全13巻 A5判・上製カバー・平均304頁 装丁:鈴木成一デザイン室

岩波講座 社会学

編集委員:北田暁大・岸 政彦・筒井淳也・丸山里美・山根純佳

前回の講座から四半世紀進化し続ける社会学の、これからのスタンダード

刊行情報

第1回

20231017日発売

2冊同時刊行

  • 第1巻理論・方法

    北田暁大・筒井淳也 編
    定価3,740円 ISBN 978-4-00-011441-7

  • 第3巻宗教・エスニシティ

    岸政彦・稲場圭信・丹野清人 編
    定価3,740円 ISBN 978-4-00-011443-1

第2回

20231214日発売

第3回

2024214日発売

第4回

2024418日発売

第5回

2024619日発売

第6回

2024821日発売

第7回

20241029日発売

第8回

2025130日発売

第9回

20253月発売予定

  • 第8巻医療・ケア・障害

    岸 政彦・山根純佳・前田拓也 編

刊行の言葉

1995年に小社が「岩波講座 現代社会学」(全26巻・別巻1)を刊行してから20年以上が経ちました。その後、社会も、社会学も、その姿を大きく変えました。しかしこの間、日本語圏の社会学の発展や変容を呈示するような講座シリーズはほぼ存在しませんでした。

前回の岩波講座は、研究者だけでなく多彩な執筆陣による多くの巻で構成され、スタイルも、オーソドックスな学術論文から、より柔軟なエッセイ的考察まで、幅広いものになっていました。領域横断的でバラエティに富んだテーマ編成により、当時ますます影響力を強めていた社会学という学問の魅力を伝えることができたと自負しています。

それから四半世紀を経て刊行するこのたびの新しい講座では、幅の広さを確保しながらも直球勝負を意識し、執筆陣も、主に専門の社会学者の方に集まっていただきました。各領域の到達点を示す、現役の中堅世代から若手の書き手が中心となっています。社会科学の進展に裏打ちされた理論枠組、新たなテーマや対象、洗練されてきた方法論を示し、数理・統計的な最新の研究も盛り込んでいます。

社会学は社会の鏡そのものと言われます。社会学が生まれて100年。この間に蓄積された遺産を受け継ぎ、次の20年、そして100年先の社会と社会学を構想するために。当講座にぜひ御期待ください。

2023年7月 岩波書店

編集委員より

北田暁大

社会学という知の様式は、その学問的同一性アイデンティティを、対象によっても方法論によっても理論によっても確定することができないという、奇妙な個性を持っているように見えます。それを弱みとみる人もいれば、緩さに開き直る人もいるでしょう。しかし、専門論文を通覧していくと、明確な規準は見いだせないものの、それでも「社会学的だ」としかいいようのない特有の匂い、対象と向き合う際の構えのようなものを看取することができるというのも事実です。本講座が、そうした社会学の輪郭を見出していく一助となってくれることを願っています。

北田暁大(きただ・あきひろ)

北田暁大

北田暁大(きただ・あきひろ)

1971年生。東京大学教授。理論社会学、メディア史。著書に『広告の誕生──近代メディア文化の歴史社会学』『責任と正義──リベラリズムの居場所』『実況中継・社会学──等価機能主義から学ぶ社会分析』

岸 政彦

私たちにとって「私たち」は最大の謎だ。みんな何してるんだろう、どうやって生きているんだろう。社会学はこの素朴な問いから始まる。この問いを特定の対象に限定し、実証的・経験的な方法を携えて理解しようとする。社会学を一言でいえばこうなるのかもしれない。人びとによって問われる「人びと」という問題。この問いには終わりはないが、それでも社会学者は、短い一生のあいだでようやく見えてきた問いのかけらを瓶に入れて海に流す。

岸 政彦(きし・まさひこ)

岸 政彦(きし・まさひこ)

岸 政彦(きし・まさひこ)

1967年生。京都大学教授。生活史、社会調査方法論。著書に『同化と他者化──戦後沖縄の本土就職者たち』『断片的なものの社会学』『東京の生活史』(編著)

