関与不動産など10社に都局長ら47人天下り
東京都中央区晴海の東京五輪選手村跡に林立するマンション群・晴海フラッグ。都から選手村用地(13・4ヘクタール)を近隣基準地価の9割引きで取得した不動産会社11社のうち、三井不動産など8社に元都局長ら29人が天下りしていたことが分かりました。ほかにも大幅値引きの協議に関与した三菱地所など2社にも18人が天下りしていたことも判明しました。(岡部裕三=ジャーナリスト)
これら計47人のうち、選手村事業を所管する都市整備局(旧都市計画局)出身は26人と過半数を占め、癒着の深さを裏付けています(表)。
都有地取得企業のうち、都幹部を受け入れたのは三井不動産、三井不動産レジデンシャル、住友不動産、NTT都市開発、三菱地所レジデンス、東急不動産、東京建物、野村不動産の8社で計29人です。
また、都有地売却価格を都と協議した「晴海スマートシティグループ」に入っていた三菱地所に11人が天下り。9割引き手法である市街地再開発事業を都に提案したパシフィックコンサルタンツには、7人が天下りしています。
選手村を施工したゼネコンにも天下りがあります。2019年以降に退職した都市整備局部長が、東急建設に2人、長谷工コーポレーションに1人天下りしています。
選手村用地の売却額は129億6000万円です。1平方メートルあたり9万6784円で、近隣基準地価の10分の1以下でした。値引き額は約1200億円。単純平均すると、1社あたり100億円余りの値引きです。
都民らは小池知事や不動産会社らに損害賠償を求め住民訴訟を17年に提起。原告だった矢野政昭さんは、「小池知事は都心の一等地を投げ売りし、都に1200億円以上の大損害を与えた。何が『都民ファースト』か。不動産会社に好き勝手な開発を許したら、東京の街は壊されてしまう」と怒ります。
調査は、00年以降の都幹部職員名簿などや情報開示請求をもとに、関係者へ聞き取りしました。
開発業者天下り禁止こそ
住民訴訟を担当した淵脇みどり弁護士の話 東京都幹部は大規模かつ構造的に天下りをしています。開発業者らを管理監督すべき都が組織を挙げて都市計画行政をゆがめ、企業の私的利潤の追求を優先していることの証しです。巨大開発業者への異常な天下りを全面的に禁止し、都は制度趣旨に沿った運用を確保していくべきです。
【解説】 小池都政 癒着底なし デベロッパー優遇 転換を
東京都は小池百合子知事就任直後の2016年12月に、選手村用地を9割引きで売却する契約を結びました。
その際、都は土地を取得した11社や三菱地所が加わる「晴海スマートシティグループ」と協議し、財産価格審議会・都議会に諮らず、脱法的に投げ売りしました。官製談合が疑われる事態です。
しかも都有地売買契約書は、11社が契約時に土地代の保証金1割を払うだけで、残り9割は事業終了後の所有権移転時に払う条件でした。その間、固定資産税・都市計画税の支払いも免除する優遇ぶりです。
20年東京五輪の立候補ファイルでは、「都の監督の下で民間業者等が建設する選手村の用地は、東京都が所有している」「永続的なレガシー(遺産)」としていました。
都港湾局元幹部は「売るべきでない選手村用地を土地造成コストすら回収できない9割引きで売却したのは大問題だ。許しがたい“デベロッパー(開発業者)ファースト”だ」と批判します。
いま晴海フラッグは、遺産どころか企業・投資家の投機マンションに化しています。
澤章・元都選挙管理委員会事務局長はX(旧ツイッター)で、三井不動産グループへの天下りを報じた「しんぶん赤旗」(16日付)を紹介。「三井不動産に都幹部大量天下り! ほとんどが神宮外苑再開発で暗躍している都市整備局の局長や部長たちです。次の都知事には即刻、再開発を中止してもらいたい。そして都庁幹部の天下り禁止を!」と投稿しました。開発業者癒着都政の転換を求める声がいま広がっています。
(しんぶん赤旗2024年6月28日付より)