2018年のラーメンシーンは一見、濃厚系あり、創作系ありと、まさに百花繚乱状態を呈しているように見える。
が、新店舗を横一列に並べ、つぶさに分析してみると、いくつかの共通項で括ることができることに気が付く。その共通項とは、ズバリ、「有名店出身」と「セカンドブランド」だ。
この2つのカテゴリーに属する店舗が、当面の間は2018年のラーメンシーンを牽引していくのではないかと思われる。
というわけで、今回の特集では、「有名店出身」と「セカンドブランド」というテーマに沿って、足を運んでいただきたい新店を10軒、厳選させていただくことにした。
このレポを参考に、お気に入りの1杯を見つけていただければ、嬉しい限りだ。
記事配信:じゃらんニュース
【亀有・有名店出身】
『九段斑鳩』出身のサラブレッド。『ののくら』の1杯は、麺・スープともに一切の妥協なし
『つけ麺道』、『麺たいせい』、『らーめん銀杏』などの実力店がひしめき、熾烈な生存競争を繰り広げる、都内屈指のラーメン激戦区・亀有。
2017年12月、そんな亀有に誕生したのが、『手打式超多加水麺ののくら』だ。
店主は、都内を代表する実力店『九段斑鳩』で腕を磨き、満を持して独立。今後、メニューを増やす予定だが、現在は、「中華そば」の「塩」「醤油」のみを提供している。
中でも、私が特にオススメしたいのが、「中華そば(醤油)」。
スープは、4種類の煮干し・鰹の削り節・うるめ節・昆布などから採った魚介出汁と、老鶏の丸鶏・鶏ガラから採った出汁をブレンド。タレは、生揚げ醤油に本味醂の甘みを寄り添わせ、力強く仕上げる。スープに合わせる麺は、自家製。強力粉を巧みに活用することで、55%の加水率を誇る超多加水麺を実現。
麺・スープともに一切の妥協なし。そのこだわりぶりたるや、数多くのラーメンと接してきたマニアでさえ舌を巻くほどだ。
住所/東京都葛飾区亀有3-11-11マーベラス大協ビル1F
営業時間/11:30~14:00、18:30~21:00(スープ終了次第閉店)、日曜/11:30~16:30
定休日/月曜・火曜
【富士見台・有名店出身】
名店『七彩』出身!修業先の技を活かし、我が道を往く『麦萬』
ロケーションは、西武池袋線富士見台駅の近傍。「味自慢中華そば」と大書された暖簾、屋号が記された趣豊かな提灯。飾らない店構えは、昭和創業の老舗だと言われても、全く違和感がないほどだ。
が、こちらの『中華そば麦萬』は、紛れもない新店。オープンは2017年11月25日。産声を上げて2ヶ月余りしか経たない、出来たてのホヤホヤだ。
店主は、名店『麺や七彩八丁堀店』の出身。手掛けるラーメンは、老舗が作る1杯のようにノスタルジックなビジュアルが中高年のハートに突き刺さる、まさに「中華そば」と呼ぶに相応しいもの。
出汁は、動物系素材を排し、煮干し・昆布などの魚介のみを使用。煮干しは、伊吹産と白子産のものを厳選。油にオリーブオイルを採用し、煮干しの薫りを際立たせるギミックも心憎い。
このスープに合わせる麺は、修業先仕込みの自家製。モッチリとした麺肌が唇に接触するときに生まれる感覚は、食べ手を虜にするには十分すぎるほどだ。
住所/東京都中野区上鷺宮4-16-6
営業時間/18:00~21:00
定休日/月曜
【竹ノ塚・有名店出身】
年始から早速、大物が誕生!『つけ麺和』は、亀有の名店『道』の出身
オープンは、2018年1月9日。昨年の余韻も冷めやらぬ年始早々、竹ノ塚に超大型新店が誕生した。それが、こちらの『つけ麺和』だ。