筒井淳也

他分野と比べたときの社会学の特徴は、「対象に寄り添う」「人々から問いを受け取る」ことにあると私は考えています。そうであるのなら、時代が変われば重要な研究も変わる、ということです。「岩波講座 社会学」のラインナップをご覧になっていただければ、かつての講座が出版された時代からの変化を感じることができるでしょう。同時に、依然として存在する問題が何なのかも理解できると思います。刊行を楽しみにしてください。

筒井淳也(つつい・じゅんや)

筒井淳也(つつい・じゅんや)

筒井淳也(つつい・じゅんや)

1970年生。立命館大学教授。計量社会学、家族社会学。著書に『親密性の社会学──縮小する家族のゆくえ』『仕事と家族──日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』『社会学──「非サイエンス」的な知の居場所』

丸山里美

社会学という、他の学問との境界線もあいまいで、あらゆることを対象にできるこの学問を、全13巻、収録論文約150本というボリュームで紹介できることは、大きな喜びです。私たちが選んだ、今の時代、そしてこれからの時代をつくる社会学。この講座から、社会学の多様性とさまざまなバリエーション、そしてそれでも共通する何かを感じていただくことができれば幸いです。

丸山里美(まるやま・さとみ)

丸山里美(まるやま・さとみ)

丸山里美(まるやま・さとみ)

1976年生。京都大学准教授。貧困研究、ジェンダー論、福祉社会学。著書に『女性ホームレスとして生きる〔増補新装版〕──貧困と排除の社会学』『貧困問題の新地平──〈もやい〉の相談活動の軌跡』(編著)

山根純佳

社会学はどんな対象も調理できる懐の広い学問です。各巻の編纂にあたっては、その「広がり」=研究対象・テーマの多様性と「奥深さ」=個々の方法論と分析の妥当性が明瞭になる構成を心がけました。もちろん各巻の中にも「社会の見方」をめぐる相違や対立もあり、そうした不協和音が今後の研究の礎となるはずです。よい意味で本シリーズが「古く」なるような社会学の発展に貢献するシリーズになることを期待しています。

山根純佳(やまね・すみか)

山根純佳(やまね・すみか)

山根純佳(やまね・すみか)

1976年生。実践女子大学教授。ジェンダー、再生産/ケア労働論。著書に『なぜ女性はケア労働をするのか──性別分業の再生産を超えて』『産む産まないは女の権利か──フェミニズムとリベラリズム』

編集協力者

  • 第2巻=川野英二(大阪公立大学)
  • 第3巻=稲場圭信(大阪大学)/丹野清人(東京都立大学)
  • 第4巻=隠岐さや香(東京大学)/関谷直也(東京大学)
  • 第6巻=太郎丸 博(京都大学)
  • 第7巻=金菱 清(関西学院大学)/齋藤直子(大阪教育大学)
  • 第8巻=前田拓也(神戸学院大学)
  • 第9巻=上村泰裕(名古屋大学)
  • 第10巻=永田夏来(兵庫教育大学)/松木洋人(早稲田大学)
  • 第11巻=相澤真一(上智大学)
  • 第12巻=東 園子(京都産業大学)
  • 第13巻=明戸隆浩(大阪公立大学) /富永京子(立命館大学)

全巻構成

本講座の特色と各巻の構成(全巻共通)

●扱うテーマを精選した13巻に、定評ある研究者のすぐれた研究にもとづく論考を集めた。書き下ろしの他に、特定分野のスタンダードと考えられる論文については転載・改稿したものも含んでいる。

●各巻に編者によるオーバービュー論文(総説)を収録。この20〜25年の対応分野の研究動向をまとめ、読者に資するものとする。

第1巻理論・方法

(責任編集=北田暁大・筒井淳也)

社会学の特徴からして理論的・方法論的展開の多様さは必然であり、近年の進展まで見渡せる構成を目指した。方法においては、数理モデルや計量分析の適用はもちろん、期待される計算社会科学を展望する論考を組み込む。理論においては、社会理論から基礎概念の再検討・再構築まで、現時点における到達点をみせる論考を選定。

