このほか日本でのサービス展開の実例は。どの業界からの需要が多いのか。
- 答え:
- 例えば、エネルギー会社エネオス(ENEOS、本社:東京千代田区)向けに、KCCSとテクノロジーやデータを活用して社会課題を解決するサービスを提供するゼロスペック(本社:北海道札幌市)と提携して、家庭用の灯油タンク内の残油レベルを自動的に測定するスマートオイルセンサーを開発した。同センサーの設置によってENEOSは、灯油の配達効率が向上し、大きくコストを削減できた。このほか、物流パレット・レンタルの日本パレットプール(NPP、本社:大阪市北区)向けに、KCCSとの提携で、パレットの追跡システムを提供し、パレットの紛失や滞留などの削減に貢献した。日本においては最近、物流業界から車両のトラッキングサービスの需要が多い。UnaBizのIoTソリューションを導入することで、日本の物流企業は不必要なデリバリーを減らすことができる。
- 質問:
- 今後、日系企業とはどのような協業をしたいと考えているか。
- 答え:
- 日系企業とは日本国内だけでなく、国外でも協業したい。日系企業にはぜひ、自社の技術を世界に広める際に、UnaBizがもつ世界70カ国・地域のネットワークを活用してほしい。
- 変更履歴
- 文章中に誤りがありましたので、次のように訂正いたしました。(2024年12月5日)
- 第9段落
- (誤)2024年8月に、通信会社KDDI(本社:東京都千代田区)の投資ファンド(KDDI Open Innovation Fund 3号)と通信関連事業を展開する京セラコミュニケーションシステム(KCCS、本社:京都市伏見)から総額2,500万米ドルの「プレ・シリーズC」ラウンドの資金調達をした。
- (正)2024年8月に通信会社KDDI(本社:東京都千代田区)の投資ファンド(KDDI Open Innovation Fund 3号)と通信関連事業を展開する京セラコミュニケーションシステム(KCCS、本社:京都市伏見)から資金調達した。最終的には「プレ・シリーズC」ラウンドで、総額2500万米ドルの資金調達を目指している。
日本を目指すシンガポール発SU
- 執筆者紹介
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ジェトロ・シンガポール事務所 調査担当
本田 智津絵(ほんだ ちづえ) - 総合流通グループ、通信社を経て、2007年にジェトロ・シンガポール事務所入構。共同著書に『マレーシア語辞典』(2007年)、『シンガポールを知るための65章』(2013年)、『シンガポール謎解き散歩』(2014年)がある。