店主は、亀有の名店『つけ麺道』のセカンドブランド『道の豚』で、店長まで務め上げたすご腕。そんな店主が手掛けるラーメンに寄せられる期待は高く、オープンから1ヶ月と経たない間に、完全に行列店として定着するに至った。
同店が手掛けるのは、「つけ麺」「濃厚担々つけ麺」及びそのバリエーション。基本メニューはもちろん、「つけ麺」だ。
脂肪分が少なく臭みがない「あべどり」に豚骨を合わせ、強火で煮込んだ動物系出汁と、サバ節・煮干し・アゴ・宗田節・上質な鰹節から採った魚介出汁。これら2種類の出汁を絶妙なバランスでブレンドさせたスープは、ありのままの山海の滋味が食べ手を圧倒。
濃口醤油を用い甘味をフィーチャーしたカエシや、ワシワシと囓るタイプの極太麺も、ラーメンをいただく喜びを食べ手に伝える、優秀な伝道者だ。
住所/東京都足立区西竹ノ塚1-12-9共栄ビル1F
営業時間/11:00~15:00、18:00~21:00(スープ終了次第閉店)、日曜/11:00~18:00
定休日/月曜
【亀戸・有名店出身】
積み重ねた経験を活かし、独自の1杯を創作。堂々、ニボラーで勝負を挑む『つきひ』
引き続き、ご紹介するのは、本年1月28日にオープンした『亀戸煮干中華蕎麦つきひ』。
店舗の場所は、各線亀戸駅から3分程度歩いた路地裏に佇む『亀戸横丁』1階の最深部。『亀戸横丁』の入口には扉があり、扉を開かなければ店舗を視認することすらままならない。足を運ばれる際には、迷わぬよう、細心の注意を払うことが求められるディープな立地だ。
そんな同店を切り盛りする店主は、都内の超有名店で腕を磨いたすご腕。券売機には、店名の由来を推察させる「つきひフェニックス」「プラチナむかつく限定」などのメニュー札も設置されているが、基本メニューは、「中華蕎麦」と「濃厚蕎麦」。
どちらのメニューもラーメンマニアお墨付きのクオリティを誇るが、本コラムでご紹介したいのは「濃厚蕎麦」。
鶏をじっくりと丁寧に煮込んだ出汁をベースに、滋養味のみを搾り取った煮干し出汁をブレンド。芳醇な煮干しと濃密な鶏の風味とが打ち消し合うことなく、互いの持ち味を引き立てる構成は、これまでの濃厚煮干ラーメンとは、明らかに一線を画している。
住所/東京都江東区亀戸5-13-2スクエア三報ビル1F亀戸横丁内
営業時間/火曜・土曜・日曜・祝日/11:30~15:30(スープ終了次第閉店)
水曜・木曜/11:30~14:30、18:00~20:30(スープ終了次第閉店)
金曜/11:30~14:00、18:00~20:30(スープ終了次第閉店)
休日/月曜
【阿佐ヶ谷・有名店出身】
家系ラーメン店のレジェンド『桂家』の志を受け継ぐ『志田家』の1杯
都内における家系ラーメン店のレジェンドとして、絶大な人気を誇った方南町の『桂家』。そんな『桂家』が、2017年10月8日、惜しまれながらも閉店。「東京から優良家系の灯が消えてしまった」と、嘆くファンが多数存在したところである。
そんな状況下において、2018年2月2日、『桂家』ファンにとっては感涙ものの吉報が飛び込んできた。それが、この『横浜家系志田家』のオープンだ。
同店の店主は、『桂家』のご出身。『桂家』の閉店を機にラーメン店を創業することを考え、この度、店主の地元・阿佐ヶ谷で念願の開業を果たした次第。
スープは、修業元より若干マイルドではあるものの、大量の豚骨と鶏ガラを丁寧に煮込んだことが分かるキメ細やかなうま味が、食べ手の箸を持つ手を止めさせない。飲み干し際に味覚中枢を潤す、甘塩っぱいカエシの存在感も、この1杯の絶妙なフックとなっている。
家系ラーメンの定番『酒井製麺』製の中太麺の啜り心地も、新店とは思えぬほど秀逸だ。