内容を見る
  • 実在と合理性──生活史とは何か……岸政彦(京都大学)
  • 数字を使って何をするのか──計量社会学の行方……筒井淳也(立命館大学)
  • 社会学方法論としての計算社会科学……瀧川裕貴(東京大学)
  • 「戦争の記憶」の戦後史を読み解く視座──世代・教養・メディア……福間良明 (立命館大学)
  • 国家の正当性と象徴暴力──ブルデューの国家理論からみる国家とナショナリズム……佐藤成基(法政大学)
  • 〈社会〉が生まれ〈ソサイチー〉が消える──明治期における「社会」概念と公共圏の構造……⽊村直恵 (学習院女子大学)
  • 小集団実験による相対的剝奪モデルの検証再考……浜⽥宏・前⽥豊(東北大学・信州大学)
  • 社会的カテゴリーの集合論モデル──台湾エスニック・ナショナル・アイデンティティの事例分析……⽯⽥淳 (関西学院大学)
  • 人間の科学の諸概念に対する社会学的概念分析……前⽥泰樹 (立教大学)
  • 社会学的啓蒙の論理……三⾕武司(東京大学)
  • 彼女たちの「社会的なもの」──世紀転換期アメリカにおけるソーシャルワークの専門職化と“social”の複数性……北⽥暁⼤(東京大学)

OVERVIEW

  • 変化する社会と向き合う理論と方法……筒井淳也・北田暁大(立命館大学・東京大学)

Ⅰ ハードとしての社会

第2巻都市・地域

(責任編集=岸 政彦・川野英二)

都市社会学、地域社会学では、貧困・格差、若者、ネットワーク、都市再編などに関わる幅広いトピックがある。本巻では、都市・地域社会学の「空間的文脈」という特徴を重視し、特定の具体的な都市・地域をフィールドとした質的・量的な実証研究のなかでこれらのトピックがどのように扱われているのか、また現代社会のなかで都市・地域空間がどのように再編されつつあるかに関して、2000年代以降の中堅・若手の研究を中心に編集する。

内容を見る
  • 東京下町の移り変わりとジェントリフィケーション──東京都墨田区・向島の事例から……金 善美(成蹊大学)
  • 歓楽街のトライアド──都市、店舗、ストリートにまたがる交渉の構造……武岡 暢(立命館大学)
  • 都市近郊における地域社会のつながりのあり方……石田光規(早稲田大学)
  • 名古屋都市圏における「見えない格差」……木田勇輔(椙山女学園大学)
  • 大阪の都市セグリゲーションと近隣効果──社会解体と集合的効力の検討……川野英二(大阪公立大学)
  • あいりん地区の形成と再編──貧困の集中は地域に何をもたらすのか……白波瀬達也(関西学院大学)
  • 京都と部落問題──都市政策とコミュニティ……山本崇記(静岡大学)
  • カギ括弧を取り外した辺野古から見えてくるもの……熊本博之(明星大学)
  • ローカルキャリアの社会学……轡田竜蔵(同志社大学)
  • 日本におけるコミュニティ問題の総合的検討──コミュニティ喪失論・存続論・変容論の対比から……赤枝尚樹(関西大学)
  • ジェントリフィケーションと「その場にいながらの排除」──ニューヨーク・ブルックリンにおける空間変容と地元で「部外者」になる経験……森千香子(同志社大学)

OVERVIEW

  • 21世紀の都市・地域の社会学へ向けて──わかりたいあなたのためのブックガイド……川野英二

第3巻宗教・エスニシティ

(責任編集=岸 政彦・稲場圭信・丹野清人)

国際化・多様化する社会の様相は、宗教・エスニシティにおける状況や認識を大きく変化させてきた。そして、現在もその変化の過渡期にある。本巻では、日本における両者の現時点の標準的な議論を描くことで、長期的な観点で起こるであろう大きな社会状況の変化の後にも参照されうる理論を描くことに力点をおいている。

内容を見る

Ⅰ 宗教と社会

  • 宗教とウェルビーイング……櫻井義秀(北海道大学)
  • 公共空間における宗教──フランスの事例を通して……伊達聖伸(東京大学)
  • 日本人の宗教性を測る……横井桃子(愛知大学)
  • 地域福祉と宗教……板井正斉(皇學館大学)
  • 存続か消滅か──人口減少社会における宗教の戦略……高瀬顕功(大正大学)

Ⅱ 日本社会とエスニシティ

  • 多文化主義/多文化共生の変容とオルタナティブの模索……塩原良和(慶應義塾大学)
  • 現代日本における移民女性の配置の変容と社会的再生産の困難……髙谷 幸(東京大学)
  • 新しい権力エリートの創り出す再生産領域の国際分業──グローバル都市化をめざす国家戦略特区と外国人家事労働者……定松 文(恵泉女学園大学)
  • 最低賃金の労働市場における外国人労働者の出身国の変遷──静岡県焼津市の水産加工業の事例……高畑 幸(静岡県立大学)
  • 外国にルーツを持つ高校年齢層の教育と家庭背景の国籍別比較──国勢調査(1980―2015年)でみる長期推移……鍛治 致(大阪成蹊大学)
  • 難民の社会学──日本の難民受け入れと今後の展開に向けて……人見泰弘(武蔵大学)

OVERVIEW

  • 社会の中の宗教──新たな役割に注目して……稲場圭信(大阪大学)
  • 日本の外国人・エスニシティの現状と課題……丹野清人(東京都立大学)

第4巻環境・災害・技術

(責任編集=北田暁大・隠岐さや香・関谷直也)

前回の『岩波講座 現代社会学』以後、環境・災害問題は大きく変動している。2011年に発生した東日本大震災は、コミュニケーション、地域のあり方、原子力災害という固有の問題をもたらした。また気候変動は新たな災害を引き起こし、生活を支える技術のありようも問題となっている。本巻では、災害とともにある日本社会と、環境を破壊/変化させる技術の複合的な関係性に焦点を当てる。

内容を見る
  • 原子力災害の復興と地域……開沼 博(東京大学)
  • 呼び覚まされる霊性の社会学の展開……金菱 清(関西学院大学)
  • 災害復興における被災地・被災者の位置づけ……小林秀行(明治大学)
  • AI倫理と社会……西條玲奈(東京電機大学)
  • 食がつなぐ環境と家族……品田知美(早稲田大学)
  • 科学技術ガバナンス論……標葉隆馬(大阪大学)
  • 同一性のポリティクス──犯罪解決における科学と法……鈴木 舞(東京電機大学)
  • 「風評」の社会学……関谷直也(東京大学)
  • サケをつくる人びと──水産増殖と資源再生……福永真弓(東京大学)
  • 感染症/ゲノムの医療社会学……武藤香織(東京大学)
  • 理系に女性が少ない理由とジェンダー平等の関係……横山広美・一方井祐子(東京大学・金沢大学)

Ⅱ 痛みと矛盾の焦点から

第5巻ジェンダー・セクシュアリティ

(責任編集=山根純佳・丸山里美)

本巻では2000年代以降、各フィールドでの実証研究をとおして、精力的に活動してきたジェンダー・セクシュアリティ研究者の論考を所収する。ポスト構造主義以後のジェンダー研究における「実践」「権力」「主体と構造」「交差性」等をめぐる議論の到達点を明示し、今後の社会学におけるジェンダー・セクシュアリティ研究の礎となる論集の作成を目的とする。

内容を見る

Ⅰ 経験と構造

  • 顔にあざのある女性たちーージェンダーと障害から考えるルッキズム……西倉実季(東京理科大学)
  • 「セックスワーカー」とは誰かーーグローバルな性取引の構造と経験……青山 薫(神戸大学)
  • 在日朝鮮人一世女性にみる植民地的ディアスポラの経験と対抗的公共圏……徐阿貴(福岡女子大学)