住所/東京都杉並区阿佐ヶ谷北1-37-6
営業時間/11:00~15:00、18:00~25:00(夜の部はスープ不出来の場合休業)
定休日/未定
【野方・有名店出身】
実力店『風来居』での修行の成果を活かし切った、『くまくら』の「しおらーめん」
西武新宿線野方駅から徒歩5分程度。2017年12月18日、新青梅街道沿いにオープンした新店が、こちらの『らーめんくまくら』だ。
店主は、新宿をはじめ都内に3店舗を構える『風来居』で長年修業し、独立。手掛けるラーメンも、同店のDNAを色濃く受け継ぐもの。券売機の筆頭メニューを修業元の一番人気メニューである「しおらーめん」とするなど、観る人が観れば、予備知識がなくとも系統が分かるのではないだろうか。
同店のお薦めメニューは、もちろん「しおらーめん」。
国産の豚骨を丁寧に下処理し、2昼夜を掛けてじっくりと炊き上げたスープは、香味野菜の甘味・塩ダレのうま味もひと役買い、ひと口啜った瞬間、頬が落ちそうになるほど豊潤。
このスープに合わせる麺は、修業元とは異なる『三河屋製麺』製。スープを勢い良く巻き上げ、着実に口元へと運び込む獅子奮迅の働きから、店主が、自らの1杯をこの麺に託した理由が垣間見えたような気がした。
住所/東京都中野区丸山2-20-3パレドール中野第5
営業時間/11:00~23:00(スープ終了次第閉店)
定休日/無休
【新宿三丁目・セカンドブランド】
新宿のど真ん中で手軽に味わえる『はやし田』の鶏パッツン醤油
ロケーションは、地下鉄メトロ新宿三丁目駅から徒歩2分弱。店舗が面する通りはデパートの裏路地だが、新宿のど真ん中であることに鑑みれば、上々の立地条件だろう。
2017年12月17日、そんな垂涎ものの好立地に新たにオープンしたのが、今般、紹介させていただく『らぁ麺はやし田』だ。新宿三丁目に本店を構え、中野駅前に支店を擁する実力店『煮干中華そば鈴蘭』のセカンドブランドであるがゆえに、血筋は折り紙付き。提供されるラーメンも、決して食べ手の期待を裏切るものではない。
同店でまず、召し上がっていただきたいのが「醤油らぁ麺」。
スープは、鴨と大山どりの丸鶏を徹底的に炊き上げることで、鳥素材独特のコクと切れ味を十二分に引き出した、鶏清湯タイプのお手本のような味わい。啜ると、鳥の滋養味が瞬く間に口内を占拠。数種類の小麦をバランス良くブレンドした全粒粉麺の喉越しも抜群だ。
新宿のど真ん中でこんなフルボディの1杯が味わえることに、感謝せずにはいられなくなるだろう。
住所/東京都新宿区新宿3-31-5
営業時間/11:00~22:00(スープ終了次第閉店)
定休日/無休
【宝町・セカンドブランド】
重鎮『ど・みそ』がついに、セカンドブランドを始動!『東京スタイル鶏らーめんど・みそ鶏』
2006年の創業以来、がっつり系濃厚味噌ラーメンが食べられる人気店として、都内を始め各地に支店を展開し、全国的な知名度を獲得するに至った『ど・みそ』。
しかしながら、同店は、これまで一度も、提供するラーメンの種類を変えたセカンドブランド店舗を出店したことはなかった。限定メニューこそ随時、開発・提供してきたものの、基本的には、濃厚味噌ラーメン一本で勝負してきたと言えよう。
そんな『ど・みそ』が、2018年1月9日、ついに待望のセカンドブランドを宝町にオープンさせた。これが、『東京スタイル鶏らーめんど・みそ鶏』だ。
提供するメニューは、鶏白湯スープに、華やかな香りが印象的なトリュフオイルを織り込んだ1杯。基本メニューは、「鶏ゅ白湯醤油らーめん」。