Ⅱ 規範

  • 被害者の意思をどう認識するか――刑事司法における性暴力の扱いをめぐって……小宮友根(東北学院大学)
  • 「レズビアン」という名づけと表明――ツールとしての「アイデンティティ」の可能性……堀江有里(公益財団法人世界人権問題研究センター)
  • 性同一性障害のエスノグラフィ……K.Phoenix

Ⅲ 権力/男性性

  • 「男性性による抑圧」と「男性性からの解放」で終わらない男性性研究へ……平山 亮(大阪公立大学)
  • なぜ性別分業は再生産されるのか――家父長制再考……山根純佳(実践女子大学)
  • 性別分業における権力関係――R・マーフィーの権力概念による検討……村尾祐美子(東洋大学)

Ⅳ グローバル社会の中のジェンダー

  • 戦争と暴力――戦時性暴力と軍事化されたジェンダー秩序……佐藤文香(一橋大学)
  • 日本のネオリベラル・ジェンダー秩序――新自由主義とジェンダーの理論的視座…菊地夏野(名古屋市立大学)

OVERVIEW

  • ジェンダー・セクシュアリティ研究の現在地と今後……山根純佳(実践女子大学)

第6巻労働・貧困

(責任編集=丸山里美・太郎丸博)

本巻では、労働や貧困について扱った2000年代以降の日本で画期となった論考を、量的・質的を問わず収録している。この20年は、戦後を支えてきた日本型雇用システムが変容し、貧困が可視化されはじめた時代と重なっている。労働については、「非正規雇用」や「ブラック企業」など、特にこの変容をとらえた論考を、貧困については、特に社会学的な視点からそれを扱った論考を選定している。

内容を見る

Ⅰ 労働と格差の構造

  • バイク便ライダーのエスノグラフィー──危険労働にはまる若者たち……阿部真大(甲南大学)
  • 近年の若年労働問題の発生要因の考察──「若者の「使い捨て」が疑われる企業」の事例を中心に……今野晴貴(NPO法人POSSE)
  • 非正規雇用の捕捉方法とその適用過程からみる日韓労働市場における格差……有田 伸(東京大学)
  • 正規/非正規雇用の賃金格差要因──日・韓・台の比較から……太郎丸 博(京都大学)
  • 失業リスクの趨勢分析──非正規雇用拡大の影響と規定構造の変化に注目して……阪口祐介(関西大学)
  • 日本の労働時間はなぜ減らないのか?──長時間労働の社会学的考察……小野 浩(一橋大学)
  • 東アジアにおけるケアの外部化──市場化と社会化の観点から……安里和晃(京都大学)

Ⅱ 貧困のアクチュアリティ

  • 野宿生活──「社会生活の拒否」という選択……妻木進吾(龍谷大学)
  • 「貧困家族であること」のリアリティ……知念 渉(大阪大学)
  • ローカルボクサーと貧困世界──マニラの事例から……石岡丈昇(日本大学)

OVERVIEW

  • 2000年代以降の労働・貧困の社会学……太郎丸 博・丸山里美(京都大学・京都大学)

第7巻差別・マイノリティ

(責任編集=岸 政彦・金菱 清・齋藤直子)

社会における多様化が認識されていくにつれ、差別の実態やマイノリティの実態が可視化されてきた。本巻では、近年行われてきたすぐれたフィールドワークを中心とした被差別主体のリアリティと社会構造を描いた論考を中心に、その手法と描かれた実態を丁寧に示すことをねらいとする。