タレのうま味とトリュフの香りの両者が、違和感なく鶏白湯スープに溶け込むことで生まれる牽引力豊かな味わいは、名店『ど・みそ』のセカンドブランドの名に恥じないクオリティを保持。『ど・みそ』ファンにとっても、鶏白湯好きにとっても、満足できる仕上がりとなっている。
住所/東京都中央区京橋1-17-12吉住ビル1F
営業時間/11:00~23:00(LO:22:30)、土曜・日曜・祝日/11:00~21:30(LO:21:00)
定休日/無休
【小川町・セカンドブランド】
麻婆麺の中でも珍しいホワイト麻婆を堪能!『成都正宗担々麺つじ田』
2018年現在、都内及びその近郊では、未曾有の麻婆ラーメン旋風が巻き起こっている。
2015年にオープンした東陽町の『らぁ麺やまぐち辣式』を始め、京急川崎の『麻ぜろう』、阿佐ヶ谷の『箸とレンゲ』、銀座の『蝋燭屋』など、枚挙にいとまがない状況だが、中でも、ご紹介する『成都正宗担々麺つじ田』の「KillerNoodle」は、他店の麻婆麺とは一線を画した異色メニューだ。
生の青唐辛子とブラックペッパーを縦横無尽に駆使して作られる麻婆豆腐の色合いは、なんと「白」!
アメリカ・ロサンゼルスの系列店『KillerNoodleTSUJITA』で先行販売されていたメニューを日本へと逆輸入した1杯だが、透明感のある清冽な見た目とは裏腹に、構成は、辛みをダイレクトに表現することに重点化。体感的な辛さレベルは、同店のレギュラーメニューである担々麺を大幅に凌駕する。
中盤、小皿に載せられて提供される生レモンを搾れば、レモンの酸味によって、辛みが更にヒートアップ。メニュー名である「Killer」に相応しい暴力的な辛みが、口の中を駆けめぐる。
住所/東京都千代田区神田小川町3-2サニービル1F
営業時間/11:00~23:00(スープ終了次第閉店)
土曜・日曜・祝日/11:00~21:00
定休日/不定休
【曙橋・セカンドブランド】
『麺や花よ』
今回の特集の締めを飾るのは、『麺や花よ』。
同店は、曙橋の人気店『麺庵ちとせ』のセカンドブランドとして、2017年12月にオープン。オープンしてから暫くの間は不定期で営業していたが、2018年2月より、『ちとせ』の夜営業時の業態として本格的に営業を開始。
現在は、熟成味噌を使用した「味噌ラーメン」と、それに桂皮・八角・花椒等のスパイスを加えた「辛味噌ラーメン」を、レギュラーメニューとして提供している。
鶏、豚等の分厚いコクが印象深い動物系出汁に、静岡県産の「四季熟成本仕込味噌」を丁寧に折り重ねた1杯は、ふわりと宙を舞う穏やかな香りが、鼻腔を心地良く刺激。チャーシューの上に美しく盛り付けられた「おろし生姜」がスープに溶け出すにつれ、生姜の清々しい辛みが味噌の甘みを引き立て、味わいがより一層、「和」テイストへとシフトしてゆく。
このスープに合わせるパートナーは、自家製の太平打ち麺。思いっきり啜り上げると、シルクのように柔らかな麺肌が、軽やかに喉元に接触。派手な要素はないが、名店ならではのダイナミズムが感じられる良杯だ。
住所/東京都新宿区市谷台町18-5
営業時間/19:00~21:30
定休日/水曜・日曜・祝日
※この記事は2018年2月17日時点での情報です
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田中 一明(たなか かずあき)
通称「ラーメン官僚」。ラーメン食べ歩き歴20年以上、実食杯数は11,000杯以上に及ぶ。直近の数年間は、毎年700杯~800杯のラーメンをコンスタントに実食。2016年現在、日本でラーメンシーンの「今」を最もよく知る人物。