内容を見る
  • 構造的差別の歴史社会学……石原 俊(明治学院大学)
  • 性風俗経営で地元を生きる──沖縄のヤンキーと地元つながり……打越正行(和光大学)
  • 被差別部落の結婚差別……齋藤直子(大阪教育大学)
  • 日本社会の「混血」「ハーフ」の人々をめぐる言説と社会構造の交差的編成──人種編成論とインターセクショナリティの批判的統合……下地ローレンス吉孝(ハワイ大学)
  • 差別意識について……高 史明(東洋大学)
  • 被爆者アイデンティティの形成と変容──法医学カテゴリーから運動主体へ……直野章子(京都大学)
  • 外国人労働者の労働市場における地位……永吉希久子(東京大学)
  • 「お前は誰だ!」──占領期における「朝鮮人」と「不法入国」の定義をめぐって……朴 沙羅(ヘルシンキ大学)
  • 野宿者の抵抗と主体性──女性野宿者の日常的実践から……丸山里美(京都大学)
  • ゲイの男性性をめぐって……森山至貴(早稲田大学)

第8巻医療・ケア・障害

(責任編集=岸 政彦・山根純佳・前田拓也)

社会の医療化過程において、医療社会学は差別を引き起こした疾病や精神疾患に取り組み、またこれまで周縁的なものとされてきたケアに注目してきた。こうしたなか、「障害」の概念の揺らぎ、またそれを引き受ける社会の構造自体に光をあててきた論考を中心に構成する。

内容を見る
  • ハンセン病療養所の歴史社会学──〈アサイラム/アジール〉と自由……有薗真代(龍谷大学)
  • ジェンダーとディスアビリティ……飯野由里子(東京大学)
  • 認知症の理解モデルの変容と包摂・排除……井口高志(東京大学)
  • ニューロダイバーシティの戦術──自伝における脳と神経……浦野 茂(三重県立看護大学)
  • 近現代日本における精神医療供給構造の歴史社会学……後藤基行(立命館大学)
  • 障害のある人と家族……土屋 葉(愛知大学)
  • 過渡的なプロジェクトとしての〈回復〉論──「摂食障害の語り」より……中村英代(日本大学)
  • 障害者運動と社会学……深田耕一郎(女子栄養大学)
  • 障害とバリアフリー……星加良司(東京大学)
  • 患者の「生」の固有性に開かれるために──看護職の戦略的限定化……三井さよ(法政大学)
  • 医療化のレトリック……美馬達哉(立命館大学)

Ⅲ 福祉・家族・教育

第9巻福祉・社会保障

(責任編集=筒井淳也・山根純佳・上村泰裕)

福祉・社会保障の社会学は、国家と社会の相互作用を視野に入れ、制度が人々の暮らしに及ぼす効果を分析する。人生や社会の可能なパターンに関する想像力を広げて未来を構想するとともに、政策を論じるための語彙を公共圏に提供する公共社会学としての役割も担っている。本巻は、各フィールドにおける質的調査に加え、国際比較や計量分析を駆使した論考を集め、福祉・社会保障分野における社会学的研究の広がりを見渡すことを目的としている。

内容を見る
  • 国際比較から見た東アジアの福祉……上村泰裕(名古屋大学)
  • 「社会的養護の家庭化」を問い直す──演繹型政策思考からの脱却に向けて……藤間公太(京都大学)
  • 養育費問題から見た日本の家族政策──国際比較の視点から……下夷美幸(放送大学)
  • なぜダブルケアは困難なのか──社会学的葛藤理論からの考察……山下順子・相馬直子(ブリストル大学・横浜国立大学)
  • 「介護の社会化」の問題構制……森川美絵(津田塾大学)
  • 現代ホスピスの変容──「医療化」現象の日韓比較……株本千鶴(椙山女学園大学)
  • 海図なき医療政策の終焉……猪飼周平(一橋大学)
  • 社会政策としての住宅政策・再考……祐成保志(東京大学)
  • 「福祉の市場化・民営化」と労働統合型社会的企業……米澤旦(東京大学)
  • 社会政策における互酬性の批判的検討……平野寛弥(上智大学)
  • 社会保障政策の因果効果……柴田悠(京都大学)

OVERVIEW

  • 福祉社会学の課題と方法──比較社会政策からの展望……上村泰裕(名古屋大学)

第10巻家族・親密圏

(責任編集=筒井淳也・永田夏来・松木洋人)

ここ20年ほどの同分野の研究動向を踏まえ、画期となる論考を集める。方法面では、家族に関する大規模社会調査を利用した計量研究、歴史、エスノメソドロジーといった広がりが目立ってきている。研究内容としては、少子高齢化を反映してケアや福祉の領域が発展したのと同時に、家族を相対化する視点からの研究も多くなってきている。本巻は、こういった方法的・内容的な家族・親密圏研究の広がりを展望する論集となっている。

内容を見る
  • 未婚化の中で失われた結婚、存在感を増す結婚……岩澤美帆(国立社会保障、人口問題研究所)
  • マクロレベルのジェンダー不平等と家事分担──22カ国の比較分析……不破麻紀子(東京都立大学)
  • 高学歴が家父長制意識に及ぼす影響についての比較社会学……伊達平和(滋賀大学)
  • データから読み解く成人の親子関係──居住形態と育児援助のあり方から……施利平(明治大学)
  • 家族研究における量的調査研究のインパクト……保田時男(滋賀大学)
  • 人口学的条件と〈家族〉の実現性──多産多死の時代における〈家族〉の寿命……中島満大(明治大学)
  • 家族の近代と親密性の論理……野田潤(東洋英和女学院大学)
  • 子育てひろばの和やかな雰囲気はどうつくられるのか──フィールドワークにもとづく会話分析から……戸江哲理(神戸女学院大学)
  • 介護家族による「特権的知識のクレイム」──誰が、相手の「本当の姿」を知っているのか?……木下衆(慶應義塾大学)
  • 〈血縁〉の家族社会学──親子関係を分析する新たな枠組みの構築に向けて……野辺陽子(日本女子大学)
  • 家族福祉論の解体──家族/個人の政策単位論争を超えて……久保田裕之(日本大学)

OVERVIEW

  • 21世紀における日本の家族社会学の展開とその課題……松木洋人・永田夏来(早稲田大学・兵庫教育大学)

第11巻階層・教育

(責任編集=筒井淳也・相澤真一)

二一世紀日本で注目される社会的格差の問題あるいは階層と教育の実態を明らかにし、画期となった研究領域を扱う。量的調査とデータ分析の長い伝統を現代社会に応用した論文や革新的要素を含む論文、時代の転換を描き出した質的調査の論文を収録。「階層・教育」という古典的な社会学の課題を、最新の知見から位置づける。

内容を見る

Ⅰ 階層と社会構造

  • 学歴分断と不平等……吉川徹(大阪大学)
  • 世代間移動における出身階層測定の再検討……三輪哲(立教大学)
  • 教育選択をめぐるブリーン・ゴールドソープの相対的リスク回避仮説の検証……藤原翔(東京大学)
  • 戦前期大卒労働市場のマッチング――制度と「埋め込み」の視覚……福井康貴(名古屋大学)

Ⅱ 教育と学校の影響力

  • ストリートダンスからフリーターへ――進路選択のプロセスと下位文化の影響力……新谷周平
  • マルチレベルモデルを用いた「学校の効果」の分析――「効果的な学校」に社会的不平等の救済はできるのか……川口俊明(福岡教育大学)
  • 高校入試における、通塾の「進学校」選択に及ぼす効果の検討……中澤渉(立教大学)
  • 日本社会におけるメリトクラシーの限定性――高校就職指導を事例として……堀有喜衣(独立行政法人・労働政策研究・研修機構)

Ⅲ 階層・教育の未来を見据えて

  • 教育達成におけるジェンダー・ギャップとその背景――「ジェンダー・トラック」後の三〇年……中西祐子(武蔵大学)
  • 生きづらさからの不登校研究に向けて――当事者の視点から「貧困」と「選択」をつなぐ……貴戸理恵(関西学院大学)
  • 〈高卒当然社会〉の来し方行く末……香川めい・相澤真一(大東文化大学・上智大学)

OVERVIEW

  • 四半世紀の階層の社会学と教育の社会学をめぐって……相澤真一(上智大学)

Ⅳ 変容するコミュニケーションと人々の行動

第12巻文化・メディア

(責任編集=北田暁大・東園子)

過去20年余、インターネット文化の発達は人々のコミュニケーションに関する意識を大きく変容させた。同時に、雑誌・新聞・テレビといった従来から存在するメディアの歴史的な存在意義が改めて重視されるとともに、そのあり方自体の変容も見られる。本巻では、さまざまな文化の形成・伝達に関わってきたメディアについてそれぞれの文化の視点からアプローチした論考、および、ますます変容しつつあるメディアとそのコミュニケーションの様相に着目した論考から、文化―メディア関係の研究の最前線を示す。

内容を見る

Ⅰ 文化─社会の場

  • 趣味とファンの文化社会学……辻泉(中央大学)
  • 美容の文化社会学──整形を中心に……谷本奈穂(関西大学)
  • デザイン批評と日本の社会学──柏木博を中心に……加島卓(筑波大学)
  • 音楽社会学の弾きかた──その方法と展開……南田勝也(武蔵大学)

Ⅱ 歴史としての文化

  • 戦時動員と雑誌広告のメディア論──婦人雑誌と戦争協力……石田あゆう(桃山学院大学)
  • テレビアーカイブと21世紀の映像文化……高野光平(茨城大学)
  • 2010年代自己啓発書ベストセラーにみる「心の習慣」……牧野智和(大妻女子大学)

Ⅲ 社会の媒体

  • 少女雑誌における親密な関係の変容──『ひまわり』『ジュニアそれいゆ』の比較……今田絵里香(成蹊大学)
  • ネット社会における世論形成デバイド──二つの「分断」可能性を検証する……辻大介(大阪大学)
  • モバイルメディアとうわさ──浮遊する情報空間の現在……松田美佐(中央大学)
  • メディアとしてのミュージアム……村田麻里子(関西大学)

OVERVIEW

  • 文化社会学の存在理由──歴史・媒体・場………北田暁大・東園子(東京大学・京都産業大学)

第13巻政治・社会運動

(責任編集=山根純佳・明戸隆浩・富永京子)

政治のなかでも社会学的なアプローチが最もよく生きる政治意識の分野に焦点をあて、この間急速に展開した量的研究はもちろん、質的研究や歴史的研究、理論的な研究も含めた社会学的なアプローチの幅広さを確認しつつ、国内外のフィールドにおける豊富な蓄積を紹介することで、2020年代以降の現実の政治を見通す視座を示したい。社会運動面でも、資源動員論や新しい社会運動論といった「定番」「古典」的アプローチは、日々刻々と変容してゆく社会運動のありようを把握するにあたりどのように発展したのか。近年、組織形態、イシュー、手法などにおいてますます多様化する社会運動を把握するにあたり、社会運動論もまた目覚ましい理論的展開を遂げている。本巻では、2000年代以降における社会運動論の展開を確認するために必須と考えられる論考を収録する。

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  • ネット右派の形成と変容……伊藤昌亮(成蹊大学)
  • 社会運動の失われた敵対性と「さまよう主体」のゆくえ……稲葉奈々子(上智大学)
  • 保守主義と女性……海妻径子(岩手大学)
  • ナショナリズムをいかに捉えるか?……田辺俊介(早稲田大学)
  • アイヒマンの「主体性」──官僚制がもたらす「悪」について……田野大輔(甲南大学)
  • 社会運動のサブカルチャー化……富永京子(立命館大学)
  • 抗議文化の生起と「運動文化」……西城戸誠(早稲田大学)
  • ボランティア活動とネオリベラリズムの共振問題を再考する……仁平典宏(東京大学)
  • 大都市の「草の根保守」は変わったのか──「大阪維新の会」の地域政治の社会学……丸山真央(滋賀県立大学)
  • 1960―70年代「市民運動」「住民運動」の歴史的位置……道場親信
  • 多文化主義国家の社会学──国際比較と歴史的変容……南川文里(同志社大学)